港に行くと、マドロスさんが片足を乗せたお決まりのポーズをする突起物がありますが、ビットと呼びます。

もちろん、ビットは船を岸壁に係留するときにロープ(Mooring Line )を繋げるためのものです。

さて、このビットの使い方にも作法があるのを知ってますか?
港の共有物なので、自分だけが使うわけではなく、混んでいるときは2艇以上で共有する場合があり、その場合後から来た船は前からいる船の"もやい綱"の下からくぐらせるようにして引っ掛けるようにする。というもの。
そうしないと、前からいる船が"もやい綱"を外せなくなってしまうからだ。という理屈です。
しかし、その「基本的なシーマンシップ」を知らないプレジャーボート乗りがけっこう多いです。私自身も経験あるし、他のヨット乗りで経験している人も少なからずいるようです。
「最近の若いモンは、そんな基本も知らんのか!」という話になるのですが、一応私のロープワークに関する教科書「図解 実用ロープワーク(増補3訂版) 前島一義著 (株)成山堂 ©️2003」で調べてみました。
なんと、驚くべきことに「(もやい結び)はロープが緊張していると解くことも結ぶこともできない。船の係留にはもやい結びがすべてではないことに注意。(p158)」とあるではないですか!
そして「ロープが緊張したときは"帆足どり"や"バージーズ・ヒッチ"を用いる。(p158)」とありました。
「帆足どり」とは「日本で昔から行われている結びの一つで、小型船で多用されている結びである。(p22)」との事。イラストも引用します。
「バージーズ・ヒッチ」は「主に小型船の係留によく用いられる止め方(p108)」との事。
イラストも引用します。
そして、"基本的シーマップである"と先に書いたやり方については「主として中・大型船の止め方(p107)」と書かれていました。イラスト引用します。
ロープの先端はアイスプライスされていて解くことはできないですね。

そうなんです。
「最近の若いモンは、そんな基本も知らんのか!」と言った当人も知らないことが、私の"教科書"には色々と書いてあったのです。
ということで、実際に試してみました。
これが"基本のキ"と言われるやり方。
白いロープが後から来た船。

そして、帆足どり。
これは簡単ですし、解くのも楽そうです。

帆足どりの最端はハーフヒッチなのですが、ちょっと心もとなくツーハーフヒッチにしたのがこれ。
ハーフヒッチでも大丈夫なのでしょうが私的にはこの方が安心感あり。

バージーズヒッチがこれ。
出来上がりはクラブヒッチの変形のようですね。だとすると強く引かれると解けにくくなる可能性あり?(検証してません。)

もやい結び(Bowline knot) の欠点である「ロープが緊張していると解くことも結ぶこともできない。」については、綱端に引き解き結びを使うことで、やや解消されるでしょう。


そして、
実際の漁港のビットは、こんなカオス状態だったりします。
こんな状態のところでは、"基本"より"応用力"が求められます。アナタならこのビットにどうやってもやいますか?(笑)

結論としては、"引き解けを使ったもやい結び"か"帆足どり"のどちらかをケースバイケースで使うことで、他船のもやい綱がどんなに変則的な結び方で結ばれていても対応できるようにしておく。・・・というのが今どきのシーマンシップ(スキル)なのかなぁ?と思います。
8/15
台風7号対策のため、MYOCで"縦もやい(前後の艇同士でロープをつなぐ)"設置ボランティア作業に行ってきました。
常時"横もやい(左右の艇同士でロープをつなぐ)"はしてあるのですが、台風時は縦もやいもして前後左右に網目のようにもやいをかけることで例え走錨した場合も被害を最小限にしようという、なんだか隣組制度のようなクラブ運営なんです。
みんなで手分けして作業したので、2時間あまりで完了。あとは台風が少しでも離れて通ることを祈るばかりです。

横もやいはうっすらと見えますかね!縦もやいは私のフリーハンド(雑ですね)
お隣りの油壺湾の漁船群の台風養生もバッチリのようです。

さあ来いアンピル!