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Retro-gaming and so on

フローリアン・シュナイダー

久米素子さん、って人がいる。
なんか「フルート教室」を開いてるらしい。

「へぇ、フルート教室なんてあるんだ」

とかヘンなトコで感心してた(笑)。

いや、ドラえもんの静香ちゃんは「バイオリン」を習ってたけど。
ポピュラリティから言うと「バイオリン」はまだあっても「フルート教室」ってのはよりマイナーだろう。
いや、フルートを貶めてるわけじゃない。むしろ個人的には、クラシックで使用する楽器ではフルートは「一番美しい音を奏でる楽器」だと思っている。
ところが、意外とフルートって「前に出てくる」事がねぇんだよ。
なんつーの、ぶっちゃけ、オーケストラなんかでも弦楽器が一番、金管楽器が二番、木管楽器系は「三番手」な印象だ。つまり、「彩りを添える事があっても」前面に出てくる事は稀だ。
フルートって「知名度の割にはマイナー扱いされてる」不思議な楽器なんだ。「オーボエ」とか「バスクラリネット」の名前はど忘れしてもフルートは出てくるだろ?出てくる割には「これと言って活躍の場がない」ってのが一般的な認識だと思う。

ポップスでもそうだ。フルートが前面に出てくるポップスって何か「これ」って印象がある?トランペットやサックスだったら「Jazz」とかみんな思いつくだろうけど、「フルート」って言うと「あれ?」ってなんない?
強いて言えばボサノヴァはある種フルートの独断場なんだけど、とは言っても必須の要素でもねぇんだよなぁ。
ポップスのライブでもフルートがフィーチャーされたのってBjörkのライブしか観た事がない。
あと、映画なんかのBGMで印象に残ってるのは犬神家の一族とか(笑)?やたら不気味なシーンで何故かフルートがフィーチャーされるんだよ(笑)。おっかしいよなぁ、フルート程美しい音色を持つ旋律楽器はねぇ、って思ってるんだけど、どういうわけだか不気味さを演出するのに使われる(笑)。全部大野雄二のせいだ(笑・※1)。
悪魔が来たりて笛を吹いてんじゃねーよと(笑・※2)。



いずれにせよ、「知名度が高い割には何故かマイナー楽器の」フルート。是非とも久米氏にはフルート教室を通じてフルート奏者を増やし、フルートのメジャー化を頑張ってほしい。
ホント、マジで期待している(※3)。

とまぁ、メジャーな音楽界だと「その音の美しさ」に反してあまりフィーチャーされないフルート。
一方、「テクノの神様」と言われるドイツの電子音楽グループ「クラフトワーク」。創設者はオルガン奏者のラルフ・ヒュッターと、フルート奏者のフローリアン・シュナイダーの二人だ(※4)。
そう、2009年にクラフトワークを脱退し、2020年に亡くなった「クラフトワークの頭脳」、フローリアン・シュナイダーは実はフルート奏者なんだ。
ドイツの実験ロックはクラシック出身者が多く参加していて、フローリアン・シュナイダーもその一人だった。そしてドイツの実験ロックはクラシックの楽器を「ロックの文脈に持ち込む」のに全然抵抗がなかった。
よって、1970年代初期の「ドイツのロック」ではフルートをはじめとしてヴァイオンリンだ何だ、ってのが大量に持ち込まれていた。

初期クラフトワークはそういった「実験ロック」の一端を担っていて、今は公式には廃盤になってる初期のアルバムで、フローリアン・シュナイダーの「フルート演奏」を聴くことが出来る。

Kraftwerk: Ruck Zuck (LIVE in Soest, 1970)

メロディなんぞ無いに等しい。が、この曲を引っ張ってるのは明らかにフローリアン・シュナイダーの「攻撃的な」フルートだ。ここには「優雅で優美な」フルートのカタチなんぞ全くない。リズムを刻みまくってドラムよりも派手な存在だ。

もう一曲紹介しよう。上の曲はファーストアルバムの曲で、当時の「ロックの攻撃性」を前衛技法で解体したような曲だけど、サードアルバムくらいになると、「攻撃性」は鳴りを潜めて、クラフトワーク特有の「ユーモア」が出てくる。
フローリアン・シュナイダーのフルートがフィーチャーされるこの作品、題名は「ELEKTRISCHES ROULETTE」、つまり電気ルーレット、だ。

