アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

明日出航!『PS2:大いなる船出』が始まる

2024-06-13 | インド映画

マニラトナム監督作『PS1:黄金の河』は、たくさんのインド映画ファンを引きつけたようです。中でも人気が高かったのが、私が「チョーラ朝のトリックスター」と名付けた剣士デーヴァン(カールティ)と、弟王子のアルンモリ(ジェヤム・ラヴィ)。カールティは『囚人ディリ』(2019)を筆頭に、いつくかの過去作が映画祭で上映されており、今回はちょうど<インド大映画祭IDE>でカールティの主演作『スルターン』(2021)が上映作品に入っていたため、『スルターン』の回は常に満席という現象を引き起こしていました。

© Madras Talkies ©Lyca Productions

なるほど、こういうことがあるので映画を配給する側は、いろんなことを先読みしておかないといけないんですね。今回配給のSPACEBOXでは、『囚人ディリ』再上映とかをやってもよかったのでは、と思ってしまいます。『囚人ディリ』は映画としての出来も抜群だったので、もう一度大スクリーンであの緊迫の一夜の物語を見たいものですね。

© Madras Talkies ©Lyca Productions

さて、そんなカールティに対して、アルンモリ王子役のジェヤム・ラヴィは日本での上映作がありません。ソフト化作も、それから数ある映画祭で上映された作品もなく、私も『PS1』が初お目もじでした。でも、彼のやさしげな風貌、そして役自体が苛烈な兄王子のアーディタ(ヴィクラム)に比べて温かみのある役と、いいところをいっぱい持っているキャラのため、次のヒーローを求めていたインド映画ファンのお眼鏡に叶ったのだと思います。そもそもチョーラ王朝と言えば、10世紀から11世紀にかけて栄えたラージャラージャ一世(在位985~1014年)の時代を皆が思い浮かべ、ラージャラージャ一世を「中興の祖」と呼んだりするのですが、アルンモリ王子こそのちのラージャラージャ一世なのです。では、『PS2』がラージャラージャ一世の即位式で終わるのかと言えば、そんなことはないんですね。マニラトナム監督、ラストに上手な見せ場を作っていて、さらにアルンモリ王子のよさが見ている人に伝わるようになっています。

© Madras Talkies ©Lyca Productions

それからもう一つ、見る人の意表を突くのが、冒頭に繰り広げられる長男のアーディタ王子若き頃の恋物語です。お相手は、『PS1』をご覧になった方にはもうおわかりでしょうが、あの華麗なる美女です。冒頭で描かれるのは10代の頃の2人の恋物語で、美女になる前のかわいいティーンを演じているのは、何と、『神様がくれた娘』(2011)でニラーを演じたサーラー・アルジュン。天使のようにかわいかったニラーから10年以上が経ち、大人への入り口に立った娘、という感じで中世風の衣装をまとって登場するのですが、恋する相手のアーディタ王子の成長後はヴィクラムが演じており、『神様がくれた娘』では、ニラーの父で知的障害がある主人公を演じたのもヴィクラムと、何だか混乱してきてしまいました。こういう観客の混乱を狙って、マニラトナム監督はキャスティングをしたのでしょうか。ティーン時代の画像は残念ながら宣材の中になかったのですが、サーラー・アルジュンはこの後も映画界で活躍することになるのでしょうか...。

© Madras Talkies ©Lyca Productions

それからもう1人、『PS1』から登場していた人物ですが、『PS2』で強い印象を残す人がいます。「海の娘」ことプーングラリを演じるアイシュワリヤ・ラクシュミです。小舟を操ってランカー島に人を運び、海に潜ったりするのも得意な野性的な娘なのですが、どうもアルンモリ王子を慕っている様子で、恥じらいを込めつつ大胆な行動でアルンモリ王子とデーヴァンを助けようとする勇敢な行動が光ります。

© Madras Talkies ©Lyca Productions

アイシュワリヤ・ラクシュミは日本でもソフトが出ている『アクション』(2019)にも出演しています。すごく美しい女性の役で、前半のヒロインだったのですが、彼女を悲劇が襲います。あの役とは違い、今回の役は男でも叱りつけるようなたくましい女性。アルンモリ王子には、姉クンダヴァイの友人のワーナティ(ショービター・ドゥーリバーラ)という彼を慕う良家の娘がいるのですが、どちらかというとこのプーングラリの恋を応援したくなってしまいます。

© Madras Talkies ©Lyca Productions

こんな風に、恋もあれば戦いもあり、波瀾万丈の『PS2:大いなる船出』ですが、また事前にパンフレットを十分に読んでいただき、壮大な物語の中に身を投じていただきたいと思います。アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン扮するナンディニの謎も解ける『PS2』、楽しみにして劇場にいらして下さいね。最後に『PS1&2』の映画データと、両方の予告編、そして本編映像も付けておきます。

© Madras Talkies ©Lyca Productions

『PS1 黄金の河』 公式サイト  
 2022年/インド/タミル語/167分/原題:Ponniyin Selvan Part One பொன்னியின் செல்வன் 1 
『PS2 大いなる船出』 
 2023年/インド/タミル語/165分/原題:Ponniyin Selvan Part Two பொன்னியின் செல்வன் 2
     いずれも字幕:大西美保・監修:小尾淳・協力:安宅直子
 監督:マニラトナム
 出演:ヴィクラム、アイシワリヤー・ラーイ、ジェヤム・ラヴィ、カールティ、トリシャー・クリシュナン
 配給:SPACEBOX
※『PS1』は5月17日(金)、『PS2』は6月14日(金)より全国順次公開ロードショー

 

インド映画「PS1 黄金の河」予告

 

「PS2 大いなる船出」予告【6.14公開】

 

膨大な人数を動員した海辺での大戦闘シーン 「PS1 黄金の河」本編映像

 


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