新潮社のサイト「Webでも考える人」に、沖田瑞穂さん(中央大、日本女子大等非常勤講師)の「インド神話の世界」が連載されています。第3回目の今回のテーマは「神話学からみる『バーフバリ』」で、沖田さんの以前の評論「二人の『ファム・ファタル』 デーヴァセーナとデーヴァヤーニーの物語」(「ユリイカ」2018年6月号)での分析をさらに主要登場人物全員(クマラもあります❤)に広げて、『バーフバリ』とインドの古代叙事詩『マハーバーラタ』との人物対応が紹介されています。『バーフバリ』ファンの方は必読!ですし、インド神話や『マハーバーラタ』についてのわかりやすい解説ともなっているので、インド文化を知りたい方にも最適です。このテーマは「第4回にづづく」とあるので、次回も楽しみですね。「ユリイカ」の評論も、まだの方はぜひ読んでみて下さい。
今回の沖田さんの文の中に、”インターネットで用いられる「アバター」という用語は、「化身」を意味するサンスクリット語「アヴァターラ」に由来します”という部分があるのですが、これはローマナイズするともっと理解しやすくなります。「アヴァターラ」はヒンディー語での発音は「アヴァタール」で、そのローマナイズは「avatar」。これを英語風に読むと「アヴァター」となり、それに日本語のカタカナ表記をする時の慣例「ヴァ」→「バ」という置き換えが加わって、「アバター」になったのですね。これに関しては日本語版ウィキ「アバター」でも言及してありますが、もしかしたらインド人のITエンジニアがこの用語の使用を思いついたのかも知れません。
ところで『パッドマン 5億人の女性を救った男』(公式サイト)も、満員の回続出!と大絶賛公開中ですが、この映画の冒頭、製作会社のロゴにあたる部分のデザインというかアニメを使用した映像に、「おや?」と思われた方はいませんか? ソニー(コロンビア)の次に出てくるロゴで、最後に出てくる会社名は「KRIARJ ENTERTAINMENT」となっています。それに先立つアニメで描かれているのは、『マハーバーラタ』の最後の戦いであるクルクシェートラでの戦闘シーンで、崖の上に立つ2人は、左の青黒い肌をしたのがクリシュナ(クリシュナ神)、右側の矢筒を背負ったのがアルジュナ(パーンドゥの5王子の1人)です。実は会社名は、大文字&小文字で書くと「KriArj」となり、「Krishna」+「Arjuna」というわけなのです。なお、このロゴアニメの冒頭には、『マハーバーラタ』の中の「バガヴァッド・ギーター」の一節もナーガリー文字で出て来ます。
最初に見た時は、ここからアニメを使った映画の前説でも始まるのか、と思ってしまいました。YouTubeでロゴ映像を捜したのですが残念ながら見当たらず、その代わりに、この製作会社が金銭トラブルで予定していた作品から次々と手を引いている、というようなニュースが出て来ました。せっかく『マハーバーラタ』を借りたのに、御利益がなかったんですね。『パッドマン』をこれからご覧になる方は、コロンビアレディに続くこのロゴ映像にもご注目下さい。なお『パッドマン』の中では、ハヌマーンとクリシュナ神を使った、面白い宗教装置も登場します。「そんな程度ではココナツは割れないぞ~」とかツッコミながら見られますが、あの装置、実在しているのでしょうかしらん。一度、R.バールキ監督にうかがってみようと思います。皆さんも疑問点などおありでしたら、どんどんコメントをお寄せ下さい。