8月13日、フランス・ブリュッヘン氏が世を去った。79歳。18世紀オーケストラの関係者が明らかにしたのこと。
ブリュッヘンは、私がリコーダーに熱心だった頃、ドルメッチ、コンラート、リンデらとともに当時の主要なリコーダー奏者でした。しかし、ブリュッヘンがあらゆる面で抜きんでいたと思います。現在と違い、社会のリコーダーの認識は「学校の楽器」という程度で、プロがステージで吹くに値するものと受け入れられるのにはまだまだ時間が必要だった時代です。
そんなマイナー楽器のリコーダーを芸術表現のできる楽器としてコンサートに引き上げたのがブリュッヘンでした。ブロックフレーテというドイツ語も浸透し始め、バロック音楽やそれ以前の音楽に対する既成概念を打ち破る演奏を始めたのでした。まさに、獅子奮迅の活躍でした。
その演奏スタイルもユニークで、今風に言えばイケメンのブリュッヘンが、普段着で椅子に足を組んで座り、大きく上体を揺すりながら、頬を膨らませる独特の呼吸法で吹くソプラノやアルトのリコーダー。それだけでも十分ユニークでした。そして、単純な木管楽器とは思えない、生気に満ちた音楽が奏されました。
彼が、リコーダー・ブーム、古楽ブームの起爆剤となったのは言うまでもありません。前後して、レオンハルト、クイケン兄弟、ビルスマなどのオランダ勢が台頭し、古楽シーンを独占した感がある。そして、それまでのモダン楽器による演奏、演奏家を駆逐していくようでした。少なくとも、モダン楽器によるバロック音楽は一世代前のものと認識されるようになったのは間違いではないでしょう。
ブリュッヘンがリコーダーを止め、18世紀オーケストラを編成したと聞いたときは訝しく思い、少々がっかりしたことを覚えています。しかし、彼としては、長年追求してきた古楽の世界をさらに拡大し、普及したかったのではないかと、今からは想像しています。
リコーダーという小さな楽器でバロック音楽を革新したブリュッヘンの貢献は計り知れないものがあると思います。
その彼もリコーダーの澄んだ響きのさらにその上の高みにまで登ってしまいました。70年代の、ブリュッヘンとグールドが私のアイコンだった時代も、彼の死でまた一段と遠くなってしまったように思います。
マエストロ、どうぞ、安らかにお休みください。
†Frans Brüggen, October 30, 1934, Amsterdam - August 13, 2014, Amsterdam. フランス・ブリュッヘン、オランダのリコーダー演奏家、指揮者。
レコードを除くと我が家のCDにはブリュッヘンは2枚のみで、バッハの無伴奏はレコードで出ていたものがCD化されて購入したもの。
一方の『涙のパヴァーヌ』は、それ以前になぜかブリュッヘンが聴きたくなり、購入していました。今聴いてもまったく違和感がなく、新鮮に聴けます。ブリュッヘンが撒いた、多様性の種が広がって、古楽の演奏が耳に珍しくなくなっているからだろうと思います。リコーダーながら、十分にニュアンスがあり、時に優しく、時に鋭い音を聞かせてくれる。超絶的な技術に支えられて飛翔する旋律は何故か暖かい。若い頃のブリュッヘンが込めたものを思うと胸に迫るものがあります。
■Famous Recorder Music: Frans Brüggen〔涙のパヴァーヌ: リコーダー名曲集〕, エイク;涙のパヴァーヌ、コレルリ;ソナタト短調(ラ・フォリア)、クープラン;恋のうぐいす他.F.ブリュッヘン、K.ブッケ(リコーダー)、A.ビルスマ(チェロ)、G.レオンハルト(チェンバロ)他.1963-1970録音.TELDEC、WPCSS-21090
ブリュッヘンは、私がリコーダーに熱心だった頃、ドルメッチ、コンラート、リンデらとともに当時の主要なリコーダー奏者でした。しかし、ブリュッヘンがあらゆる面で抜きんでいたと思います。現在と違い、社会のリコーダーの認識は「学校の楽器」という程度で、プロがステージで吹くに値するものと受け入れられるのにはまだまだ時間が必要だった時代です。
そんなマイナー楽器のリコーダーを芸術表現のできる楽器としてコンサートに引き上げたのがブリュッヘンでした。ブロックフレーテというドイツ語も浸透し始め、バロック音楽やそれ以前の音楽に対する既成概念を打ち破る演奏を始めたのでした。まさに、獅子奮迅の活躍でした。
その演奏スタイルもユニークで、今風に言えばイケメンのブリュッヘンが、普段着で椅子に足を組んで座り、大きく上体を揺すりながら、頬を膨らませる独特の呼吸法で吹くソプラノやアルトのリコーダー。それだけでも十分ユニークでした。そして、単純な木管楽器とは思えない、生気に満ちた音楽が奏されました。
彼が、リコーダー・ブーム、古楽ブームの起爆剤となったのは言うまでもありません。前後して、レオンハルト、クイケン兄弟、ビルスマなどのオランダ勢が台頭し、古楽シーンを独占した感がある。そして、それまでのモダン楽器による演奏、演奏家を駆逐していくようでした。少なくとも、モダン楽器によるバロック音楽は一世代前のものと認識されるようになったのは間違いではないでしょう。
ブリュッヘンがリコーダーを止め、18世紀オーケストラを編成したと聞いたときは訝しく思い、少々がっかりしたことを覚えています。しかし、彼としては、長年追求してきた古楽の世界をさらに拡大し、普及したかったのではないかと、今からは想像しています。
リコーダーという小さな楽器でバロック音楽を革新したブリュッヘンの貢献は計り知れないものがあると思います。
その彼もリコーダーの澄んだ響きのさらにその上の高みにまで登ってしまいました。70年代の、ブリュッヘンとグールドが私のアイコンだった時代も、彼の死でまた一段と遠くなってしまったように思います。
マエストロ、どうぞ、安らかにお休みください。
†Frans Brüggen, October 30, 1934, Amsterdam - August 13, 2014, Amsterdam. フランス・ブリュッヘン、オランダのリコーダー演奏家、指揮者。
レコードを除くと我が家のCDにはブリュッヘンは2枚のみで、バッハの無伴奏はレコードで出ていたものがCD化されて購入したもの。
一方の『涙のパヴァーヌ』は、それ以前になぜかブリュッヘンが聴きたくなり、購入していました。今聴いてもまったく違和感がなく、新鮮に聴けます。ブリュッヘンが撒いた、多様性の種が広がって、古楽の演奏が耳に珍しくなくなっているからだろうと思います。リコーダーながら、十分にニュアンスがあり、時に優しく、時に鋭い音を聞かせてくれる。超絶的な技術に支えられて飛翔する旋律は何故か暖かい。若い頃のブリュッヘンが込めたものを思うと胸に迫るものがあります。
■Famous Recorder Music: Frans Brüggen〔涙のパヴァーヌ: リコーダー名曲集〕, エイク;涙のパヴァーヌ、コレルリ;ソナタト短調(ラ・フォリア)、クープラン;恋のうぐいす他.F.ブリュッヘン、K.ブッケ(リコーダー)、A.ビルスマ(チェロ)、G.レオンハルト(チェンバロ)他.1963-1970録音.TELDEC、WPCSS-21090