かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

この世に生きた証のようなもの

2006年04月26日 | がん病棟で
人間にとって仕事というのは、ナンなんでしょうね?
ただ生きていくための収入を得ることだけが目的ではない、と思っているのですが。

「もう1年くらいしか生きられないと思っています。自分にとって何が大切なのか、残された日々に最もやりたいことは何かを考えてみたんですが・・・やっぱり仕事なんですよ」

そうおっしゃるのは56歳の肺がん患者のSさん。
最初の頃は病気の話になるたびに「怖いよー、俺はどうなっちゃうんだろう」と泣いてばかりいましたが、最近はだいぶ落ち着いてきて、今日はこんなことを話してくださいました。
電気工事のサービス店を経営していたSさんですが、病気のことが発覚してから店を閉めてしまいました。

「先日、どうしてもってお客さんに頼まれたんで、二日ほど仕事したんですよ。がんのことを忘れて働いたら、ぐっすり眠れました」

『それはよかった。治療の副作用もあまりないし、仕事を少しやってみたらどうですか?』

「建築家とかだったら、後世に自分の仕事が残せるけど、俺達はサービス業だからねえ。何も残らないもんね』

『形あるものはいつか壊れますけど、Sさんのことはお客さんの心に残るんじゃないですか?』

医者と言う仕事もサービス業。
でも、私も何か形あるものを残したいと思うことがよくあります。
女優なら映画、作家なら小説、チェリストならアルバム、写真家なら・・・
この世に生まれたという証、その究極は自分の遺伝子の一部を受け継ぐ子供という存在なんでしょうかねえ?




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3 コメント

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感謝されると「これなんだよね」と思います (oketa)
2006-04-27 07:13:44
自分は建築士(積算資格者)で誰かから依頼がなければ自分の力を発揮することができません、仕事が無い事はよくあるのです、だから依頼がありその仕事に感謝されると無上の喜びを、生きている存在価値を実感いたします、それが仕事だと思うのです。



仕事に生きがいを感じられない知り合い(30代後半、男、独身)は両親が共に教員で既に退職し生活に困らない充分な年金で暮らしています、だから自分が働かなくても生活は出来る、と言って仕事を止め実家へ帰ってしまった・・・仕事が収入の為の目的だけと考えるとこんな志の貧弱な子供(大人なんですけどね)が社会からドロップアウトしちゃうのではないでしょうか、虚しいです。



子供って生きがいになりますよ、いいですよ。
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Unknown (cellopy)
2006-04-28 00:30:35
現世では子供を持つことはあきらめてしまいました・・・

せめて親不孝だけはしないようにしないとね。



oketaさんも新生活に慣れるのにしばらく大変でしょうけど、がんばってくださいね!
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講習会 (EMMA)
2006-04-28 09:22:09
自分の子供でなくてもcellopyさんは、立派に貢献していますよね



今年は、うちの上の子の学年にタバコの話しをして頂きたく先日学年主任の先生にお話ししました。

またまたお世話になると思いますが宜しくお願いします。



今日は、久々にカウンセリングを学んでいた時のOさんとランチします。みなさん頑張って勉強しているようです。



私も頑張って勉強しないと
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