よく晴れた日に小金原団地(松戸市)を訪ねてみました。団地につながる「いちょう通り」の並木は、文字どおり、黄金色に染まり、青い空のもと、晩秋らしい風景が見られました。
いかにも現代の街の風景ですが、江戸時代は野原や林が広がり野馬(のま)が遊ぶ土地でした。今でも坂や崖が多いのですが、うねる道路を見ているとかつての小金牧に思いを馳せずにはいられません。
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江戸幕府は軍役や荷役のため、各地に設けた直轄の牧(まき)に野馬を囲っていました。そのひとつが小金牧と呼ばれ、現在の松戸市、柏市、流山市、野田市、鎌ケ谷市、白井市等にまたがって広がっていました。
牧は五つに分かたれ、松戸周辺は「中野牧」と呼ばれ、陣屋が置かれ牧の管理にあたっていました。直接、馬や環境の管理にあたったのは牧士(もくし)と呼ばれる人々で、地元の有力者の中から有能な者が選ばれたそうです。
明治以降、牧は開拓、開発され、その姿は全く変わりました。現在では、その痕跡を感じることすら、まず、ありません。現在の風景からは、野馬(日本産の小型の馬)がのんびりと草を食んでいたとは想像すらできません。
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上左は、金ヶ作(かながさく)陣屋跡の標柱(松戸市常盤平陣屋前)で、付近に牧の管理を行った役所がありました。(2022年12月撮影)
右は小金原団地内にある水戸家御鷹場役所跡の標柱(松戸市小金原)で、付近に水戸家の役所があったことを示します。(2022年6月撮影)
いずれも、建物等は現存しません。
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今も残る安蒜(あんびる)家の長屋門(市指定有形文化財)。松戸市内に現存する長屋門でも最大とされるもので、大きく立派な門構えです。天保11年(1840)に建てられた貴重なものです(内部非公開)。
安蒜家は牧士を勤めた家の一つです。牧士の多くは地元の有力者が幕府から任命され、帯刀、乗馬、鉄砲所持が許されました。
馬や自然に関する知識が豊富で、放牧場を巡視し、野馬の保護を行うなど体力もないとできません。後代には、経営の才のある人物も登場したようです。∎
(つづく)
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