きたきつねさんのブログ「きたきつねの穴」を、いつも楽しみに読んでいます。何と言っても、香港の街ネタが出色で面白いのです。5月9日の記事「香港で差人に声をかけられた話」では、香港のお巡りさん大好きというきたきつねさんの撮った数人の警官が写っているスナップに、「觀塘にて。大漁である。」とコメントがつけられていて、大笑いしてしまいました。
「差人(ちゃーいやん)」というのは、ご存じの方も多いかと思いますが、お巡りさんのことです。こっちがお巡りさんに呼びかける時は「阿Sir(あサー)」(警官旦那、てな感じですかねー)を使います。あと、同じ「差」の字を使い、「阿差(あちゃーい)」というのも警官を指すらしいんですが、同じ字で「あちゃ」と発音すると、インド人(印度人=やんどうやん)やパキスタン人(巴基斯坦人=ぱけいしたーんやん)の俗称になります。「亞差(あちゃ)」とも書きます。昔、これを初めて聞いた時には、「インド人が口癖のように言う”アッチャー(良い、という意味で、相づちの言葉によく使われる)”からついたのかしらん?」と思ったりしたものでした。中文大学の先生にも尋ねたのですが、由来はわからずじまいでした。
話が横道にそれてしまいましたが、きたきつねさんの最近のネタを読んでいて、1993年に滞在していた時に九龍灣(ガウロンワン)や觀塘(クントン)あたりの映画館に何度か行った時のことを思い出しました。当時、九龍灣駅で降りて昔風のマーケットというか商店街のような所を抜けると、団地の中に「好運」と「淘大」という2つの映画館があったのです。また、觀塘では、駅を出てすぐの所に「寶聲」、確かちょっと坂をあがった所(うろ覚え...)に「銀都」という映画館がありました。「銀都」は、きたきつねさんの記事で健在を確認した次第です。
1993年の滞在時は小遣い帳をつけていたので、それを引っ張り出してみました。チケットの半券も貼ってありました。何でもすぐとっておく私です。
1993.2.6(土) 早場 寶聲 『天若有情』(ビデオ邦題『アンディ・ラウの逃避行』1990)
1993.2.15(月) 四點場 銀都 『審死官』(邦題『チャウ・シンチーの熱血弁護士』1992)
1993.2.18(木) 四點場 好運 『表錯七日情』(1983)
いやー、よく遊んでいますねー。この頃は、「早場」と呼ばれていたモーニング・ショーと、「四點場」と呼ばれていた午後の隙間上映に旧作がかかっていたので、こういう名画座的上映を追っかけて見ていたようです。平日が午後4時の回ばかりなのは、午前中は中文大学の広東語クラスに通っていたからですが、そう言えば授業中の会話で「昨日は何をしましたか?」とか聞かれて、「觀塘に行きました」と答えたら、「あんな工場街に何しに行ったの?」と先生からあきれられたことがありました。
映画館の位置を確認しようとして当時の地図「香港街道地方指南1993」をひっぱり出したら、「好運」と「淘大」があったのが何と淘大花園でした。2003年のSARS禍の時、患者がたくさん出た団地です。当時そこに住んでいた友人は、「団地から駅への行き帰りに、消毒薬をしみ込ませたマットの上を歩かされるんだぜ」とぼやいていましたっけ。そうかー、この時点で私はもう淘大花園に足を踏み入れていたのか~。
実は、昨年も映画を見るために淘大花園に行ったのですが、それは灣仔(ワンチャイ)にあったアート系の映画館「影藝」がここに引っ越していたからでした。「影藝」を紹介したシティラインのサイトによると、「影藝」は1988年に灣仔の新鴻基中心ビル1階にオープン、2006年11月にクローズしたあと、2009年4月1日に淘大花園に場所を移して再びオープンした、とのこと。灣仔時代はインディーズ系の中国映画や、珍しい韓国映画などを上映していたほか、香港国際映画祭での上映もここであったりしたので、よく通いました。場所が不便なのと、冷房がきついのが難でしたが、お気に入りの映画館だったので、クローズを知った時にはとても残念に思ったものです。
昨年3月に香港に行った時、新聞の映画広告欄にこの「影藝」の名前を見つけ、嬉しくて早速行ってみました。
なかなか立派な映画館になっていましたが、この映画館、開場が遅い! この時は12時35分からの『歳月神偸』を見ようと思って行ったんですが、上の写真のような状況になったのは上映15分ほど前。影藝の復活が嬉しくて11時半頃に行った私は、淘大花園をウロウロしては戻ってきて閉まっているシャッターにがっくり、また淘大巡りをすることの繰り返し。こんなことなら、目の前にあった飲茶レストランにでも入ってればよかった!
結局、『歳月神偸』を見たあと4時5分からの『ラスト・ソルジャー』も見ることにして、その待ち時間に飲茶レストランに入ったのですが、ここは結構アタリでした。鴻星海鮮酒家というレストランで、上の写真にもかわいい點心がいろいろ載っていますが、私の食べたメレンゲうさぎもかわいくて美味でした。「影藝」にいらっしゃる時はぜひお試し下さい。
メレンゲうさちゃんのアップ。白兎仔からつい言承旭(ジェリー・イェン)を思い出したりして、心の中で「ゴメン!」と言いながら完食しました。
ジャッキー・チェンと王力宏(ワン・リーホン)の『ラスト・ソルジャー』はすごく面白かったものの、昔の「影藝」のラインアップからすると、ほかの映画館と同じ作品を上映しているなんてちょっぴり失望。淘大花園や周辺のマンションに住む人々が観客層ということから、仕方がないかも知れませんけどねー。
ところで、このリニューアル影藝は、昔の映画館「好運」か「淘大」があった所に作られたのかしら? 今度行ったら確かめてみようと思います。
銀都は営業はもうやってないんですかー。あの頃は九龍、香港地区のほか、上水や大埔(途中の橋が風情があって好きだった)、元朗あたりまで映画を見に行っていたのですが、それらの映画館はもうみんなつぶれちゃったんでしょうね~。当時、もっと写真を撮っておけばよかった、と後悔しています。
銀都戯院は、建物は残っているのですが映画館としては閉館してしまい、結局映画を見ることができずに本当に残念でした。黄秋生主演の「老港正傳」にも出てきていましたし。
淘大花園のあたりにも映画館があったのですね。牛頭角下邨に行ったときにはすでに団地と化していて想像もつきませんでした。ご時世とはいえ昔ながらの大きな映画館がなくなるのは淋しい限りです。せめて「早場」と「四點場」の風習だけでも復活してほしいのですが。
「影藝」、是非行ってみたいと思います。