星田さんの記事を読んでいた。
このタイトルに「ハッ!」とするあなたは45歳以上であろう・・
あー、そうそう、ザ・デイ・アフターって映画があったなぁ、流行ったなぁ、とは思った。
一回も観たことねぇけどよ(笑)。
うん、名前だけ知ってる、ってヤツ。
日曜洋画劇場ってぇんで見逃してたんだよな・・・多分・・・・・・。
はい。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。
で終わってはイカン(笑)。
ちょっと興味が出たんで調べてみた。
そしたら、実は、ザ・デイ・アフターって映画じゃねぇのな。テレビ番組なんだって。
それが日本では劇場公開された、と。
そしてその監督さん。ニコラス・メイヤーって人なんだけど、どっかで聞いた事あるな、と。
そしたら思い出したわ。こんな本書いてた人なんだよな。
そう、「シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険」、原題"The Seven-Per-Cent Solution"(7%の溶液)である。
この小説はメチャクチャ面白くて、要するにこれを書いた著者がザ・デイ・アフターの監督さんなのである。
そしてこの本、「シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険」は映画「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」となり、公開されてるわけだな。
今回はこの映画の話をしよう。
さて。
史実の話をしよう。
シャーロック・ホームズはサー・アーサー・コナン・ドイルが米国ストランドマガジンに連載した小説だったわけだが。
コナン・ドイル本人は、ホームズを書くのをやめたくてやめたくて仕方がなかった、ってのはある種有名な話だろう。
で。
当初、シャーロック・ホームズは「冒険」「回想」の単行本二冊ぶんだけ、で終わってしまった。
そして「回想」でのホームズ最終回がご存知、悪の天才モリアーティ教授とのスイスのライヘンバッハの滝傍での格闘である。そこでホームズは命を落とした・・・・・・。
っつーのが元々のホームズの最終回なワケだな。
でもよ・・・・・・。そもそも「悪の天才」って何だ、って話になるわけじゃん。何でそれまで純然たる推理活劇だったのに、唐突に世界征服を狙ってるような(笑)、ショッカーのような人が現れるのか。
つまり、作劇上、このホームズの「最終回」である「最後の事件」ってのはどうにも展開が不自然なのだ。っつーかどう考えてもドイルが「やめたくてやめたくてしゃーなかった作品の最終回」ってぇんでかなり「お座なりに」話を作りました、ってのがアリアリなのだ。
加えて、ホームズの10数年後の再連載スタート「空き家の冒険」もある種取って付けたような話である。
奇才、ニコラス・メイヤーが目を付けたのはその辺だったのだ。
ホームズの伝記作家であるワトソンが書いたその二つの原稿には嘘が含まれる・・・・・・。
ニコラス・メイヤーが創造した話(これは小説上は、メイヤーの叔父が「発見」したワトソンの未発表原稿、て事になってるが)はこうだ。
シャーロック・ホームズの悪癖と言えば「コカインの7%溶液」の摂取だが。
昨今のホームズのコカイン依存症、要するに麻薬中毒具合は酷い状態になっていた、と。
シャーロック・ホームズとワトソン。ホームズは「常にモリアーティ教授に狙われてる」と言う強迫観念に囚われた話をする。
Dr. ワトソン。
ホームズは「悪の天才」モリアーティ教授と対決せねばならない、と力説する。
そして彼自身がモリアーティ教授に狙われてるので警戒してる、と。
しかしある時、ワトソン博士は「モリアーティ教授」と名乗る人間の訪問を受ける。
ホームズに聞いてた話と違い、モリアーティ教授は気弱そうな数学教師でしかなかった。
そして逆に、モリアーティ教授はホームズのストーキングに困惑してる、とワトソンに言う。
ここでハッキリしてきたのがホームズの「コカイン中毒」である。すぐさま治療を受けさせないと命に関わる、とワトソンは感じる。
しかし、コカイン中毒治療を素直に受諾するホームズではない。
そこでワトソン博士は、ホームズより明らかに頭脳が明晰な、ホームズの兄、マイクロフト・ホームズの助力を乞う。
マイクロフト・ホームズとワトソン博士
マイクロフトは一計を案ずる。
それはモリアーティ教授を囮に使い、ヨーロッパ一の麻薬中毒治療の権威が住む、オーストリアにホームズを連れ出そう、と言う事だ。
マイクロフトとワトソンのこの案によりホームズはモリアーティ教授を追いかけ、ウィーン在住の「麻薬中毒治療の権威」を訪れる事となってしまう・・・。
その人とは・・・・・・。
なんと精神医学の祖、若き頃のジークムント・フロイトだった(笑)。
実際の1905年頃のフロイト
とまぁ、場所をオーストリア・ウィーンに移し、ホームズ+ワトソン+フロイトのトリオによるホームズ治療譚が始まるのだが、この三人はまた事件にも巻き込まれていくのである・・・・・・。
と言う、「シャーロック・ホームズの回想」最終話の「最後の事件」と「シャーロック・ホームズの帰還」の「空き家の冒険」で隠されたシャーロック・ホームズの真の「隠された10年に至る話」がこの映画及び原作本である。
かなり面白いんでオススメ、である。
ニコラス・メイヤーのシャーロキアンぶりがよく分かる作品となっている。