かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

豹変

2010年11月25日 | お医者さんの一言
ある女性患者さんに受診日の変更をお願いしようと、直接ご自宅へ電話をした。
しかし、なんだか様子がおかしい。
普段の彼女とはぜんぜん話しぶりが違って、すごく不機嫌そう。
具合でも悪いのかと心配になった。

「それは、○○先生がそう言ってるのですか?」

『あの、私○○ですけれど・・・』

「あらっ、先生ですか?!お忙しいのにわざわざすみませんっ!」

もちろん、最初に名乗ったのであるが、他の病院職員だと勘違いしたらしい。
まさか医者が直接電話などかけてくるはずがないとでも思っていたのだろうか?

昔はナースと間違えられることが多かった。
特にお年寄りにはよく間違えられたものだ。
病院内で白衣を着ている女性というだけで、はなからナースだと思い込んでしまう。

看護師が看護婦と呼ばれ、ナースキャップをかぶっていた時代。
「ちょっとそこの看護婦さん」と呼び止められるたびに、『またかよ。白い帽子かぶってないのが見えないんかね?』と心の中で文句たれながら、笑顔で『はいはい、なんですか?』とあえて否定もせずに対応したものだ。
人の先入観というのは恐ろしい。

いまの時代はナースマンたちが、たまにおじいちゃん、おばあちゃんたちから「先生!」と呼ばれている(笑)。

それで、そんな人まちがいの場面で時々経験するのが、患者さんたちの態度の豹変だ。

医師とわかったとたん、「ああ、先生でしたか。スミマセンッ」と、それまでのぞんざいな態度が一変して、言葉が丁寧になる。
看護師に対する患者さんたちのこれほどの態度の違いは、何からくるものであろうか?

看護師の仕事は3Kといわれて久しい。
日本の看護師の社会的地位がアメリカなどに比べてまだまだ低いのも、原因だろう。
そしておそらく、過去の時代にみられた医師患者関係における絶対的主従関係というか、「俺様が治してやるんだ、だまって言うことを聞け」的な、医師が患者に横柄な態度をとり続けてきたがゆえの、おぞましき名残のせいも当然あるのではないかと思うのだ。






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