KRAFTWERK - ELEKTRISCHES ROULETTE (Remastered)

この辺でクラフトワークは音楽による「現象」っつーか「テーマ」の戯画化、に乗り出す。言わば音楽によるコミカライズ、だ。ここからクラフトワークはカッコよく言えば「何かしらのテーマの音楽による脱構築」、簡単に言えば「分かりやすい漫画化」を継続して行っていく。
そしてこの頃からMini Moogと言うシンセサイザーが武器として加わり、クラフトワークは単なる「実験ロック」から「テクノの父」へと歩みを進めていくんだが・・・・・・。
一方、「シンセと言う強力が武器」は加わったんだけど、この頃はまだ、フローリアン・シュナイダーは「フルート奏者」の色彩が強かった。
と言うのも電子フルートと言う武器を持ち込むんだ。

Kraftwerk - Die Roboter

クラフトワークの代表曲「ロボット」。
この動画はテレビ用のモノで、いわば本当に演奏してるわけではなく「口パク」だ。
ただし、「電子フルート」なるものがあるのが分かるだろうか。もう既に「フルートの音」でさえない(笑)。それどころか「笛」じゃなく、フルートの操作系「だけ」が単独で存在している。
あ、そっか、「電子」なら息吹き込まんでエエんか、と感心した事を覚えている(笑)。
ちなみに、この「電子フルート」。こんなもん実際に売ってるんだかどうだか知らん。ドイツになら売ってるんだろうか。一説によれば、フローリアン・シュナイダーは「電子工学」が得意で、自作した、って話がある。画面に出てたろうが、「電子パーカッション」もフローリアン・シュナイダーがメインで作ってて、アメリカで特許を取ってるんだ(※5)。
そのくらい「エレクトロニクスに詳しかった」人がフローリアン・シュナイダーと言う「元フルート奏者」で、こんなメンバーがいる「電子音楽グループ」、クラフトワークに凡百の人が勝てるわけがない(笑)。
マジでこの電子フルートが欲しい(笑)。フルート吹けないけど、「操作系」だけだったら何とかなんじゃねーの、ってしょーもない事を考えてる俺がここにいる、んだ(笑)。

※1: ご存知、ルパン三世第2シリーズ以降の「ルパン三世」のイメージを決定づけた作曲家。実は劇伴作家としては角川映画の「犬神家の一族」がデビュー作。
なお、本文では冗談めかして書いてるが、後年の「ルパン三世」の大野雄二劇伴ではフルートのフィーチャー率が異様に高い。例えば、映画としては全く評価しないが、それでも「カリオストロの城」を盛り上げてるキー楽器は「フルートだ」と言おう。
大野雄二程フルートを使いこなしている劇伴作家はいないんじゃないか。

※2: 横溝正史原作の金田一耕助モノのミステリの1つ。タイトルがやたら印象深い。
なお、この小説、フルートの奏法に明るいと犯人は出落ちで分かる、と言うなかなか上手いミステリになってる。フルート奏者必読。
東映より西田敏行が金田一耕助役として映画化されている。


※3: 恐らく殆どフルート奏者ってのは学校のブラスバンドでフルートに出会って吹き出したんじゃなかろうか。「フルートが吹きたくて」子供の頃に教室の門を叩く、ってケースは極めて少ない、と思う。
そして音楽の専門学校を除き、ブラバンが抱えてるフルートなんざ数が知れてると思う。んでフルートって楽器は結果「数が出ない」ので益々高くなるわけだ。
多分、数から言うと金管楽器の、例えばトランペットの方が多く生産されてて結果安くなるが、一方、フルートって安いヤツでも一本100万円近くするんじゃなかろうか。
当然フルート奏者が増えれば楽器一台の製造単価も下がっていく(のが期待されるが、フルートの「機構」はかなり複雑なメカニズムで、そういう意味では単価が下がるのは限界があるだろうが)。

※4: と一般には言われてるが諸説アリ。しかしながら、フルート奏者、フローリアン・シュナイダーがバンドの発端だったのは間違いない。

※5: つまり、楽器屋が「電子ドラム」を作って売るとすると、クラフトワークが持ってる「特許」に抵触し、クラフトワークに「特許料」が支払われる、って事だ。
言い換えると、クラフトワークの稼ぎは音楽そのものより、この「電子ドラムの特許」の方がデカイのかもしんない。
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