Yuumi Sounds and Stories

シンギング・リン®️セラピスト「藍ゆうみ」のブログ。日々の覚え書き、童話も時々書いています💝

お話妖精ルーモと風さんトルコ⑫

2020-05-08 14:14:40 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月12日(金)十日月の夜 トルコ

ルーモはトルコという国の町のあちこちで青いガラスの目玉をたくさんみかけました。これ、ナザール・ボンジュウという魔除けです。ナザール・ボンジュウは、人の幸せや成功を羨んだり妬んだりする邪悪な目から人を守ってくれます。例えば、新築の家や新車など、また産まれたばかりの赤ちゃんの服やベッドにも付けたりします。

赤ちゃん用の、とっても小さなナザール・ボンジュウ。トルコでは、お祝い事にはゴールドを贈る習慣がありますので、小さなゴールドとナザール・ボンジュウのセット。これを、可愛い赤ちゃんの服の肩のあたりか、枕やシーツにつけるのです。

ルーモが訪れたこのおうちには生まれたばかりの赤ちゃんがいました。ナザール・ボンジュウをどこにつけようかと新米のパパとママが楽しげに話し合っています。新米パパはもう60歳でした。普通なら孫がいるくらいの歳です。がんばって働いているうちに結婚せずに歳を取ってしまいました。でも素敵な若い奥さんと出会い、とても気が合って、歳など気にもせず、とても嬉しくて、とても愛し合っていましたから、生まれた子供も可愛くて仕方がないようです。

このおうちにはまだ赤ちゃんへのお話はないようね、とルーモは微笑んで、出産祝いの代わりに新米のパパとママに素敵な魔法をかけました。

「ルルリラルーモ、ルルララルーモ、赤ちゃんが6か月くらいになって、夜もよく眠るようになったら、毎晩パパとママが代わる代わる楽しいお話をしますように……」

ルーモがこの魔法をかけたパパとママとその子供は一生幸せに楽しく暮らすのでした。とても、幸運な一家です。

ルーモの魔法のお蔭か、おじいさん新米パパの心には若さの光が灯りました。
身体はおじいさんでも、赤ちゃんという新しい命が、おじいさんパパの心にどんな若者にも負けないくらいの若さをもたらしたのです。

ルーモには、人の心が見えます。
若くても歳を取っている心の人もいるし、どんなにお年寄りでもキラキラと輝くばかりの若さを持った心の人がいるのを知っています。男でも、心は女の人みたいに繊細で優しい人もいるし、女でも怖くて怪物みたいな人もいます。だから、ルーモは外見は、お祭りの出店で売っているお面のようなものだといつも思います。

でも赤ちゃんや子供だけは、心も外見も同じです。
大きくなるにつれて、人はいろんなお面をかぶってしまうのです。赤ちゃんや子供と一緒にいる大人はちょっとだけお面を外すこともルーモはうすうす気づいています。

光輝く赤ちゃんと愛し合う二人のもとを後にして、ゆらゆら空に上ると、風さんが雲の上で寝そべりながら月を見ていました。

風さんがぽつりと言いました。
「愛し合うって美しいね」
「あの家族のこと?」
「あぁ。」
十日月の月は、キラキラ優しく輝いていました。