
父はワタシのの手を握って離さない



指先を使って自らの気持ちを持ち上げるためだろうか
眠らないように意識を保つためだろうか
三三七拍子のリズムをとるのだ
握った私の手も一緒にリズムをとるほどに
力強かった
カープの話をするときは
目がキラキラして
指先をかちゃかちゃ動かせたりもする


兄はスペインから
香港経由で
向かってくれていて
不安な中
メールをみると
少しだけほっとした

買い物へ出たり
タバコを吸いに行って
病室の出入りが激しい女性には
うまく言って帰ってもらった
父の目が
あの女性を探しているようなので
買い物に行ったのだと伝えた
自分の足がついているのかと訊いてくるので
足の感覚がないのだろうかと
心配をするワタシに
父は爪切りで爪を切って欲しいという
爪切りはないと言えば
買ってきてくれ、という
だから足の指の爪は
短くてとってもきれいだと
そう言い
父は安心したのか
少し眠りはじめた
父の穏やかな顔を見ていて
ワタシは
母のその時と重なることがあった
母が天国に行ってしまう
2日ほど前の病室で
母は髪を整えたいから
明日でも櫛を買って持ってきて欲しいと
そう言ったのに
翌日櫛を買い忘れて
病室へ行ってしまい
明日は必ず持ってくると
約束したのに
渡せぬまま
母は天国へ行ってしまったのだ
その後悔が
今度はワタシの心を不安がらせ
「お父さんを、まだ行かせんといて、お母さん」
そう母に心の声で叫んだ
母はいつもワタシの味方なのだから
ワタシの声が届くはず。。。
少し眠っただけで
また父は直ぐ目を覚ました
父は痛みに恐怖を
ワタシも耐え難く悲しい
父の姿
看護師さんが
痰をチューブで吸引するといい
眠っている父の口の中にチューブを入れ
その時、悲鳴をあげて
痛がり
痙攣を起こしたのだ
つづく
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