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Retro-gaming and so on

フロム・ビヨンド

ビヨンビヨン


いや、違う。プレステ初のRPG(しかもクソゲー)の話をしたいわけじゃない。

さて、今まで2本、H.P.ラブクラフト原作の映画を紹介してきた。取り敢えず「ラブクラフトってどんな話を書くんだ?」ってのを誤解を含めながら知るには恐らくいい映画だとは思ってる。
何度も言うが、ラブクラフトファンは怒るだろうが、そもそもラブクラフトの小説は面白くない。面白くない、って言って悪ければ怖くない。
そんな彼の小説を一応、丁寧に「コンセプト」を拾って改変しつつもB級エンターテイメントに仕上げた奴らは悪く言われる必要なんざねぇんだよ。マジな話で。
実はもっと原作に近いテイストを目指して撮られた映画もあるこたぁあるんだが、ぶっちゃけ、ある種「芸術的過ぎて」多分一般の観点から観るとやっぱ「あまり面白くない」と思うんだよな。ラブクラフトファン「だけ」が喜ぶ映画ってのは紹介するに値せんと思うんだ。皆どうせ映画観るなら「楽しみたい」だろ?芸術的なブツ観て「へぇ、なるほど」とか言ってもしょーがねぇわけじゃん(笑)。まぁ、少なくとも僕は「しょーがねぇ」と思うタイプだ。同じ二時間前後使うなら楽しみたい。

と言うわけで厳選、って程じゃないけど、取り敢えず原作のストーリーを辛うじてなぞりつつも、楽しく観れる映画を二本紹介したわけだが。そして本当はそこで打ち止めにしたかったんだよな。
一方、H.P.ラブクラフト原作、って言い訳しつつホンマにメチャクチャにしやがって(笑)、その割に面白い映画があるんだわ。これを紹介するかどうかちと悩んでたんだよな。
でも番外編的な意味ならいいんじゃねぇの、ってぇんで紹介する事にした。本当の事を言うと「面白い!」ってだけで一本目として取り上げても良いな、とか思ってたんだけど、それは止めたの。何でかってぇと、この映画観て

「ラブクラフトってメチャクチャ面白い話書くじゃん!」

とか誤解されたくなかったからだ(笑)。そんなんなったら責任が持てない(笑)。
ハッキリ言うと、この映画の90%前後は制作と監督と脚本家の殆どオリジナルと言って良い。要するに「ラブクラフトの名前を借りてきて」本当に悪趣味丸出しでメチャクチャやってるんだわ(笑)。

背景を説明しよう。この映画、フロム・ビヨンドは、ラブクラフトの原作でも「From Beyond」と言うタイトルだ。邦題では「彼方より」となっている。
創元推理文庫版だと13ページ程の極めて短い短編・・・短編って言うだけの分量があるのか(笑)?いずれにせよ、物凄く短い話だ。

  1. 「わたし」は自宅で研究をして引きこもってる友人(多分金持ちの?)クロフォード・ティンギャーリストを訪ねる。
  2. クロフォードは「ここじゃない、かつこの世界と重なってる異次元」を「観る」為の装置を開発している。
  3. その機械のスイッチを入れたら「重なってる世界の化物」が見えるようになった。
  4. 気づいたらクロフォードは死んでいて、機械は拳銃で撃ち抜かれて壊されていた。
  5. 警察は「わたし」を逮捕したがクロフォードの死因は脳溢血だったので釈放になった。
  6. しかし「見えた化物」が今も傍にいるようで恐ろしい。
とまぁ、大雑把に言うとこういう話なんだけど、1時間25分あるこの映画で、この話が「使われる」のは冒頭8分程度なんだ(笑・※1)。
そう、この映画、ここから話を広げまくって水増してるんだ。

さて、この映画、実はブライアン・ユズナ制作のラブクラフトものの二作目だ。前作に当たるのが以前紹介した「ZOMBIO/死霊のしたたり」だ。
日本じゃイマイチパッとしなかった印象だが、実は「ZOMBIO/死霊のしたたり」は世界的には結構なヒットとなっている(続編も二作作られる程だ)。
やっぱり「死霊の・・・」っつー邦題の付け方がマズかったんじゃね?って話は置いておいて(笑)、いずれにせよ「ZOMBIO/死霊のしたたり」のヒットを受けて作られている。従って、監督も(スチューワート・ゴードン)脚本も(デニス・パオリ)主演2人も前作から続投だ。


