いよいよ今週、7月14日(金)から『K.G.F:Chapter1&2』が劇場公開されます。自主上映団体により『K.G.F:Chapter2』の英語字幕版が上映された時は、見た人多くの反応が「言語崩壊、理性崩壊しているものが多かった」というのは、「カーヴェーリ川長治のインド映画日記」のこちらの記事に書いてあって、「わかる~」と思ったものでしたが、さて、『1』と『2』をきちんとした日本語字幕が付いたもので見た場合は、どんなレスポンスが出てくるのか楽しみです。私も、英語字幕版で『1』、それから『2』を見た時は、①語りで進行する作品で、映像自体は「語る」言うより「表す」だけなので、すごくわかりにくかった、②マフィアのボスどもがどれも同じ顔に見え、誰が誰やらわからなかった(違う顔の役者を選べー! それが無理なら髪型、ヒゲ型を変えろー! と、スクリーンに向かって毒づきました)、③途中にフラッシュバックが何の脈絡もなく入るため、それにかき回されて混乱し、よくわからなかった、というのが正直なところです。というわけで、わかりにくい原因は大本の構造「紙芝居形式」にある、と断じて「ダメじゃん! こんな紙芝居映画がなぜインドで大ヒットしたの?」と思ったものでした。
ところが、日本公開に当たってちょっとお手伝いするうちに、藤井美佳さんの字幕の仮ミックス版(まだ完成字幕ではない、前段階の字幕)を見せてもらい、劇場用パンフに掲載されるという登場人物一覧や、motoさんという方の上手なイラストによる人物関係図などをチェックしたりして、やっと映画の全貌がはっきりとわかりかけてきた次第です。何と名付けていいかわからない、クロスカットのバラし技法にも慣れてきたようで、あまり気にならなくなりました。それにしても、これだけのとっちらかりを、計算した上でやってのけるプラシャーント・ニール監督って、どんな頭をしているのだろう、と、その脳みその中をのぞき込みたくなります。インド人観客が、それを一発で理解できたというのも驚きで、やっぱり二度、三度と見に行き、見れば見るほど面白くなったのかしら、とか、いろいろ考えてしまいます。7月14日(金)の日本公開初日、どんな反応が出てくるのかとっても楽しみです。で、上映スケジュールは? と思って劇場のサイトを見たら、まだ決まっていないところばかり(当たり前か)。『1』と『2』があるので、劇場さんも頭が痛いところでしょうね。オススメのご鑑賞スケジュールは、以下の通りです。
1日目:『1』を鑑賞。劇場用パンフを買って帰って、人物紹介のページをじっくりと見る&読む。
2日目:『2』を見る。
別の日:『1』と『2』を続けて見る。
あとはお好みでどうぞ。『RRR』のようにわかりやすい作品ではないので、好き嫌いが分かれるかも知れませんが、この映画の良さを知っておくのとおかないのとでは、これからのインド映画の理解に大きく差が出てくると思います。
ところで、『K.G.F:Chapter1&2』は、日本で初めて一般公開されるカンナダ語映画です。映画祭上映では、すでにいろんな作品が紹介されていて、たとえばこんな作品が挙げられます。
🎥『パニおばさん』1982年/Phaniyamma 監督:プレーマ・カーラント<大インド映画祭1988>
🎥『母上様』1998年/Thai Saheba 監督:ギリーシュ・カーサラヴァッリ<インド映画祭2003>
🎥『島』2002年/Dweepa 監督:ギリーシュ・カーサラヴァッリ<アジアフォーカス・福岡国際映画祭2002>
🎥『ルシア』2013年/Lucia 監督:パワン・クマール<南インド映画祭2017>
🎥『腕輪を売る男』2018/Balekempa 監督:イーレー・ガウダ<アジアフォーカス・福岡国際映画祭2018>
『腕輪を売る男』の時は私が字幕翻訳を担当して、池亀彩先生に字幕監修をお願いしたのですが、その時のご縁が生きて、今回の藤井美佳さんの字幕監修もお引き受けいただけました。というわけで、ここからが本題です!(前段長――過ぎ)
カンナダ語映画『K.G.F』シリーズの公開を記念し、インドの真の姿を伝える本として話題の『インド残酷物語 世界一たくましい民』 の著者で、本作のカンナダ語の字幕監修も行った京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授の池亀彩氏と、様々なインド映画の研究や紹介に関わっているアジア映画研究者の松岡環氏が登壇し、『K.G.F』のヒットの秘密やカンナダ語映画についてなど、知られざるインドの貴重なお話をしていただきます!
ぜひ、この機会にご鑑賞ください。
▼舞台挨拶日時▼
7月22日(土) 14:55~15:25 『K.G.F:CHAPTER2』の12:00の回上映終了後
ゲスト登壇者:池亀彩(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授/「インド残酷物語 世界一たくましい民」著)
聞き手:松岡環(アジア映画研究者)
場所:新宿バルト9(東京都新宿区新宿3丁目1-26 新宿三丁目イーストビル9階)
※登壇者は予告なく変更となる場合がございます。予めご了承下さい。
【販売スケジュール】
■インターネット販売
オンラインチケット予約KINEZOにて
7月10日 (月)0:00(=7月9日(日)24:00)より販売
詳細&ご予約はこちらで ⇒ お陰様で、本日7月10日朝までに完売しました!! ご予約下さった皆様、ありがとうございました! 当日劇場でお目にかかれるのを楽しみにしています
池亀先生のご本は前にも紹介しましたが、日本で唯一、『K.G.F:Chapter1&2』主演のヤシュを短いながら紹介している本です(今のところ)。映画の舞台となったカルナータカ州の姿を知るためにも必読の本ですので、ぜひ事前にお求めのうえ、ご高覧下さい。池亀先生はお話もお上手なので、当日は短い時間ながら、大いに語っていただこうと思っています。楽しみにしていて下さいね!
「あとは、俺様との顔合わせだけだな」と言っているロッキー(ヤシュ)ですが、こんな記念写真的スチールじゃなくて、もっと迫力のあるスチールを下さい、ツイン様! ラーム・チャランの『ランガスタラム』(同じく7月14日より公開)に負けますよー。『ランガスタラム』も個性的な作品なので、両者のぶつかり合いがマジ、見ものです。暑い夏がますます熱くなりそうですが、もう一度、「ヤシュのコメント+本編映像+予告編」動画を付けておきます。公式サイトはこちらです。
『K.G.F:CHAPTER1』本編映像 出会い篇(ヤシュコメント入)