アジア映画巡礼

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ヴィジャイのお誕生日に主演作2本立て

2024-06-22 | インド映画

本日、6月22日(土)は、タミル語映画界のトップスター、ヴィジャイの50回目のお誕生日でした。だから、というわけではないのですが、<IMW2024パート1>で、ヴィジャイ主演作の2本を見て来ました。ちょっと書きたいことがあって、そのために以前見たけど細部を忘れている作品2本を見に行ったのです。その2本とは、『タライヴァー』(2013)と『マジック』(2017)。上映館のキネカ大森には、こんな「お誕生日おめでとう」ボードらしきディスプレイが飾ってありました。

まずは、2作品のデータを書いておきます。

 『タライヴァー』
 監督:A・L・ヴィジャイ
 出演:ヴィジャイ、アマラ・ポール、サティヤラージ、ラーギニ・ナンドワーニ
 2013年/タミル語/175分/原題:Thalaivaa

 © Sri Mishri Productions

『マジック』
 2017年/タミル語/169分/原題:Mersal 
 監督:アトリ
 出演:ヴィジャイ、サマンタ、カージャル・アグルワール、ニティヤ・メーノーン、S・J・スーリヤー、サティヤラージ

©Sony Music India ©Sri Thenandal Films

『タライヴァー』の方は、公開時にシンガポールで見たことは憶えていたのですが、確かオーストラリアでドリンクビジネスをやっていて、ダンスするシーンがあったっけ、ぐらいの記憶しかなく、過去のブログ記事をチェックする時間もないまま、11年ぶりにスクリーンで見たのですが....。後半の後味の悪さはちょっとハンパではなく、ヴィジャイにこんな役をやらせるなんて、しかも彼の代名詞になっている「タライヴァー」というタイトルで作るなんて...と、頭がクラクラしながら次の作品を見たのですが、帰宅後ブログをチェックしたら、シンガポールで見た時も同じように感じていました。その記事を再録しておきます。

            

シンガポールの南端とも言える駅ハーバーポイントから、今度は北端の駅ウッドランドへ。ウッドランドは昔からタミル語映画を上映する映画館があり、7、8年前はよく通いました。しょぼい映画館でしたが、それが今はなくなって、コーズウェイ・ポイントというショッピングモールの上階にキャセイ系のシネコンができました。そこで見たヴィジャイ主演の『ボス(Thalaivaa)』は、英語字幕付きでした。やった! ただ、あまり上手ではない英語字幕でした...。
「Thalaivaa」は、映画の中では「Leader」と訳されていました。映画の冒頭、リンカーン、マルクス、レーニン、マハートマー・ガーンディー、チャーチル、毛沢東、チェ・ゲバラ、ネルソン・マンディラ、カストロ、マルコムX、ホー・チミン、さらにはリー・クワンユー(シンガポールの元首相)まで、似顔絵と生没年など簡単な紹介が出てきます。そういう政治家の映画なのか?と思っていたら全然違いました。やはり「ボス」、あるいは「ドン」と訳すのが適切な男が主人公で、ストーリーはこんな感じです。
主人公ヴィシュワ(ヴィジャイ)の父アンナーことラーマドゥライ(サティヤラージ)は、あるいきさつからムンバイのドンとなった人物。それまでドンだった男に妻を殺され、復讐のために彼を殺してドンとなったアンナーでしたが、その男の遺児ビーマ(アビマニュ・シン)に命を狙われていました。一方ヴィシュワは、ヤクザな世界から遠ざけたいと思ったアンナーが知人(ナーサル)に託してチェンナイで育ててもらい、今はオーストラリアのシドニーで知人の息子ローグ(サンタナム)と共に働いています。ところが、ヴィシュワがシドニーでレストランを開こうとするタミル人の父娘に会い、その娘ミーラ(アマラ・ポール)と恋仲になってしまったことから、物語は急展開を迎えます。父娘をムンバイに連れて行き、父アンナーに紹介しようとしたヴィシュワでしたが、彼の目の前で父を乗せた車が爆発し、さらにヴィシュワはとんでもない裏切りに遭うことに...。
導入部はちょっと悲惨な状況が出現するのですが、その後はシドニーで水ビジネスをしながらダンス・パフォーマンスに力を入れるヴィシュワが明るいタッチで描かれます。ところが後半、様相は一変、父の跡を継いで「ボス」となったヴィシュワを巡る、凄惨な世界が描かれていきます。いやー、ちょっとやりすぎじゃないの、という血まみれ世界です。ダンスシーンが楽しくて見応えがあるだけに、1粒で2度おいしいというか、違う味を食べさせられて咀嚼できないというか。冒頭に、「この映画の中では動物を傷つけていません」とお決まりの断り書きが出るのですが、「動物」って人間のことだったの、と言いたくなる映画です。
あと、面白かったのは、飲酒シーンになると「飲酒はいけません」というような断り書きが画面に出ること。以前買ったラジニカーント主演の『インディアナ・アドベンチャー/ブラッド・ストーンの謎』 (1988)のインド版DVDに、飲酒と喫煙の箇所になると必ずこういう警告が画面に出てきたことがあったのですが、まさか映画の画面にまで出てくるとは。ヒンディー語映画には出てこないので、タミル・ナードゥ州の規制なのでしょうか? しかしこの映画に関して言えば、むしろ「人を傷つけたり殺したりするのは法律違反です」とでも出した方がいいのでは、と思わせられました。(元ネタはこちらの2013年8月20日のブログ記事より)

            

そういえば、この頃、2010年代半ば頃から、南インド映画では主役が平気で人を殺すシーンが多くなったような気がします。なぜなんでしょう? 一度、検証してみたいものです。もう1本の『マジック』も、最後に復讐シーンで主人公が悪人たちを殺すのですが、こちらは少し嫌悪感が少なく見られてやれやれでした。ヴィジャイ、いい作品も多いのですが(『サルカール 1票の革命』とか、『ビギル 勝利のホイッスル』とか。一番好きなのは『きっと、うまくいく』のリメイク『Nanban(友達)』)、もうちょっと大事に使ってあげてほしいなあ、と思います。それとも、過激に悪を撲滅しないと、ファンが納得しないのかしら? 50歳を期に、いい監督、いい作品とたくさん出会って下さることを願っています。

 


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