主演の1人、ジェフリー・コムズ。「ZOMBIO/死霊のしたたり」では死体蘇生者ハーバート・ウェストを怪演した人。
今回も小説で唯一名前を挙げられているクロフォード・ティンギャーリスト博士を演じる。
ただし、小説版と違って、こっちのキャラは小説での「わたし」になっていて、ヘンな異次元こんにちわ装置を作ったのは映画オリジナルキャラのエドワード・プレトリアス博士になっている。

今回、相方を勤めるのは映画オリジナルキャラのキャサリン・マクミケル博士。
前回の「ZOMBIO/死霊のしたたり」では裸にひん剥かれてヘアヌード状態でブロッケン伯爵にパイオツをペロペロ舐められていた人(笑)、バーバラ・クランプトンが演じる。
ただし、今回はパイオツ度は低い。

そして何より、前作よりバジェットが大きくなっている模様だ。

さて、人物紹介にも書いたが、原作と映画を通して出てる人物はクロフォード・ティンギャーリストただ1人だが、原作と映画では役割が違っている。原作ではヘンテコマシンの作成者だが、映画ではあくまでその制作を助ける助手扱いで、原作での名状しがたき「わたし」に役割が近い。

ヘンテコマシン。異次元こんにちわ装置。
正式名称はThe Resonator。共振機。シンセサイザーで言うトコの「レゾナンス」発生装置だ。

映画版ではヘンテコマシンを主導して作る男はエドワード・プレトリアス博士。彼は「彼方」を覗きたい人で、人間の脳にある松果体が第3の目の役割を担っていて、第六感もこれが司ってる、と言ってる。全く何を仰ってるのか分かりまへん(苦笑)。
いずれにせよ、松果体を使えば「この世に重なって人間が認識出来ない何か」を認識出来る、とアタマのおかしな事を言っておりまする。



ところが冒頭8分以内にこのプレトリアス博士が謎の死を迎えるわけだ(笑)。首チョンパ死体になっている。
深夜の怪しい音のせいで近所のおばさんに通報され、哀れクロフォード氏は警察に逮捕される。





と、ここまでで先にも書いた通り、原作小説の殆どを消化し終わる。
この映画の本番のストーリーはここからスタートする。
「アレが博士を喰ったんだ!」と無実を主張するクロフォード。だが、クロフォードは精神科病棟に監禁される。精神錯乱をしてる、と判断されたわけだ。
検察は専門家である精神医学者の助けを求める。1人がブロック博士(おばさん)、そしてもう1人がマクミケル博士。


この2人は統合失語症患者の扱いが違い、要するに治療方針が違う。ブロック博士は「とにかく精神病院に監禁すればいいじゃない」主義で、一方、マクミケル博士は「統合失語症患者を連れ回す」主義。ブロック博士はマクミケル博士を「患者を実験用動物として扱っている」と批判している。
いずれにせよ、クロフォードは幻覚・幻聴を持ったが故の殺人を犯した、と疑われてるわけだ。


ちなみに、クロフォードは物理学の博士号をまたもやミスカトニック大学から得ている(笑)。
っつーかそんな不祥事を起こす輩ばっか輩出するような大学なら潰した方がエエんちゃうかとか個人的には思うんだけど(笑)。
いずれにせよ、クロフォードは無実を主張する。
マクミケル博士は取り敢えず、クロフォードをCTスキャンに掛けよう、と提案するんだが、クロフォードの脳に物理的な異常を発見する。彼の松果体が肥大化してるのだ。


マクミケル博士はプレトリアスとクロフォードが行ってた実験が原因でクロフォードの松果体が肥大化したのではないか、と推測する。
そこでマクミケル博士は、取り敢えず彼が行ってた「実験」を追試してみたら真実が分かるのでは、と提案し、クロフォードが殺人を犯した、と言うのは状況証拠しかないので決め手に欠けてた検察側はそれを受け入れる。


止めときゃいいのに(笑)。


クロフォードは取り敢えずマクミケル博士預かりになるが、マクミケル博士はクロフォードにプレトリアス邸に赴いて「追試」をするように頼む。当然ながらクロフォードは「それ」を畏れていて、気が進まない。しかし、「実験をしてみて無実を証明するか、精神病棟に監禁されたままでいるか」と半ばクロフォードを恫喝し、再実験の約束を取り付ける。
ここでプレトリアス邸に赴くにあたって、三人目の協力者・・・と言うか警察側の「監視」の役目を担ったブッバ・ブラウンリー刑事が同行する事となる。



