平素より関係各位にはひとかたならぬご厚情を賜り、ここに改めて感謝の意を表したく存じます。
既に御承知置き頂いていることと存じますが、中央学院大学に勤務する我々非常勤講師有志は、大学法人側との団体交渉といった従来の活動と併せ、近時はブログを用いつつその思うところを広く開示して参りました。かくして我々の活動も盛況を極め、法人との折衝において一定の成果を得られるなど、望外の効果が得られました。誠に慶賀の至りと言えましょう。
ところで先般、本ブログにて個人を対象とした内容につき、一部人士より「名誉毀損にあたるのでは」という懸念が寄せられました。当方と致しましては、謂(いわ)れなき誹謗中傷にあたる記述は何ら見当たらないと思料します。
とはいえ当該ブログ冒頭で「首都圏非常勤講師組合」と掲げていた所為か、「何らかの訴えが提起されたときには同組合が被告とされてしまうではないか」という、それ自体は尤(もっと)もなご意見も頂戴しました。もとより我々とて、同組合へ会費を納入している組合員であります。さらにブログにしても、〈非常勤講師〉の権利を保全・伸張する活動の一環として開設し維持してきた、と自負しております。
ただこの件に関しましては、確かに組合本部の了解の下でなされたものではありませんでした。ために首都圏非常勤講師組合の皆様におかれましては、図らずも上述したごとき要らぬ杞憂(きゆう)を抱かせてしまいました。まずは不手際をお詫びしたく存じます。どうぞご寛恕(かんじょ)下さい。
さて以上の経緯を含め、また諸般の事情に鑑(かんが)みまして、我々は意を新たに致しました。
このたび我々は、独自に組合を設立します。
爾後(じご)ブログも、この新組合の管理下に置くものとします。
蓋(けだ)し、現場における実践についての認識と手段において、我々と首都圏非常勤講師組合(わけても執行部の皆様方)とはいささか見解を異にする、という結論に至りました。執行部の方々におかれましては、中央学院大学の些事(さじ)につき、安心して我が新組合に任せて頂いて構いません。今後とも宜しくお付き合いの程、お願い申し上げます。仮にブログ上の記述をめぐり〈名誉毀損〉の訴えが提起されたとしても、文責は新組合に存する点を明示しますので、そちらには累が及びません。どうぞご休心下さい。
我々が新たに組合を設立しようと決意した動機につき、もう少し詳しく述べる必要がありましょう。それは約言すれば運動組織とその担い手たる〈個人〉の捉え方です。
個々の手による運動が次第に組織の運動に成熟する、という考え方には大いに意味があるでしょう。殊(こと)に力を持つ相手との闘争は、多かれ少なかれ、団結した組織を通じた闘争という相を帯びます。しかしながら、組織を通せばあらゆる闘争は実りあるものになるという訳ではありません。まして教条主義に陥った組織は形式にのみ重視してしまいます。悪くすれば闘争の活力すら喪われかねません。組織への執着は闘争を自由なものにはさせないのです。一般に、組合といえばいかにも自由であり反権力の拠りどころと看做されていますが、実際は往々にして自己の権力に執着するあまり、身動きが取れなくなってしまいがちです。
かてて加えて運動の意義とは、単に表層的でキレイな闘争の中で実感されるものでなく、内外の敵と理解しあうことが極めて困難な現実において、なお闘うしかないという使命を見出す点にこそ存します。
我々の運動目的は、具体的な相貌を有した個人の権利保全にほかなりません。
我々が或る者の権利を擁護するのは、その当人がただ〈非常勤講師〉の地位にあるからではありません。〈非常勤講師〉の権利を守りたければ、それを謳っている既存の組合に相談すれば良いでしょう。実績を有する組合に加入すれば、政党や上部団体からの支援も期待できます。大きな組合は、国会で質問すべく議員に請願したり、関連諸団体との共闘を求めたりすることも可能です。そうした方法はなるほど〈非常勤講師〉全体の利益向上を図る手段としては極めて有効であり、今後も推奨されるべきでしょう。
けれども我々が主たる目的として掲げたいのは、そうした言わば大文字の運動ではありません。
我々の仲間は、〈非常勤講師〉ではなく、あくまで鈴木君や佐藤さん、あるいはカール君やローザちゃんといった生身の人間なのです。カール君が不当に担当コマ数を削減され、またローザちゃんが適正手続も経ずに雇い止めされたとき、大学や学部に対して我々が闘争するのは、なにも彼・彼女が〈非常勤講師〉だからではありません。否、共に研究・教育・仕事に携わる、血肉を持った友人であるからなのです。
なおこの点は主客を替えても、即ち攻撃される対象についてもあてはまります。
我々が攻撃する対象は、ただ表立った組織ばかりではありません。差し当たっては、理事会・教授会・委員会・部会といった組織を構成し、不当なコマ削減や雇い止めを決定し申し渡す〈個人〉が、何より俎上(そじょう)に載せられ指弾されなければならないのです。敢えて言えば、個々人の責任を明示して批判する営為を通じてこそ、組織の是正も図られるのです。
従いまして近くリニューアルされる新組合ブログでも、旧ブログの内容を基本的に再掲し、改めて当事者〈個人〉の意識改革を促す所存です。
目下のところ、我々の主たる闘争の場は中央学院大学ですが、ご承知の通りこれまで大村芳昭法学部長並びに中畑繁法学部教授が指弾されてきました。わけても両人の不行跡については、従前にも増して名指しで厳しく糾弾される次第となりましょう。また同時に学部〈組織〉の在り方に関しても、〈スポーツなんたらコース〉問題を嚆矢(こうし)として徹底的な攻撃が加えられることは言うまでもありません。
但し、前述のごとく我々は個人を相手としています。それゆえ個人が組織を隠れ蓑にせず、正々堂々と「この批判はマチガイだ」と反論してきたとき、また「誤りを是正するにはどうしたよいか」と照会してきたときには、懇談等の機会を設けて相互理解を深め、場合によってはこちらの過誤を修正し、また必要とされれば助言を提示させて頂くことも吝(やぶさ)かではありません。なお、主要な組合員についてはご承知のことと思いますので、連絡先は、当面は大学内のメールボックスを使用してください。
この様に闘争の主体・客体たる個人に重きを置く運動方針に対しては、それなりに批判も出てくるでしょう。けれども個人の権利を守らずして、何の運動でしょうか。また誰のための組合でしょうか。「同じ研究者・教育者・労働者として働く友人のために一肌脱がせてもらう」という気概こそ、我々の運動を持続させる原動力なのです。そして、個々別々の運動を実践する場、なかんずく中央学院大学という比較的規模の小さい場において、まず求められるべきはこうした義侠心である、と強く確信します。
新組合の名称や連絡先については、近日中に本ブログにて公開する予定です。関係各位にはますますのお引き立てをお願いしたく存じます。
なお我々の組合は、大学非常勤講師に限らず、高等学校、予備校、塾等に勤める講師、さらには嘱託・パート・アルバイト等非正規雇用職員の皆様にも門戸を開放します。伝統ある他の組合と異なり、政党や各種団体による手厚い支援はありません。ですが、そのぶん拘束もございません。我々は抽象的な〈非常勤〉という形式には拘(こだわ)りません。〈思想・信条・国籍・宗教の枠を超えて〉などとも唱えません。むしろ、そうした種々の属性を帯有する具体的-普遍的な個人が集い団結すること、この点に意義を認めます。
ともに有機的な運動を構成しませんか。