本日、『女神は二度微笑む』@ユーロスペースでの最終回上映終了後、東京外大の丹羽京子先生とトークをさせていただきました。丹羽先生は2012年に開設されたベンガル語専攻科の准教授で、コルカタを中心としたベンガル語圏とその文化、特にベンガル文学に詳しい方です。
お話は、まず冒頭に登場するコルカタのメトロ(地下鉄)のことから。インドで最初にできた地下鉄で、1984年に開通したそうなのですが、この「インドで最初の地下鉄」というのがコルカタの人たちには自慢なのだとか。事実、ニューデリーのメトロの開通はその後だいぶたってからですし、ムンバイは今やっと一路線が開通しただけ。自慢するのもわかります。
この映画に登場する交通機関としては、ほかにもヒロインのヴィディヤ(ヴィディヤー・バーラン)がよく乗っていたタクシー(コルカタは全身黄色のタクシーなので、まさにイエロー・キャブです)、ヴィディヤを助ける警官ラナ(パラムブラト・チャテルジー)が通勤に使っていた市電がありますが、ラナの帰宅時の市電シーンがなかなか趣きがある、と丹羽先生も絶賛して下さっていました。
ほかにコルカタではオートリキシャ(三輪タクシー)も走っていますが、リキシャと呼ばれる人力車は、他地域では自転車が牽引するのに、コルカタでは文字通り人力で牽引されるのが珍しいです。人力車には、殺し屋のボブが乗っていたりしましたね。そういえば、今朝の毎日新聞に森永卓郎さんのインタビュー記事が大きく出ていて、「ボブは森永卓郎に似ている」という意見が多いためネタにしようかと思ったのですが、トークの時間が短くてあきらめました。下がボブですが、似てますかね~? このシャーシュワト・チャテルジーという俳優さん、素顔はもっと若々しくて、知的な感じの人です。映画雑誌「Filmfare」の2012年9月9日号に、素顔と共にインタビュー記事が出ています。バックナンバーをお持ちの方は確認してみて下さいね。
さて、本作は地下鉄カーリーガート駅付近からお話が始まるのですが、駅名はもちろん、本作に登場する地名等はほぼ全部が実在のものです。カーリー女神の寺院への入口とも言うべきカーリーガート駅、そこから割と近くにあるホテル・モナリザ、そしてクライマックスのドゥルガー・プージャーの舞台となる「三角公園」ことトライアンギュラ・パーク。この公園は、コルカタの中でも南の方になるのだとか。事前にうかがったお話によると、この公園はドゥルガー・プージャーの時にはコルカタ最大とも言われる女神像が立てられることでも知られているそうです。
そのドゥルガー女神ですが、シヴァ神の妃パールヴァティー女神が姿を変えたもので、穏やかなパールヴァティーに対し、ドゥルガーは悪魔を退治するという勇壮な女神、カーリーはさらに恐ろしい形として現れてきます。温和→ちょいコワ→めちゃコワ、という女神三態でしょうか。それが主人公ヴィディヤと重なる、というわけで、現地版ポスターは、下のようにヴィディヤとドゥルガーを重ねてあったりします。
ドゥルガー女神の祭りは、ベンガル暦で日にちが決められるため、9月の末から11月ごろまでの間のどこかで、毎年変わります。そして、ドゥルガー・プージャーの3週間後には、カーリー・プージャーと呼ばれるカーリー女神の祭りが行われるそうです。これも事前にうかがったお話で出たのですが、ベンガル地方ではこのように女神信仰が盛んで、それは「母」のイメージにも重ねられるため、おどろおどろしいカーリーもカーリー・マー(お母さん)とよく呼ばれるのだとか。
ベンガル地方はこのように独特の文化を持っていて、劇中に出てくる「二つの名前」もその一つ。ラナは本名をサーティヤキ(ベンガル語だとシャットキ? ヒンディー語風なまりのベンガル語だとサトヨキ)と言い、サーティヤキが「バロ・ナーム(正式名)」、ラナが「ダーク・ナーム(呼び名)」となります。ダーク・ナームは単なる愛称もしくはあだ名というイメージとは異なり、広く日常的に使われるそうで、ダーク・ナームをいつも使っている場合、第三者がその本名を知らないことも有りうるとか。事実、本作の中ではカーン警視(ナワーズッディーン・シッディーキー)がラナの正式名を知らなかった、というシーンがラスト近くで出てきます。
