「TINKER TAILOR SOLDIER SPY」 ※ネタバレ
これには どうやら原作があるとのこと。
未見だが、先にそれを読んだ方が分かりやすいのかも。
ゲイリー・オールドマンがイギリス諜報員
スマイリーを演じる。
じわじわしていながら、淡々とした感じが
なんとなく グッドシェパードを思い出す。
ストーリー自体は単純で、呆気なく言うと、
イギリス諜報部「サーカス」の中に、
実はソ連のスパイが入り込んでいる。
この二重スパイを作品では「モグラ」と呼んでいる。
さて、そのモグラは一体誰なのか? と言うお話。
この時代(冷戦下)なら、わんさかとあるパターンの。
また、補足するならば、モグラは、東の大物スパイ、
「カーラ」の指示で動いている。
イギリス諜報部、大丈夫?早くとっ捕まえなくちゃ(笑)。
感想書くより先に、主要な人物を簡単に分類する。
まず<サーカス・イギリス諜報部の幹部4人>
(この4人の中に モグラがいる)
コントロールが付けたあだ名ティンカー 「アレリン」
(パーシー・アレリン)
コントロールの椅子を奪い、サーカスのリーダーになる。
野心を顔に書いたような男。
同じくあだ名はテイラー 「ヘイドン」
(ビル・ヘイドン)
スマイリーの奥さんを寝取る。ジムと言う男とは
怪しい関係のよう。
同じくあだ名はソルジャー 「ブランド」
(ロイ・ブランド)
顔がいかついので 覚えやすい。
同じくあだ名はプアマン 「トビー」
(トビー・エスタヘイス)
コントロールに拾われて幹部にまでなっている男。
強い物について行き、生き残るタイプ。
続いて<もぐらを探るチーム>
「スマイリー」 (ジョージ・スマイリー)
このお話の主人公。冷静で、コントロールの右腕。
妻に惚れこんでいる。
「ギラム」 (ピーター・ギラム)
スカルプハンターの一人。
スマイリーの指示に従い、必要な情報を収集する。
男の彼氏がいる(別れることになる)。
最後は<やたらに出てきて重要な人達>
「コントロール」
サーカスの元リーダー。謎の死を遂げる。
「リッキー」 (リッキー・ター)
スカルプハンターの一人。
仕事先のイスタンブールでKGB(ソ連)の女性と恋に落ちる。
「ジム」 (ジム・プリドー)
コントロールから密かに指示されハンガリーへ行き
その現場で銃弾に倒れる。
ヘイドンと親友・・・と言うよりヘイドンが好きだろう。
死んだと思われていたが生きており、教師をやって現在暮らす。
ラストでは モグラを射殺する。
この人たちのことは、いやでも出てくるので。さて。
時代は東西冷戦。東、対、西のスパイが情報戦を
展開している。イギリスMI6とソ連KGBも勿論そうで
舞台はイギリス諜報部<サーカス>。
サーカスのリーダー、コントロールと言う男は
モグラが入り込んでいる事に気づいていて、
その正体を突き止めようとしていた。そこで。
諜報部の中にあるスカルプハンターと言う部隊は
基本、実動部隊として、汚れ仕事など何でもやる。
その部隊の一人であるジムに、密かに仕事を指示。
ハンガリーの将軍が亡命を希望しているとのことで
彼はそれと引き換えに、諜報部のモグラの名前を
明かすらしい。その将軍との取引をうまくやり、
モグラの正体を暴く気だ。
早速ジムはハンガリーの首都ブダペストへと向かう。
ところが ジムはそこで撃たれて死に、結局作戦は失敗。
(死んでなかったと後で分かる)
失敗を問われて、コントロールはサーカスを去る事に。
この、コントロールの右腕であった、スマイリーは
彼の指示で、彼と共に、その時サーカスを去る。
しかし、コントロールはその後、謎の死を遂げる。
スマイリーは、レイコンと言う政治家(彼は諜報部を
監視する役目を与えられている政府の役人)から、
現在サーカスにいる4人の幹部の中に潜む
モグラの正体を突き止めろと依頼される。
サーカスを引退している身のスマイリーに、レイコンは
コントロールやスマイリーの時代の置き土産だから
この件は、お前が片付けろみたいな事を言うのだ。
とにかく、この映画、スマイリーが仕事をしなきゃ
話が進まないし。こうしてスマイリーは
モグラ探しを始めることに。
コントロールとスマイリーが去った後に、
サーカスで働く4人は、昔からコントロールらと
共に働いてきた仲間ではあるが
良き仲間、信頼関係と言ったような ものは
あってないようなもの。
スパイだし、例えこの4人の中にモグラが いようがいまいが、
無駄に人を信用することは有得ないのだろう。
ソ連の情報に詳しいコニーと言う女性の諜報員は、
昔を特に懐かしみ、あの時は良い時代だったと振り返るが。
コントロールは生前、モグラと疑いのある人物に、
密かに、あだ名を付けていた。
「ティンカー、テイラー、ソルジャー、プアマン」
この4人がコントロール達が去った後、
サーカスを動かす4人。
コントロールが疑っていたのは彼らだけではない。
彼の右腕として働いていたスマイリーのことも 怪しんでいた。
この事実は、スマイリー自身、知ることになるけど
彼としては疑いをもたれていた事がショックだったようだ。
この仕事の、辛い一面と言う感じ。
でも、コントロールが、「右腕だから怪しまない」
でいる感覚の人なら、そもそもリーダーにもなれてなかったと思う。
あくまでそれは仕事人として当たり前のことだったのでは。
さて、このあだ名をつけられた男達の誰かがモグラなワケだ。
映画の中では、過去を ふと振り返り、
昔にあったことを思い出すシーンが何度も出てくる。
過去の記憶に向かうとき、大抵は、その人物が
