横断歩道上のエスコート

小学校での楽しいタバコの課外授業を終えて職場に戻る途中、カールが食べたくなって、スーパーを兼ね備えた大型ドラッグストアに寄った。
なぜか、カレー味のカールは普段は売られていないのだけれど、今は季節限定の受験生応援「合格祈願ウカール」というのがあって、大好きなカレー味が店頭に並んでいるのだ。
午前も午後も課外授業で、少々エネルギー不足を感じていたアタシは、チーズ味もついでに買った。

レジでアタシの前で会計をしていたのは高校生の男の子だった。
顔はまだ幼く、体格的にも中学生っぽいけれど、あの制服は高校だから、たぶん１年生かな。

制服はヨレッとしていて、全体的にだらけた感じ。
ガムをくちゃくちゃ噛んでいる。
靴は汚れたスニーカー。
ズボンのポケットから携帯のストラップらしき小さなぬいぐるみがのぞいている。

買い物カゴの中身は、大きなビンのインスタントコーヒー２個と、コンソメスープの素。
お使い頼まれたのね・・・
だけど、「まったく、めんどくせーな」的オーラが出てる。

可愛い小学生たちと接したあとだったので、『あの素直で可愛い子供たちも、将来こんなふうになっちゃうのか・・・』と思ったら、なんだかガッカリだ。

買い物を終えて、店の前の３車線の広い道路で信号待ちをしていたら、さっきの男の子がちょうど横断歩道を渡っているところだった。
斜め横断している。
危ないねえ。

一番左側のレーンに止まっていたアタシは、信号が青になったので発進。
そうしたら、道路のセンター寄りに老人カーを押した腰の曲がったおばあさんがいるのに気づいた。
まだ道を横断しきれていないのだった。
ちょうど隣２レーンに停車中の車の影で、おばあさんが見えなかったのだった。
よく考えたら、危ない状況だった。

だけど、そんなことよりも、アタシはめちゃくちゃ感動していた。
バックミラーを見たら、さっきの高校生の男の子が、おばあさんと一緒に歩いている。
歩くのが遅いおばあさんを、彼がエスコートしていたのだった。
右手をおばあさんの背に添え、左手は車を制するように高くかかげていた。

アタシは感動で、うるうるしながら、バックミラーをチラミしつづけた。
青になってもおばあさんが渡りきるのを待って停車しているドライバーたちも、みな感動していると思う。
アタシは発進しちゃったけどね

だらけた男子高校生だなんて思ってゴメン！
なんてアタシは人を見る目がないんだろう