Yuumi Sounds and Stories

シンギング・リン®️セラピスト「藍ゆうみ」のブログ。日々の覚え書き、童話も時々書いています💝

お話妖精ルーモと風さんイラン⑩

2020-05-10 14:12:00 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月10日(水)宵月の夜 イラン

カザフスタンの西側に大きな湖があります。世界一大きい湖カスピ海です。どのくらい大きいかというと日本と同じくらいなのだそうです。びっくりですね!そして、湖なのになぜ海というののかは、大昔は海につながっていたからだそうです。

風さんはカスピ海の上を渡り、ルーモをイランという国に連れて行ってくれました。イランはペルシャともいいます。

今夜ルーモがお話を聞くおうちには、腰の曲がったおばあちゃんと6歳くらいの女の子がおりました。女の子にはお母さんもお父さんもいませんでした。家族はおばあちゃんひとりでした。おばあちゃんは、腰は曲がっていましたが大変働き者で畑を耕して野菜を作り、飼っているヤギのお乳を搾り町へ売りに行ってお金に変えていました。そして、女の子を一生懸命育て可愛がっていました。

夜もおばあちゃんの楽しみは女の子にいろんなお話をすることでした。たくさん生きてきたのでたくさんのお話を知っていました。女の子のお気に入りのお話は、妖精が出てくるお話です。妖精と聞いてルーモも嬉しくなりました。だって、同じ妖精ですからね。そこで、ルーモはおばあちゃんが語るお話の中に入って行くことにしました。ルーモにはそんな事もできました。

~さて、そろそろお話をするよ。今日はお前の大好きな妖精パリーのお話にしようね。パリーに新しいお友達ができる話だよ。

昔、昔。イラン一高いダマーヴァンドの山には、白い翼を持った妖精がいた。名前はパリー。人のたどり着けない険しい山の中の、草花が咲き乱れる「ペリの園」に住んでいた。麝香(じゃこう)、紫檀、白檀、シトロンなどの香りを食べて暮らしているという、それは良い香りの美しい妖精だよ。

ある時、ダマーヴァンド山につむじ風が吹いた。その風に乗って東の国からルーモという妖精がやってきたんだ。この妖精は、お前くらいの小さな女の子でね。物語の中に自由に出入りできる力を持っている。それでおばあちゃんのこのお話にも入ってきたんだよ。(おばあちゃんは無意識にルーモをお話に登場させました)

パリーはいつも一人だったから可愛い妹ができたみたいでとても嬉しかった。パリーは白い鳥に姿を変えることができたから、ルーモを背中に乗せてイラン中の空を飛び回って案内したよ。

まずは、大都市テヘラン。空から見ると建物から漏れる明かりがキラキラととても綺麗だった。そこから美しいモスクの立ち並ぶタブリーズ。ブルーのタイルで敷き詰められたブルーモスクにルーモは一目ぼれしたよ。次には、サファビー朝の祖シェイフ・サフォーオッディーンや彼の子孫シャー・イスマイルの廟が残ってたくさんの人が訪れるアルダビル。ここで二人は温泉に入った。パリーは鳥の姿だったから、ルーモにも魔法をかけて可愛い白鳩にして二人で水浴びをしたんだ。そりゃ~、賑やかにとても楽しかった。

お次はタフテ・スレイマン遺跡とゼンダーネ・スレイマン遺跡さ。そこは古い遺跡が残り、火山の吹き出る穴を使った火の神様の祭壇もあるところさ。

最後にパリーは、ルーモをケルマンジャーに連れて行った。今から2500年も昔に栄えた都市の跡だよ。「ターク・イ・ブスタン洞窟」や、岸壁に残る美しいレリーフ「ダレイオス1世の記念碑ビストゥーン」を見せた。

ルーモはパリーの案内のお蔭で世界には歴史があるということを知ったのさ。世界は、今だけじゃない。たくさんの時間が積み重なってできたものだってことを学んだんだ。そして、すっかりこのイランが大好きになった。妖精パリーのことも大好きになった。パリーとルーモはダマーヴァンド山に帰り、また会うことを誓った。ルーモはもっとイランにいたかったし、パリーとも別れたくなかったけれど、まだ行かねばならない世界があったからね。さあ、お話を終わりにしよう。~

女の子はすでに眠っていました。おばあちゃんのお話はいつでも少しだけ6歳の女の子には難しいのです。だからすぐに眠くなってしまうのです。でも話をしたおばあちゃんも不思議といい気分でした。

ルーモはお話の中でパリーと友達になれて、とっても幸せでした。パリーにまた会いたいと思いましたが、そのためには、いつか再びここイランに訪れて、おばあちゃんが妖精パリーのお話をしてくれる時だけです。それはいつのことかわからないし、そんな素晴らしい瞬間に出会えるかは誰にもわかりません。この美しい出会いに心から「ありがとう」と思ったら、胸がキュンとしました。それは「せつなさ」でした。ルーモの心に「せつなさ」という感情が芽生えた旅でした。

きっとまたイランのこのおうちに来ようと思いました。お話をしてくれたおばあちゃんのほっぺに優しくさよならのキスをして、風さんのいるお空に戻りました。