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ドナウ川のさざ波(異聞)

2023年07月27日 | 音楽で考えた
前日の続きです。

ワルツ『ドナウ川のさざ波』の作曲者、イヴァノヴィッチはルーマニアの軍楽隊の隊長でした。
このワルツが作曲され、世界に知られるようになる頃、日本にフランスの軍楽隊長が滞在していました。日本政府の招聘に応じ、創成期の陸軍軍楽隊の教育に貢献したシャルル・ルル―(Charles Edouard Gabriel Leroux, 1851-1926)です。

ルル―は、西洋音楽の知識、経験がまったくない兵隊を相手に音楽教育を施す一方で、日本音楽の研究にも手を染めています。そして、西南戦争を主題にした軍歌『抜刀隊』(外山正一詞、1985年公開)を作曲しますが、これが全国的に広まったことから、後の演歌等の発生にまでも影響を及ぼすことになります。想像の域を出ませんが、その延長線上にわらべ歌『一かけ二かけて』もあるようです。


ルル―は、イヴァノヴィッチ(1845-1902)と同時代人と言ってよく、しかも、軍楽隊の高位者という点でも同じです。日本滞在は、1884年(月日不明)から1889年1月にフランス政府から突然の償還命令を受け帰国するまでです。
イヴァノヴィッチの『ドナウ川のさざ波』の作曲が1880年、そのオーケストラ版のパリ万博初演は1989年ですから(パリ万博の開催期間は、1889年5月から10月まで)、時間的に微妙な部分もありますが、示唆的です。『ドナウ川のさざ波』について何らかの情報を得ていた可能性がないとは言えないように思います。

これは大変興味あるところなのですが、残念ながら、今のところ、証拠はまったくありません。しかし、時を同じくして、洋の東西に二人の軍楽隊長がいて、その間に『ドナウ川のさざ波』を置いてみることは、大変誘惑的です。


『ドナウ川のさざ波』は、ルーマニア語でValurile Dunării、ドイツ語ではDonauwellen、英語ではWaves of the Danubeで、いずれも単に「ドナウ川の波」です。これを「さざ波」としたのはなかなかの名訳だったと思います。そのさざ波はいまでも私の脳裏に寄せては返すのです。


(ご参考)
シャルル・ルルー(ウィキペディア)
野村光一著『お雇い外国人⑩音楽』鹿島研究所出版会、1971年2月刊.



今日の動画は郷愁を誘うギター・ソロです。切々と胸に迫るアレンジで、これもありだなと納得させられます。

I. Ivanovici - Waves of the Danube. Performed by Anastasia Bardina. Arr. of Alexander Vinitsky


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