アジア映画巡礼

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この秋は『JAWAN/ジャワーン』祭り①盛りだくさん過ぎるぞ💀この映画

2024-10-16 | インド映画

あっという間に10月も半ば。インドは今、お祭りシーズン真っ盛りで、コルカタ旅行中の友人のブログによってドゥルガー・プージャーの様子を知り、珍しい飾り付けにびっくりしたりしました。映画にもよく登場するこのお祭り、ヒンディー語映画『女神は二度微笑む』(2012)ではクライマックスシーンがこのお祭りを背景に描かれ、ヒロインとドゥルガー女神とが二重写しになったりしましたが、あの賑わいは今も変わらないのですね。ヒンドゥー教の秋のお祭りシーズン、今年は9月7日のガネーシャ・チャトゥルティ、9月15日のオーナム祭(ケーララの収穫祭)のあとは、主なものだけでも、10月9日ドゥルガー・プージャー初日、10月11日マハー・シヴァ・ラートリー、10月12日ダシャヘラー、10月31日ディワーリーと、もう目白押し状態です。その合間に、10月20日のカルワーチョウト(夫の健勝を妻が祈る日)や11月3日のバーイー・ドゥージ(姉妹が兄弟を招き、祝福を受ける日)などもあり、仕事や勉強をしている暇などない(笑)のがインドの秋です。日本でも、在日インド人の皆さんがいろいろ祝う企画があるほか、11月4日の「ディワリ・イン・ヨコハマ2024」のように、いろんな催しが各地で開かれる予定です。というわけで、私も勝手に「この秋は『JAWAN/ジャワーン』祭り」としてしまうことにしました(笑)。

シャー・ルク・カーン主演の2023年インド映画興収トップ作品である『JAWAN/ジャワーン』、お休みをいただいている間に見直したのですが、いやもう盛りだくさん過ぎて、満腹になりました。よくぞコロナ禍明け直後にこれだけの内容を準備できたものよ、と感心してしまいますが、何度見ても面白いので、満腹リピーターが増えそうです。まずは、映画の基本データをどうぞ。

『JAWAN/ジャワーン』 公式サイト 
 2023年/インド/ヒンディー語/84分/原題:Call Me Dancer/字幕翻訳:藤井美佳
 監督:アトリー
 出演:シャー・ルク・カーン、ナヤンターラ、ディーピカー・パードゥコーン、ヴィジャイ・セードゥパティ
 配給:ツイン
11月29日(金)より全国ロードショー

映画は、インドの国境地帯での出来事を描くプロローグのあと、舞台をムンバイに移します。朝のムンバイ・メトロでハイジャック事件が発生、坊主頭の男(シャー・ルク・カーン)が数人の女性兵士を従えて乗客を人質にし、政府に対して多額の要求を突きつけたのです。交渉人となったのは、ムンバイ警察対テロ専門部隊を率いる女性警官ナルマダ(ナヤンターラ)でしたが、そのメトロには大金持ちの武器商人カリ(ヴィジャイ・セードゥパティ)の娘も乗っていたため、カリが身代金として要求金額を支払って乗客を解放させます。しかし、同じく車両に乗っていたはずの犯人たちは見事に逃げおおせてしまい、ナルマダは作戦の失敗を認めざるを得ませんでした。そして、再び同じ犯人たちが保健大臣を襲って重傷を負わせ、その身柄を地方のオンボロ公立病院で拘束する、という事件を起こします。この時もナルマダが部下を率いて出動したのですが、犯人たちは要求を実現した後警官隊と闘い、またもや姿をくらましてしまいます。彼らの正体は? そして彼らの目的は? ナルマダはそれを突き止めようとしますが、私生活でも、おしゃまな娘スージーが、シングルマザーの母を結婚させようと企んで刑務所長のアーザード(シャー・ルク・カーン)と勝手に見合いをするなど、頭が痛くなるような行動を起こしてしまいます...。

