本日10月22日(金)より、今年の<のむコレ>が始まりました。東京のシネマート新宿では、来年1月27日(木)までという長丁場です。大阪のシネマート心斎橋は12月23日(木)までですが、それでも2ヶ月という長さです。<のむコレ'21>の全貌は、公式サイトを見てみて下さいね。情報満載です。
で、今日は何をご紹介するかと言えば、オープニング作品となった中国映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・上海』(2016)。前もって宣伝会社の方からDVDで見せていただいたのですが、これがまあ、とんでもない豪華配役の、異様なテンションの作品でした。2016年にこんな作品が作られていたとは、と唖然とした次第です。上のチラシ写真からおわかりのように、中国の大俳優葛優(グォ・ヨウ)に章子怡(チャン・ツィイー)、そして日本の浅野忠信が主役とは、何とも豪華ですね。他にもいろいろ中国の名優陣が出ていて、しかも戦前の上海が主舞台で、凝りに凝ったセットが作られていて...と、一体、製作費を何万元掛けたんだ!と言いたくなる作品です。前説はこのぐらいにして、作品のデータとストーリー、見どころを簡単にご紹介しておきましょう。
©2016 HuayiBrothers Media Corporation Emperor Film Production Company Limited All Rights Reserved
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・上海』
2016年/中国/北京語、上海語、日本語/123分/原題:羅曼蒂克消亡史/英題:The Wasted Times
監督:チェン・アル(程耳)
主演:グォ・ヨウ(葛優)、チャン・ツィイー(章子怡)、浅野忠信、ドゥ・チュン(杜淳)、ジリアン・チョン(鍾欣)、ニー・ダーホン(倪大红)、チャオ・バオガン(趙寶剛)、ユアン・チュアン(袁泉)、ヤン・ニー(閆妮)
配給:アクセスエー
宣伝・配給協力:フリーマン/オフィス
※10月22日(金)より<のむコレ'21>シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー
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1937年の上海。マフィアのボスであるワン会長(ニー・ダーホン)の右腕として、知力と財力と暴力を兼ね備えた男ルー(グォ・ヨウ)は多くの手下を使い、自分たちに敵対する者を遠慮会釈なく葬っていました。ルーの参謀格は、ルーの妹と結婚した日本人の渡部(わたべ/浅野忠信)で、上海に長く暮らして上海語が堪能な上、日本料理店を営んでいるという、面白い男でした。またルーには、汚れ仕事を引き受ける”車夫”(ドゥ・チュン)と呼ばれる男や、家庭を取り仕切る料理上手な家政婦ワン(ヤン・ニー)といった、片腕的存在の人間もいました。そんな時、日本の実業家がルーに銀行設立の計画を持ち込んできます。それを聞いた渡部はルーに、日本人には用心するよう忠告し、ルーは丁重にその話を断りますが、日本側は話に興味を示したルーの義兄弟チャンと手を組み、ルーの暗殺を画策します...。
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映画のストーリーが始まるのは上記のようなエピソードからなのですが、その後時代はその3年前、さらには1941年の香港と上海、1945年の重慶と上海、1944年と45年のフィリピンと、めまぐるしく時と場所が移っていきます。それぞれの時代と場所には、3年前、ワン会長の妻でありながらダンス教師と浮気をした女優のシャオリュー(チャン・ツィイー)のエピソードや、上海で女優として名を成しているウー(ユアン・チュアン)のエピソード等々が盛り付けられ、ルーと渡部を狂言回しのようにして、マフィアの世界とそこに沈んだ女性たちが描かれます。
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よくわからないストーリー、と思われるかも知れませんが、絵面の美しさとその迫力に絡め取られ、最後までぐいぐいと引っ張っていかれてしまう作品でした。中でもグォ・ヨウがさすがの貫禄で、ぬえのようなマフィア・ナンバー2を豊かな演技力でスタイリッシュに実体化し、その姿を見ているだけで飽きません。特に、最初に現れた時のストライブ柄の長衫姿は惚れ惚れと見惚れるほどで、その後も様々な長衫姿を見せてくれて、目の正月でした。十数年にわたる、ルーという初老の男の変化もキッチリと表現して見せてくれ、名優ここにあり、という感じです。
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一方浅野忠信は、最初に上海語で狡猾な小僧のエピソードがえんえんと語られ、その語っている人物が出て来たら浅野忠信だった、という意表を突く登場のし方といい、日本料理店を経営し、自らも板前として働く男というこれまた意表を突く役柄といい、面白い役どころを演じていました。ある意味、本作は浅野忠信扮する渡部が主人公とも言え、だんだんと渡部という男の正体がわかるにつれて、映画は上海マフィアの世界という狭い場所から時代の荒波の中に出ていく、という感じです。少々「何が言いたい?」的作品ではありますが、自分が書いた小説を映画化したというチェン・アル監督の意欲は買いましょう。
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そして、美術や衣裳が見事なのには見惚れてしまいます。それもそのはず、衣裳デザイン担当は香港の奚仲文(ハィ・チョンマン/イー・チュンマン)なのです。チャン・ツィイーが着る和服には変なものもあったりしますが、長衫や旗袍は美しいものが多く、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・上海』ファッションブックがほしいほど。さらに美術の韓忠(ハン・チュン)も金鶏奨の美術賞を獲得しており、室内等の造形も見事です。また、音楽の使い方も凝っていて、シューベルトの「冬の旅」などのクラシックをアレンジしたBGMから、梅林茂作曲の英語曲まで、効果的に使われています。
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実は本作の登場人物は、というか、元の小説がそうだったのだと思いますが、当時の実在の人物をそれぞれモデルにしています。ルーは上海暗黒街の大立者杜月笙、ワン会長は杜月笙らと共に「上海三大亨」と称された黄金榮、ユアン・チュアン演じる女優は胡蝶、チャン・ツィイーと映画で共演していたのは趙丹...等々、見る人が見ればわかるらしい豪華な面子です。中国映画好きの方は、ぜひお見逃しなく。最後に予告編を、中国版と日本版の両方で付けておきます。中国語の原題の「羅曼蒂克」は「ロマンティック」と読み、訳すると「ロマンティックな終焉の歴史」とでもなるようです。
《羅曼蒂克消亡史》終極預告
映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・上海』予告編