こいつはユーモアたっぷりでこの映画で唯一マトモなヤツなんだけど、ネタバレするがこいつは死ぬB級映画ではイイ奴は死ぬのだ(謎

さて、三人はプレトリアス邸に着く。深夜じゃなくてもいいと思うんだけど、とにかく着くのだ。


ここでブッバはSMビデオを発見する。しかもそこにプレトリアス博士が映っていたのだ。


そう、プレトリアス博士の性癖はドSだったんだ。


それはさておき。
クロフォードはヘンテコマシンを破壊しようとするが、ブッバに止められる。



取り敢えず3人は遅い夕食を取り、「再実験」を行う事となる。
クロフォードが言うには「おかしなモノが見えるだろう。でも動くな。動くと奴らに気づかれる」と警告する。
そしてマシンを起動すると、空中を泳ぐ日本人にとっては食材(笑)が現れるのだ。


そしてクロフォードの警告を無視して「見てるモノを確かめよう」としたブッバだが、「それ」に攻撃を受けてしまう。



そしてそこに、しんっだは〜ず〜だ〜よぉおっとみっさん♪もとい、SM博士が現れる。




SM博士は「死んだのではない。"向こうの世界"に行ったのだ」と言う。
そして美人のマクミケル博士を「いい女だ」と言い、執着を見せる。
そして、怪物化する。


「心に従って体は変化するんだ」とSM博士は言って取り敢えず「あちらの世界へ」逃走する。
翌日。昨晩の結果だけで充分だと思ってるクロフォードとブッバだが、マクミケル博士は松果体肥大と実験の関連を突き止める為さらなる「追試」が必要だ、と主張。やめときゃいいのに(笑)。

「松果体」は性的衝動と関係がある、と解説するマクミケル博士。

マクミケル博士はこの実験と松果体肥大の関連が分かれば統合失語症の治療に役立つかもしれない、と考えている。実はマクミケル博士の父親も統合失語症を患い入院し、薬学的な治療、ショック療養、手術さえダメで、最後は植物人間状態で15年にも渡る闘病生活の末亡くなっていた。
しかし、やはりクロフォードとブッバは反対し、取り敢えず一旦休みを取り、その後プレトリアス邸を辞す、と言う暫定的な決定となるが・・・。
「松果体の疼き」らしきものを感じ、ブッバとクロフォードが寝ている途中、マクミケル博士はヘンテコ機械をまたもや起動してしまう。



この映画の面白いトコは、いわゆる「自分が考えた理論に準じる科学者の愚かさに対する批判」と言う割にSFに良く出てくるテーゼに見せかけておいて、しかしながら同時に、インテリである筈のマクミケル博士の行動なのに、「愚かな女が状況を余計ややこしくする」と言うフェミニズムかぶれが怒髪天を衝きそうなテーゼを被せてきてる辺りだ。
そう、この再実験に反対するのは男性2人で、「愚かな」女性だけが再実験をやりたがる。彼女の「統合失語症を治療したい」と言う思いは本物だが、しかしながら実際問題それは「この機械の危険性」を考慮すると目先の利益でしかない「愚かな女の選択」なんだ。
そしてそれが松果体刺激による「性的衝動」と重なって、「セックスの快楽に逆らえない女」と言う古典的でチープなテーゼとも重なっている。
まぁ、ハッキリ言って女性蔑視だろう。しかし3つも重ねてくると「見事」としか言いようがないんだ。



そこにもはや「なんだか分からなくなった」SM博士が現れる。



「エドワード、貴方は今なんであれ人間だろ?」と問うクロフォード。
しかし、SM博士は「人間以上の者だ」。
「全ての者は私に取り込まれないとならない」となんだかエヴァの人類補完計画みてぇな事を言い出す。



とまぁ、この辺りまでで大体映画の半分。もはやラブクラフトの原作は全然関係ないが(笑)、意外と「あちらの世界」から出てくるクリーチャーはクトゥルフ神話臭い。
この後も松果体を刺激されまくったマクミケル博士はSMバンデージルックを楽しんだり


松果体を刺激されまくったクロフォードは松果体が額から突き抜けて来て、人の脳みそを啜るゾンビ状態になったり、




もうホント、悪趣味でメチャクチャでやりたい放題の映画と化す(笑)。もはやラブクラフトは全く関係がないB級映画になるんだ(笑)。
しかし、これが結構面白い。
変わったホラーが観たい、って人にはオススメな映画だ。

※1: 結果、時間長で見ると8分/85分で、ラブクラフト要素の含有率は10%に満たない(笑)。計算上、ラブクラフト「じゃない」部分が90%以上を占める(笑)。
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