スターの顔ぶれも最高、意表を突くストーリーも最高、ソング&ダンスシーンも最高、カー・アクション・シーンも最高...と、2023年興収No.1になった理由がよーくわかる傑作です。アトリー監督がタミル語映画の「大将」ことヴィジャイと組んで生み出したヒット作、『火花~Theri~ (テリ~スパーク~)』(2016)、『マジック』(2017)、『ビギル 勝利のホイッスル』(2019)に続く、ボリウッドの「キング」シャー・ルク・カーンと組んだスーパーヒット作、とでも言いましょうか。結構随所にギャグも入っていて笑えますが、タミル語版ではコメディアンのヨーギバーブも出演しているそうで、そっちのヴァージョンも見てみたい私です。2023年年明けに『PATHAAN/パターン』(2023)で復活を遂げ、本作で完全にキングの座に蘇ったシャー・ルク・カーンが従来にも増して魅力的で、「一粒で二度おいしい」思いを味わわせてくれます。ここで予告編をどうぞ、ですが、アーザードの亡き母親役でディーピカー・パードゥコーンも出て来ますので、豪華の上に「超」がつくキャスティングですね。

『JAWAN/ジャワーン』本予告(公開表記)

 

こんな見応え箇所の数々のほか、個人的な趣味の問題でとっても嬉しかったのは、本編が始まってすぐ、メトロが舞台となって大きな事件が起きること。このブログをいつも見て下さっている皆様はご存じの通り、私は高架鉄道大好きの「高架鉄ちゃん」なんですが、アジア諸国は鉄道以外の大量輸送システムが高架になっていることが多く、インドのメトロもご多分に漏れず高架部分が結構あります。これは、都市ができてからの建設になるので、地下鉄にすると工事が大変であるという理由が大きいのですが、土地買収ができない区間は地下を掘るしかなく、デリーでもチェンナイでも、都市中心部は地下鉄になっています。ムンバイもその例にもれず、現在とんでもない苦労をして工事中のシティを走るメトロは、ほぼ全部地下鉄です。でも『JAWAN/ジャワーン』は、最初にメトロが走った路線、ブルーラインが舞台となっており、この路線は全線高架なんです――が、劇中では地下にももぐります、ってなんでやねん! そのわけは、ロケをした場所が、撮影当時建設中で、完成間近だったプネー市のメトロなんですね。プネーはムンバイから車で3時間ぐらいの所にある地方都市で、学園都市&ハイテクシティとして近年大きく成長をつづけています。『マダム・イン・ニューヨーク』(2014)の舞台となった街、と言えばおわかりでしょうか。そのプネーのメトロは2022年3月に開業したのですが、開業前の駅等をロケに使わせてもらって、『JAWAN/ジャワーン』の地下鉄シーンは撮られています。

 

一方、舞台となっているムンバイのブルーラインは、郊外のアンデーリー地区を西から東に走っていて、西のヴァルソヴァから鉄道のアンデーリー駅の上を通り、私の定宿コーヒヌール・ホテルがあるチャカーラー駅を通って、東のガートコーパルまでの路線です。上写真左がチャカーラー駅で、右はそのホームに電車が入ってくるところです。『JAWAN/ジャワーン』の中でもこの「チャカーラー」という駅名が出てきますので、よく耳をすましていて下さいね。メトロの車両は、一番前と後ろに女性専用車両があります。混んでいる時はベルトを渡して一部が男性用にも使われるので、下のような感じになります。右写真だと、女性席ガラガラ、男性席ギューギューという感じですね。いずれも2017,8年頃の写真ですが、2014年の開業以来10年経った今でも、メトロはピカピカでとても快適です。

 

では、皆さんも『JAWAN/ジャワーン』でぜひメトロの旅を。こちらのメトロの旅は、と~ってもスリリングですよ。こんな人が出てきますからねー。ツルツル・カーン? そんなこと言ってると、「口が悪いですぅ~」と銃で撃たれますのでご用心。

 


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