Yuumi Sounds and Stories

シンギング・リン®️セラピスト「藍ゆうみ」のブログ。日々の覚え書き、童話も時々書いています💝

お話妖精ルーモと風さんポーランド⑭

2020-05-06 14:16:31 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月14日(日)宵月の夜 ポーランド

どこからか美しい音が聞こえてきます。風さんがこれはピアノの音だと教えてくれました。少し昔、ショパンという偉大な音楽家がこの地にいたそうです。彼はたくさんの美しい曲を作りました。ショパンが亡くなってからもショパンの音楽が好きな人の気持ちが、この国の空にいつでもピアノのメロディーを響かせるのです。ルーモはピアノという楽器が弾いてみたいと思いました。



ルーモはショパンサロンのコンサートのお部屋に来ました。コンサートと聞くと、普通大きなホールだと思いますが、このショパンサロンのコンサートは小さな部屋で少人数のお客さんで行われます。ピアノとの距離が近く、ピアニストの息遣いまでが聞こえる距離で迫力があります。また、小さい部屋なので暖かく、寒いのが苦手な方にお勧めですが、今は夏なので大丈夫ですね。場所は観光地の新世界通りから徒歩で5分ぐらいです。マンションの3階の部屋になります。毎日午後7時半から行われるサロンコンサートで、グラスワインとお菓子が付きます。コンサート後はピアニストや他のお客さんとも話せる機会があり、素敵な思い出となりそうです。

ここでは、ルーモが見える人はいませんでした。音楽があったので人の心は寂しさや哀しみから放れて満たされていました。ピアノを弾くのは若い男性でした。ルーモはその人の後ろに立ってその人の指に合わせて自分も鍵盤をたたく気持ちになりました。その人の指は長くてきれいで、信じられないほど素早く動きました。

すべての曲があまりにも綺麗でルーモは嬉しくなりました。
題名だけは覚えようと頑張りました。

一つは「子犬のワルツ」
ルーモには子犬が天国からやってきて楽しく遊んでいるのが見えました。子犬と楽しくじゃれ合って幸せでとても無邪気な気持ちになりました。

次は「別れの曲」
この曲を聴いて、ルーモのこれまでの旅の別れ際を思い出しました。一瞬に近いわずかな出会いの中で心から仲良くなったと感じたのに、別れはすぐきました。そして、出会った人々とはもう二度と永遠に出会うことはないかもしれないのです。それを想ったら急に悲しくなりました。

そして、「英雄ポロネーズ」
この曲は勇敢な気持ちを通り越して、なぜか胸が張り詰めてとても悲しくなりました。闘いを前にした戦士の気持ちになったのです。自分は英雄になるために闘い、その先には死が待っているかもしれない。あとに残した母親や恋人や友の哀しみがこの曲には秘められています。ショパンはとても繊細で優しい人で闘いや英雄であることより、愛し合うことを望んでいたことが伝わってきました。

最後は「雨だれの前奏曲」
ルーモはこの曲を作ったショパンを恋しく思い、切なさの感情が湧いてきて、こんな気持ちは初めてでした。

音楽とは、不思議なものです。
人の心を嬉しくも楽しくも悲しくも勇ましくもします。そして、ルーモが感じたように誰かを恋しくもさせます。

人間の語る物語や奏でる音楽をたくさん体験して、ルーモに芽生えた人の心がさらに大きく柔らかに膨らみ始めていました。

ルーモは、はじめ6歳くらいの女の子に見えましたが、今は12~3歳くらいのお嬢さんに成長しています。風さんにはそれがわかっていました。