アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

アジア映画統計fromカンヌ

2016-06-21 | アジア映画全般

ご紹介するのが遅くなってしまったのですが、今年も5月にカンヌ国際映画祭に行った方から、貴重なおみやげをいただきました。フィルム・マーケットでもらってきて下さる「MARCHE DU FILM/FOCUS 2016」です。文字通りの小冊子ながら、1週間ぐらいネット検索を続けても確定できないような、アジア映画の統計がずらりと載っている貴重な資料です。


その統計を、今年は昨年の同じ資料と照らし合わせながら、2014年/2015年という2年対照表に作ってみました。ワードの表作成が下手なため、ちょっとご覧になりにくいですがお許しを。


これを見て、何がわかるでしょう?

1.統計が発表されていない国が多くある

ヨーロッパ、南北アメリカの国々、そしてオーストラリアとニュージーランドは、ほぼすべての統計が毎年きちんと更新されています。ところが、アジア・アフリカ諸国は抜けが多いのです。中でも、世界一の製作本数を誇る映画大国だというのに、インドは2013年度の製作本数発表後、長い間統計を更新していませんでした。検定通過本数という、いとも簡単に統計が出せる資料がありながら、それを政府の中央映画検定局(Central Board of Film Certification=CBFC)が怠っていたのですが、最近になって、やっとCBFCのサイトに年間レポートがアップされました。2014-15年度のほか、古いレポートもアップされて嬉しい限りです。関心のある方は、こちらをご覧下さい。

言うまでもなく統計は、産業が発展していく上で指針となる大切なもの。他のアジア諸国も、がんばって更新してほしいものです。なお、マレーシア映画は、研究者の方から教えていただいたのですが、マレーシア映画開発公社(FINAS)が最近はがんばっていて、そのHPにこんな様々な統計がアップされるようになりました。そんなことから、上のカンヌの資料もマレーシアに関しては抜けがないようです。今週の土・日にはマレーシア映画『世界を救った男たち』の上映もありますので、ぜひマレーシア映画の力を確認してみて下さいね。

<マレーシア文化情報が満載のフリーペーパー「WAU」No.8>

2.インド映画の自国映画占有率が9割を割り込む

自国映画占有率とは、総興行収入に占める自国映画の興行収入の割合を言いますが、インドはこれまで、コンスタントに90%を超えていました。世界中の国がハリウッド映画、つまり洋画の前に膝を屈するというか、自国映画占有率が50%を超えていれば御の字、という状態の中で、アメリカ本国と並んで常に90%以上を誇っていたのがインドでした。一時期、韓国映画もクォーター制(自国映画を一定程度以上上映することを映画館に義務づける制度)を取っていたりしたので80%を超えたこともあるのですが、現在は日本と同じ程度の50%前後になっています。アメリカの観客と対抗して、自国映画を何よりも愛していたのがインドの観客だったのです。

Furious 7 poster.jpgJurassic World poster.jpgAvengers Age of Ultron.jpg

ところが、今回の統計ではそれが何と85%になってしまいました。以前ご紹介した、「キネマ旬報」2016年3月下旬号の「2015年インド映画ヒットランキング20」のように、ハリウッド映画が3本(上のポスターの作品)も興収ベスト10入りし、いずれも10億ルピー(約17億円)以上の興行収入を上げたのです。アメリカ映画の輸入本数はそれほど増えてはいないのですが、ハリウッド映画を好む観客が増えてきた、ということなのでしょう。

2014-15年のインド映画の製作本数は、デジタル1,827本+フィルム18本で、計1,845本。前年の1966本(デジタル1,778本+フィルム188本)からは100本以上減少しています。本数が多いことは必ずしもよいことではないのですが、インド映画の勢いに少し陰りが見えてきたことは事実でしょう。この本数減少を、良質の作品を揃えていくステップに転じることができるかどうか、インド映画界の今後の力量が問われることになりそうです。

最後にオマケを(オマケの好きなブログですね~)。世界マーケットを視野に入れて作られたアーシュトーシュ・ゴーワーリーカル監督(『ラガーン』『ジョーダーとアクバル』などの監督)の『モヘンジョ・ダロ』、8月12日の公開が決まり、予告編がリリースされました。「時代考証がぁぁぁ!」と言う声が早くも聞こえてきていますが、さて、インド映画7月決戦に続く、8月の目玉作品となるか、注目です。予告編をどうぞ。

Mohenjo Daro | Official Trailer | Hrithik Roshan & Pooja Hegde | In Cinemas Aug 12


 


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2 コメント

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フィリピン (よしだ まさし)
2016-06-22 13:05:17
ウィキペディアのリストを見ると、2015年に公開されたフィリピン映画は91本のようです。これは、映画祭などで上映された作品も含む本数なのですが、カンヌのこの資料も同様の本数なのでしょうか?

この資料を見てちょっと驚いたのが、それでもフィリピンの自国映画占有率が25.7%もあるってこと。もっと低いのかと思ってました。年末のメトロマニラフィルムフェスティバルの期間は別にして、ふだんは海外の映画ばっかり上映している印象が強いフィリピンなので、せいぜいが10%ちょっとぐらいなのかと思ってました。印象はあてになりませんね。
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よしだ まさし様 (cinetama)
2016-06-22 18:10:58
早速のコメント、ありがとうございました。

カンヌの資料では、製作本数は過去5年間の折れ線グラフになって呈示されているのですが、フィリピンとタイは2011年以降のデータがないため、今年はこのグラフから姿を消しています。
そのため、過去の号をひっくり返して2011年の本数を書いたのですが、そこには「film released」という断り書きがありました。
アメリカに倣って、フィリピンは公開本数で言うのかも知れませんね。

それ以上の情報はこの小冊子にはないため、ご質問にはちょっとお答えできません。
悪しからずご了承下さい。
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