こういうベンガル文化の粋をあちこちに散りばめた本作ですが、ベンガル人はこの作品をどのように見ているのでしょう? 丹羽先生のお話だと、「かつてはベンガル映画とヒンディー映画は厳然と違うものだったので、ベンガル人はこの映画のハイブリッド感が新鮮だったようです。いわゆる典型的なヒンディー映画は見ない人もこの映画は見たと言われますし、コルカタでもヒットしました」なるほど~、ハイブリッド感ですかー。
私の方からは、クライマックスシーンに対するツッコミ(ネタバレになるので書けません;;;)と、さらには何度も見てみると時間経過の点で疑問が出てくる、というお話をしました。この時間経過に関する矛盾点、将来DVDが出たらお買い求めの上、「ここだ!」という所を発見していただけたら、と思います。4、5回ご覧になった上で、時間経過を書き出してみるとわかるかも。
『女神は二度微笑む』、ユーロスペースでの上映は4月3日(金)までです。まだご覧になっていない方(このブログの読者では、いらっしゃらないですよねー)はお急ぎ下さい~。公式サイトはこちらです。本日お越し下さった皆様、本当にありがとうございました!
ドリフの方も思いだしてしまいましたが(^o^;)
雰囲気ありますね。
「ドリフの方」とは仲本工事でしょうか。そういえば、こちらも似てますね。
この個性的な俳優さんシャーシュワト・チャテルジーはすでに30本ぐらいベンガル語映画に出ているベテランです。
素顔はこちらのイメージ画像で見られます。別人28号ですよ~。
https://in.images.search.yahoo.com/search/images;_ylt=A2oKmJc1IyFV5S8ADYW7HAx.;_ylu=X3oDMTB1cGxkMzU3BHNlYwNzYwRjb2xvA3NnMwR2dGlkA1ZJUElOMDJfMQ--?_adv_prop=image&fr=yfp-t-704&va=Saswata+Chatterjee
”翻訳がcinemaasiaさんらしいよ”
”それなら安心やわ~” と仲間うちでもcinemasiaさん印がおすすめ度プラス になっています。
さて、原題タイトルの『KAHAANI』 は何語でしょうか?
Google翻訳してみたものの、私にはベンガル語もヒンディ語も 文字が判読できず、こちらにコメント質問させていただきました。
原題の「KAHAANI/カハーニー」はヒンディー語です。この映画は、基本的にセリフはヒンディー語なので、ヒンディー語映画となります。
「カハーニー」は”物語”という意味で、本作では”フィクション”という意味合いでも使われています。
CHOOさんのブログも拝見したのですが、マレーシアがご専門領域なのですね。
でも、CHOOさんのブログのタイトルはレスリー・チャンというか『金枝玉葉』の主題歌なので(それとも張愛玲の方?)、それで「ときどき華流」なのでしょうか。
マレー語がおできになるのでしたら、ヒンディー語とは共通の単語がいっぱいありますので、映画をご覧になって「知ってる!」と思われた単語もあるのでは、と思います。
サンスクリット語からマレー語に入った単語、アラビア語の単語で両方の言葉に入っているものなど、「siswa(H:shisya)」「kabar(H:khabar」等々結構ありますね。
というわけで、マレーシアも大好きな私です。
字幕は、私以外にも上手な方がいっぱいいますので、あまりこだわらずにご覧になって下さいね。
これからもインド映画をどうぞよろしく~。