「The Bourne Legacy」※ネタバレ
やっぱり職人は こうでなくてはならないだろう。
殆どと言っていいほど、今回の主役アーロンの動きには
無駄が無い。
さすがは暗殺者。その名に恥じない活躍ぶりで
最早 笑ってしまうほど凄い。
ボーン・シリーズのサイドストーリーである
この作品。ボーンが同じ時に別の場所で行動を起こしていて
それによる混乱等も同時進行でちらりちらりと登場する。
一度も画面にボーンが現れる事はないのに、
いる、と言う臨場感がある。
主役アーロンは、確かに気持ちよすぎるくらいの
手際良さで敵を圧倒するけど
ボーンとは また違った個性があって親しみやすい。
あまり感情を表に出す事の無いボーンより
アーロンは感情表現が豊か。
悲しそうだったり 寂しそうだったり 微笑んだり。
戦っているときも、ボーンは アーロンに比べると
無表情のようだ。アーロンは険しい顔つきになっている。
だから人間臭い感じがする。
しかも演じているのが『ハートロッカー』で主役を演じた
ジェレミー・レナーと言う男優。むっちゃいい。
『SWAT』では悪者っぷりもハマっていた。
人間臭いという部分で言うと、確かに凄腕なアーロンだけど
時々弱る。で、女の方が有得ない活躍をして見せたりする事も。
それがまたスカッともする。
ストーリーは、ボーンのお話と繋がっているので、
そちらを見てからのほうが楽しいとは思う。
泣くほど簡潔に言うと。
これまで働いてきた機関から急に命を狙われるアーロンは、
勿論(笑)生き延びて同時にまた 命を狙われている博士の女性を
危機から救出し二人で逃亡していく展開。
残念な事を挙げておくと、だいたい、この二人は生き延びる
だろうって言うのが 途中で分かる感じ。
国家権力を盾にしてアーロン達を追い詰めようと必死な側よりも
大抵アーロンの方が一歩先にいる。
アーロン達暗殺者に、なにやら遺伝子に厄介な手をくわえたりしてる
科学者達。一緒に逃亡する女性マルタ博士が、アーロンの
服用している薬は服用中止となり、薬無しで生きられるウィルスが
出来ているなんて説明するのを聞いていると、
不気味さを感じる。普通にそんな話をしているのだから。
頭のおかしい科学者が何をしでかすか分からんぞ的な。
でもって、頭のおかしい科学者ってのが出てくるシーンが
いやに怖かった。
ある時マルタは人の神経を操作したりするような仕事に
関わっているとか敵の女に漏らしていたが・・・。
まるで誰かの意志で動かされてるロボットみたいな様子の科学者が、
マルタがいる部屋で急に銃を乱射し始めた。
怯える人達を、次々と撃ち殺していき、最後の一人の息の根を
止めるまで諦める様子は無い。
机の下に隠れて、どうにか身を潜めているマルタは、
ひとりづつ、淡々と殺されていく音を聞く。
動悸が激しくなった彼女の吐く息が
あのロボットに永遠に止められるのではと言う不安な気持ちがする。
しかもすぐそこに、そいつは居る。
マルタは難を逃れる。次の危機が迫った時にはアーロンが救出し
しかも 最後には良い仕事をする。
アーロンがウィルスを注射し、その後、身体がぶっ倒れた時も、
彼は彼女に逃げろと言って聞かせたまま 意識を失うが
マルタは逃げたりしない。
いたら足手まといなのでは?と言う不安もあった。
だって 暗殺者が凄くても 女性連れになると、足を引っ張られる
可能性は大だもの。その心配は余計だったみたいだ。
警察が、二人の逃亡先の民宿みたいな場所を囲んだ時も、
外にいてそれを見つけた彼女は めいいっぱいの声で
アーロンに逃げてと叫ぶ。彼女の声でアーロンは そこから脱出し
警察に捕まっているマルタを助け出す。
ところどころで、互いに強力しているのが良い。
確かにアーロンのような凄腕では無いし 力も弱いかもしれないが
マルタだって戦うのだ。そしてそれは実際にとても役立っている。
でも この話でも もっとも素敵なのは、やはりアーロンの強さだ。
別格の強さを見せ付ける。その手腕は鮮やか過ぎて凄い。
こうであってこそ手練。これこそ職人。
こうだからボーンのシリーズは大好きだ。
今回更に魅力的だったのはアーロンの個性。
どこか孤独そうで、母性ある人は放っておかれない感じ。
訓練中も ほぼ人と会うことが無かった様子で、
訓練地にいる管理員みたいな男と会った時も やたらに話す。
色んなことを質問したりするし
相手を知ろうとする職業病かも知れない。
でも 人と触れ合う機会を もうずっと欲していたように見える。
過去の記憶の中では、昔孤児院に居た、と本人が言っている。
その時の表情が なんだか 無性に寂しげに見えて
とても胸に迫る。
はじめに小屋を爆撃された後で、墜落させた残骸を発見した時の
表情も、怒りよりも悲しみに歪んでいるよう。
しかも、たまに素直で子供みたいな笑顔を見せたりもするもんだから。
そりゃあもう観ていたら アーロンに不幸が起こることなんか
許せないと言う気持ちに。
しつこくアーロン達を狙い追っかけてくる暗殺者のイラつく事といったら。
最後はハッピーエンド、アーロンが幸せになったので
何もかも良しですっきり。
先に言ったように、話の展開が読めそうな感じもあり
映画の面白味で言えば、ボーン・シリーズの方が満足する人も
多いかもしれない。
でも、あたしはこのアーロンに魅了された一人なので
何の文句もなしに大好きな作品の一つになった。
2012年 アメリカ
監督 トニー・ギルロイ
出演 ジェレミー・レナー レイチェル・ワイズ エドワード・ノートン