もう、ホント、角川のアニメが嫌いである。角川嫌いを公言して憚ってないわけですが。
最初っからそうだったわけではない。前にも書いたけど、そもそも角川アニメ第一作である幻魔大戦は大好きだったし、少年ケニヤも好きだったし、カムイの剣も好きだった。当時の角川アニメは一種ブランドだったのだ。
しかも全然美少女なんざ出てこない。当時の角川も「小説を売るため」アニメを作っていたが、相手は一般人であってアニオタではなかった。しかも「映画作りの一つの手法として」アニメを作ってたのだ。そして、ぶっちゃけ、どっちかっつーと角川は硬派なアニメを作ってたのだ。信じらんないだろ?
多分、角川アニメが一番最初「?」って思える作品を出したのは1991年の「サイレントメビウス」だったと思う。これが角川メディアオフィスが発刊してた三流漫画雑誌に載ってた漫画のアニメ映画化で、ぶっちゃけ「何だか良く分からん意図」の作品だった。要するにここではじめて角川映画本流じゃないアニメが作られるのである。
そしてその後、角川お家騒動ってのが起きる。角川書店が分裂して、角川メディアオフィスが事実上消えて、新会社になるのである(それがメディアワークス)。
ここから出された雑誌群が「電撃☓☓」と言う雑誌類である。後にメディアワークスはまた角川書店と融合するのであるが、ハッキリ言うと、事実上角川書店を乗っ取った、と言って良いだろう。ここでかつてあった「硬派な角川書店」は消失する。出来たのはオタクにおもねる旧角川メディアオフィスが中心となった会社である。
実は大して涼宮ハルヒシリーズとか面白いとか思ってないんだけど、それでもまだ深夜アニメ生産工場と化したした角川アニメが全部酷い、って程じゃなかったと思う。
多分今みたいに「ひでぇ」状態に移行しはじめたのは2015年前後じゃなかろうか。要するに各ラノベ会社が深夜アニメのCM的効率が「実は悪い」って気づき出した辺りだと思う。
漫画のアニメ化の場合は掲載雑誌を宣伝可能である。従って、ある雑誌の漫画一本をアニメ化するだけで他の漫画の宣伝が可能なわけなんだよ。雑誌なんて高くても基本500円前後だし、一冊買ってもらえば掲載雑誌分の漫画は結果宣伝出来るのと同様なんで、これは悪い広告戦略じゃないのだ。
ところが、ラノベじゃこうはいかない。「☓☓文庫」って宣伝しても、雑誌程広告効果が無いのだ。現代の小説の文庫だとかつてと違って1,000円前後もするし、「☓☓文庫」って宣伝したところで数冊立ち読みしてくれる保証がない。漫画雑誌に比べるとそもそも一冊手に取ってもらうのが至難の業なのだ。結果、アニメ化で宣伝出来るのは「原作ラノベ」のみであって、他作品への購買意欲への連鎖をなかなか産みづらい。と言う事はラノベの深夜アニメ化の費用対効果は漫画雑誌程高くないわけである。
角川もおそらく、その辺気づきだして、しょーもねぇエロを前面に押し出したラノベのアニメ化とかやりだして、段々質が低下し始めた気がする。っつーか、多分角川側から言うと、「丁寧に良い作品を作っていっても広告効果が思った程見込めない」と割り切ったんだ、と言う事なんだろう。
と言うわけで、2015年以降、そこそこ面白い角川アニメもあるこたぁあるが、多分それ以前を漁った方がマシな結果になるんじゃないか、って思っている。
ここでは「勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。」(2013)を紹介しようと思う。個人的には結構オキニの作品である。
この作品はテーマ的には「就職氷河期」をモティーフとしている。設定的にはかなり暗い話、と言って良い。また、モティーフ的には白泉社のデトロイト・メタル・シティに似てるかもしれない。つまり、「なりたいものになれなかった」場合の悲喜劇、である。
主人公ラウル・チェイサーは勇者志望の青年だった。彼は勇者輩出を旨とする勇者予備校でも主席であった。しかし、勇者になるための勇者試験目前に、敵となる魔王が倒されてしまう。結果、勇者制度は廃止になり、失意のラウルは、魔王が倒された為、武器産業等が潰れる大不況の中、マジックショップ・レオンの店員となる。
そこに勤めてしばらくしてある程度ベテラン店員となったおり、フィノ・ブラッドストーンと言う魔人の少女が後輩として入店してくるが、実はこの娘、倒された魔王の一人娘だったのである・・・・・・。
とまぁ、基本鬱設定と言って良い設定なのだが、でもしかし所詮コメディである。魔人フィノ・ブラッドストーンは魔王になりたくはないが、出自の為色々と猟奇的な発言が目立ち、勇者になりそこなったラウルと魔王になりたくなかったフィノとの軽妙な漫才的トークで話が進んでいくのである。
このアニメの優秀だ、と思う辺りはその「作り方」である。ハッキリ言って、1期だけ流せれば良い、と言う割り切りで作られている。と言うのも、アニメになった時点で、原作小説ももう、終焉が見えていたので続編を作る、とか言うのは端から考えてなかったのだろう。終わるか終わらないか分からない作品のアニメ化ってのはぶっちゃけ、小説原作の場合はやりづらい、ってのが本当のトコなのではないか。結果、原作小説に登場しないキャラを出してエピソードを肉付けしたり、また、原作小説のエピソードも前後させて盛り上がりを重視して一発勝負に賭ける、と言う思い切った作り方をしている。その辺が極めて好感触、かつバランスが良い。
要は、このアニメはキチンとした「完成品」として企画されてて、そしてキチンと「完成」され、大団円を迎える。原作小説は継続中だわ、アニメは中途半端で終わるわ、と言う昨今のラノベ原作アニメとは全く趣が違うのだ。キチンと完成された作品は観てて安心感も違う。
と言う辺りで、このアニメをオススメとして挙げておこうと思う次第だ。
まぁ、お色気もある、とか言うのが気に食わない、って人もいるだろうが、この程度なら問題ねぇだろ、とか思っている。所詮コメディだしな。コメディには罪がないのである。