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自主避難歴 負い目に   東日本大震災6年;福島に戻った母親=杉直樹(前橋支局)

2017-03-19 18:09:17 | フクシマの怒り
毎日新聞2017年3月10日 東京朝刊http://mainichi.jp/articles/20170310/ddm/005/070/008000c


自主避難歴 負い目に

 自主避難していたことが周囲にばれて、子どもがいじめに遭うのが怖い--。東京電力福島第1原発事故で避難指示区域でない地区から自主避難し、約2年前に福島に戻った女性の言葉が耳から離れない。

 あすで事故から6年。福島県による自主避難者への住宅無償支援が3月末で打ち切られる中、企画記事「安住を探して 原発事故からの自主避難」(7日から3回連載)の取材で、福島に戻った母親たちに話を聞いた。そこで分かったのは冒頭の女性のように、福島にとどまった人との間を隔てる「見えない壁」に悩みながら、息を潜めて生活している人が少なくないということだ。帰還という「見た目の復興」だけでなく、人とのつながりを促す「目に見えない復興」が求められていると現地で強く感じた。

 「自主避難者が帰還後に感じた本音を聞きたい」。地元に戻った人を支援する市民団体を通して取材を申し込むと、返ってきた答えは「ノー」の連続だった。主な理由は「帰還者の保護」。ある団体は「匿名でも家族構成や生活状況から本人が特定される可能性がある」とした。戻った人に話を直接聞こうと、2月上旬、帰還者向けの講演会やイベントに足を運んだが、記者と名乗った瞬間、拒まれることもあった。
残った人との「見えない壁」

 当初は、なぜ、これほど神経をとがらせているのか分からず戸惑った。匿名を条件に取材に応じてくれた人の話を聞いていくうちに、その理由が少しずつ分かってきた。

 2年前に避難先の山形市から戻った4児の母親は「自分から避難歴を明かす勇気はない」と答えた。「避難歴を明かせば『神経質な変わり者』と思われて、嫌がらせを受けるかもしれない」というのが理由だ。

 原発事故直後、子どもの健康被害を心配し、自主避難した。今も不安は消えないが、夫に「同僚の家族はみな戻ってきている。そんなことを言っている人はいない」と説得され、やむなく従った。

 子どもが通う小学校の母親との間で、放射性物質や原発事故の影響が話題に上ることはない。自分から口にすることもない。「なぜって、子どもが学校で変な目で見られたら怖いから……」

 約1年半前に静岡県から福島県伊達市に戻った女性も安全面への不安は消えないが、近所や知り合いの母親に打ち明けられないでいる。「当初は福島にとどまる選択をした人も放射性物質を気にしていた。みんな我慢したのに、私は逃げたという負い目がある」と明かす。

 一方、福島にとどまった人を取材すると、「過剰反応じゃないか」「風評被害を助長している」などとして、不安を口にする自主避難者を非難する意見が少なくなかった。作った野菜の安全性を独自検査で確かめて販売している二本松市の農家の男性(61)は「事故を風化させてはいけないが、危険性を殊更に強調するのとも違う」とこぼし、自主避難者の言動は理解できないという。

 原発事故により「分断」された住民の意見で、一方だけが正しいということはないと思う。ただ、これは福島に限った話ではない。原発に事故のリスクがある以上、全国どこでも起こりうる話なのだ。
本音が話せる居場所作りを

 帰還者の支援団体によると、福島に戻った後、再び県外へ転出するケースが相次いでいる。ある支援団体の担当者は「健康面の不安を抱えていても、とどまった人に遠慮して誰にも悩みを打ち明けられない人が多い」と分析する。

 この溝を埋めようと、福島市のNPO法人「ビーンズふくしま」が、15年3月から運営しているのが復興交流施設「みんなの家」。地元住民との交流イベントに参加しながら、避難先から戻った人たちが悩みを話し合う。開所時から通っている帰還者の女性は当初、周囲になじめなかったが、「今は当時を忘れてしまったくらい。当たり前にここが居場所と思える」と話す。

 この取り組みは心身のケアや孤立防止、生きがいづくりを目的に、復興庁が昨年度から行う「心の復興」事業に採択された。ただ、県内の施設で実施されている同様の活動は数例しかない。周知不足の面もあり、参加者が数人にとどまる時も珍しくない。

 現在も約1万世帯いるといわれる自主避難者。昨年6月に福島県が公表した調査によると、県外の自主避難者で今年4月以降の帰還を「しないと決めた」「希望しない」が6割以上を占めた。住宅の無償提供を打ち切る背景には復興へ向けて帰還を促す狙いがあるが、同時に帰還者の生きづらさの解消に向けた取り組みにも力を入れ、拡充していく必要がある。


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