Yuumi Sounds and Stories

シンギング・リン®️セラピスト「藍ゆうみ」のブログ。日々の覚え書き、童話も時々書いています💝

お話妖精ルーモと風さんカザフスタン⑪

2020-05-09 14:13:56 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月11日(木)九夜月の夜 カザフスタン

妖精パリーと素敵な夜を過ごしたルーモは、次の夜の為に風さんとつむじ風に乗りました。
つむじ風は急スピードで、モンゴルの隣にあるカザフスタンという国に行きました。
遊牧民の末裔であるカザフ人。田舎では今でも牛や馬を放し飼いにしている家族も多いので、子供たちもたいていは馬を操れます。田舎では大家族が多く、子供でも自分より幼い弟妹や親戚の子供たちの面倒をよく見ます。

ルーモは子だくさんのおうちに来ました。お父さんお母さんは馬や牛の世話で夜も忙しくしています。子供たちの世話は、一番上のお姉さんの仕事でした。夜、なかなか寝ない小さな妹や弟を集めて、お姉さんがお話を始めます。お姉さんのお話はいつも同じでした。お姉さんはこのお話が好きでした。



~ほらほら、お話始めるわよ~~~!!!

カザフスタンの西にバルハシという湖がありま~す。

と話し始めると「またそのおはなし~?違うのがいい」
とすぐ下の妹が不満げに言いましたが、お姉さんは気にせずすまして話を続けます。

~バルハシ湖は西半分が淡水で、東半分が塩水という不思議な湖です。昔々、この地方は大金持ちの魔法使いバルハシが支配していました。バルハシにはイリという美しい娘がいて、それはそれは可愛がっておりました。そろそろイリも結婚相手を見つける歳になりました。あるときバルハシは、村中におふれを出しました。村の祭りの馬の競争で一番になった者に娘のイリをやると言ったのです。しかしイリには好きな人がいました。カラタルという貧しいけれど心根のまっすぐな青年でした。そして、カラタルもイリが好きでした。馬の競争でカラタルはがんばって一番になり、二人はこれで結婚ができると大喜びしました。

ところがバルハシは、カラタルには娘をやりたくなかったのです。カラタルが貧しかったからです。そして、この約束はなかったことにしてしまいました。とてもがっかりしたカラタルとイリは、バルハシが寝ているうちに二人で遠いところに逃げることにしました。次の朝、目が覚めて怒り狂ったバルハシは、魔人に姿を変えて2人を追いかけました。そして、二人を見つけ出し、とうとうイリとカラタルを川に変えてしまいました。

怒りがおさまり我に返ったバルハシは、娘を愛するあまり、自分がしてしまったことをひどく悔やみました。そして悲しみのあまり、川になったイリとカラタルの間に飛び込んで湖になりました。こうしてバルハシ湖ができたのです。やがて、大河のイリ川は西のバルハシ湖に流れこみ、カラタル川は東のバルハシ湖に流れこみました。イリとカラタルはバルハシ湖の中でやっと一緒になれたのでした。~

お姉さんはいっきに話し終えて、ほ~っとため息をつきました。妹や弟たちはみなうとうとと眠りについていました。お姉さんは窓から夜の空を眺めてもう一度大きくため息をつきました。お姉さんの吐くため息が、ルーモには少しピンク色で甘い香りがしました。

それは、「恋」のため息であることをルーモは感じ取りました。お姉さんもイリのように「好きな人」がいるのだな、と。

それが、恋というものだとわかった時、ルーモの胸はポッと柔らかなピンク色の光が灯りました。

ルーモはこれまでのお話で「感謝や寂しさ、勇気やせつなさ、嬉しさや恋の感情」を学び、むくむくと「心」が芽生えています。

風さんの心もまた、ルーモと共鳴し成長しています。
いつも少し高い空からルーモを見守る風さんは、勇敢に心を求め続けるルーモを愛しく思い始めていました。