アジア映画巡礼

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チュ・ジフンが凄い!『コンフェッション 友の告白』

2015-06-28 | 韓国映画

仕事の忙しさでほとんど死んでいた先週、蘇生した瞬間が3回。その1回が、韓国映画『コンフェッション 友の告白』の試写でした。この作品、チラシを見た時にそのコントラストの強いビジュアルにいっぺんで惹かれたのです。というわけで、まずチラシの裏表を付けておきます。

 

実際に見た『コンフェッション 友の告白』の映像は、こんなに凝った処理はしてなかったのですが、その分脚本と演技がすごくて、久々に試写室の椅子に体が沈み込む感覚を味わいました。中でもチュ・ジフンの演技がこれまで見たこともない質のもので、これはひょっとして彼、「化けた」かも、という感じです。それを引き出したのが新人監督イ・ドユンというのもまたすごいですが、韓国映画の奥の深さを感じさせてくれる作品でした。

まずは作品のデータからどうぞ。

© 2014 OPUS PICTURES, All Rights Reserved.

『コンフェッション 友の告白』 公式サイト

2014年/韓国/114分/原題:いい友達
監督:イ・ドユン
主演:チソン、チュ・ジフン、イ・グァンス、チョン・ジユン、イ・フィヒャン
配給:ツイン
宣伝:ポイント・セット

※8月1日(土)より、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー

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舞台となるのは釜山(プサン)。でも、韓国のどこの町でも起こりうる物語として、映画は語られていきます。中学時代からの親友3人組が主人公で、お調子者のインチョル(Jay)、堅実なヒョンテ(ペク・スンファン)、そしてドジなミンス(ハム・ソンミン)は、中学時代卒業式をサボり、山に登って記念写真を撮ろうとしたところ、遭難したという経験があります。その時インチョルがとった行動に、成人してからもヒョンテはわだかまりを捨てきれないでいるのですが、3人は会えば痛飲して酔っ払うという、相変わらずの「いい友達」でした。

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結婚しているのはヒョンテ(チソン)だけで、彼は消防士として妻と幼い娘を養っています。妻ミラン(チョン・ジユン)は耳が不自由なため、二人は手話で会話をしたりしますが、心優しいミランはヒョンテの親友たちにもやさしく、保険会社のやり手セールスマンになったインチョル(チュ・ジフン)や、親友二人に助けられながら細々と配達業などで食いつなぐミンス(イ・グァンス)は、ヒョンテの家にやって来ては娘のユリをかわいがっていました。一方、ヒョンテの実家はゲーム賭博店を経営しており、ヒョンテはその職業を嫌っていました。母(イ・フィヒャン)が経営しているのですが、母は体が不自由になった病気の夫を看る大変さに加え、家に寄りつかないヒョンテのことや、その妻が障害者だということなど、不満をいろいろ抱えていました。そんなヒョンテの母にやさしく接しているのはインチョルで、店のスタッフからは息子と間違われるほどでした。

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インチョルの目的は、もちろん大口の保険を売り込むことでしたが、ある時ヒョンテの母から、「保険は申し込むけど経営が大変でね。いっそ誰かが店を襲ってくれないかしら。それで降りた保険金で楽がしてみたいわ」と謎かけのようなことを言われます。ヒョンテの母親を自分の母のように大事にし、彼女のことを心配して、何とかヒョンテと実家との仲直りをさせたいと思っているインチョルは、この言葉の意味を考え始めます。店が襲われ、売上金が奪われて火事にでもなれば、これは一石二鳥どころが、利点がいっぱい。店は閉めざるをえなくなるものの保険金ががっぽり入るので、ヒョンテの母親は病気の夫の看病に専念でき、家業を嫌っていたヒョンテとの仲も修復できるはず。こう考えたインチョルはある計画を立てるのですが、それが思わぬ悲劇を招くことになります....。

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3人のキャラクターがそれぞれによく描きこまれていて、各人が持っている「どうしようもなさ」が物語を転がしていきます。特に、保険会社のやり手社員というインチョルは、頼まれれば保険金詐欺への協力だって何のその。厳しい調査員からは目を付けられている人物です。そして、義侠心が道徳心を押さえ込んでしまうその性格が身の破滅へと繋がっていくのですが、この破天荒ともいうべき人物をチュ・ジフンが見事に演じていて、見ていてたびたびうならされます。チュ・ジフンの怜悧な外見とはそぐわない直情径行型のインチョルが画面に出てくると、それだけで画面温度が数度上がるような気がするから不思議。特に中盤以降に出てくるヤクザの会社に乗り込んでの交渉場面は、狂気さえ漂わせていて必見です。

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この役を演じてもらうにあたり、監督はチュ・ジフンに「役柄にリアリティを出すために体型管理をしないでほしい」と言ったとか。そのためチュ・ジフンは、モデル体型から10キロも増えた82キロの体重で撮影に臨んだそうです。演技でキャラクターを覆わず、自分自身としてスクリーンの中で生きてほしい、というのが、全員に対するイ・ドユン監督の指示だったそうで、新人監督とは思えない大胆な演技指導です。脚本の出来もイ・ドユン監督に自信を与えていたのだと思いますが、それがいい形で生きた秀作となりました。

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チソンが演じるヒョンテも、インチョルの強烈さの陰でちょっと割を食っていますが、最後の対決シーンなどはやはりチソンならではの実力を見せてくれます。意外なラストも用意されていて、サスペンスとしても楽しめる『コンフェッション 友の告白』、歯ごたえのある映画がお好きな方はぜひお見逃しなく。

映画『コンフェッション 友の告白』予告編





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