情景を頭に描き始めるような表情をしていたりするから、
その辺りは特に分かり難いものではない。
分かり難いのは、むしろ名前の方かな。
4人の男達のあだなも、普段の名前も、なんだっけ?ってなりやすい。
何故って、登場人物が多く、それぞれの名前が
どんどん出てくるので(笑)
4人をおさえ、スマイリーと、スマイリーと仕事をする男達の
両陣営のw一同の名前と顔が、しっかりと把握できないと混乱しそう。
後、名前だけ出てくる人物もいる。カーラと言う男。
こちら、名前だけ聞いたとき、最初ソ連にある秘密の諜報部隊
の組織の名前かと思っていた(笑)。
カーラは、ソ連の大物スパイで、スマイリーも一度過去に
会った事が。このカーラは、モグラに指示を与えている人物だ。
つまり何だか凄い東の大物スパイが、イギリス諜報部を
操ろうとしている。おおいに困ったことになっている。
過去にスマイリーがカーラと会ったのは、なぜかと言うと。
当時ソ連では粛清の嵐で工作員が脱出しまくっていた時代だった。
そんならリクルートしようってことで多くの工作員を西側に
引っ張り込もうとしていた。カーラもリクルートしようとした。
だが出来なかった。
スマイリーは奥さんとうまくいっていない(それどころか妻は浮気している)
それが仕事にもろに出てしまったのが、カーラに会った時。
「妻が大事なのだったら味方に付いた方が良い」と、
まるで自分に言うかのような説得をしたスマイリー。
カーラは大物スパイなのだから、最早その時点で見抜かれたに違いない。
カーラがチェーンスモーカーであると聞いていたスマイリーは
彼にタバコを用意してきた。ところがカーラは一本も吸わない。
なのに何故かライターだけは借りたままにして
結局、飛行機で祖国へと帰ってしまった。
ライターは奥さんからスマイリーにプレゼントされた大切な物だ。
それには、奥さんからの愛のメッセージが刻まれている。
スマイリーは それを返して欲しいのもあるだろうけど、
自分がやってしまったことの後悔もあるのではと思う。
自分の弱点を、自分でカーラなんかに教えてしまったのだから。
弱みなんか無い方が理想だけど、人間だから 何かある。
家族がいないほうが無難かもしれないけど、恋だってするし。
特にストレスの溜まる事も多そうだし。
そう言う意味では、スマイリーと共にモグラ探しをやる、
スカルプハンターの一人、ギラムと言う男は
途中で身の回りの整理をするのだが、して良かったのかも。
彼の恋人は男だから、結果的に何かに利用されたりすると
きついだろう。てか 本人は、もう、そう思うしかない。
あたしは最初、スマイリーも相当怪しいなと思っていた(笑)。
スマイリーは、冷静で、常にポーカーフェイスで
いったい何を考えているか全然分からないのだ。
それでこそ諜報員なのかもしれないけれど。
しかし、スマイリーは、その冷静さを武器に、じょじょに
モグラが誰かと言う真実に迫っていく。
コントロールが去った原因にもなっている、
ハンガリーでの仕事。それに失敗し、撃たれて死んだ男ジムは
実は生きており、帰国していた事も発見する。
彼が撃たれた後にどのような展開があったのかをスマイリーは知る。
同じスカルプハンターの一人でリッキーと言う男がいる。
こちらは、ギラム(例のゲイの彼)の部下で、イスタンブールで
仕事をしている時に、KGB(ソ連)の女性イリーナと恋に落ちる。
でも、結局イリーナは連れ去られてしまい、
リッキーは遅れながら帰国。帰ってこなかったせいで
敵に寝返ったと思われていた。どちら側からも命を狙われていると
思い、こっそりとスマイリーに会いに来る。
ジム(死んでたはずの彼)の回想に出てくるが、
イリーナはジムの前に連れてこられ、消されている。
また、ジムは撃たれた後で東側に拘束された時、
スマイリーがカーラに、ぱくられたライターを持っている男
すなわちカーラに拷問を受けている事もわかる。
この、ジムが何かと重要で、サーカスの4人組の一人
ヘイドン(コントロールが付けたあだ名はテイラー)と親友だ。
二人揃って笑顔の写真などもある。
でも、親友と言うだけではない。おそらく一線を越えた関係だろう。
ジムはヘイドンが好きだ。
ジムはハンガリーに発つ前、密かに依頼されたコントロールからの
仕事の内容を、ヘイドンにだけ喋っていたりする。
ヘイドンと言う男はと言うと、スマイリーの奥さんと浮気している。
朝から勝手にスマイリーの家に上がりこんでいて
今来たといわんばかりに、取り繕ったりしているが
二人が出来ていることを、ずっと前、パーティがあった時に
スマイリーは目撃してしまっているのだ。
さて、サーカスの4人組の残るメンバーと言うと。
コントロールにティンカーとあだ名された、アレリン。
現在、サーカスのリーダーを務めていて、
顔に野心が滲み出ている。
彼は「ウィッチクラフト作戦」なるものが魔法のようにうまくいくと
信じており、アメリカからの協力も、これで得られると思っている。
現在、イギリスではアメリカからの協力と言うものが
とても必要なのだろう。
そして プアマンこと、トビーは、その時、その時の流れに
乗じて、自分が生き残れる方を選んで付いていく男。
それは彼の過去の経験からくるものかもしれないが。
元々コントロールに拾われて、現在サーカスの幹部になっているが
コントロールが引退させられる際には、堂々と彼を見捨てている。
最後はソルジャーことブランド。顔がいかついので覚えやすい。
最早説明も面倒。
ともかく この4人から犯人を探し出さなくてはならない。
終盤に近づいていく内に、4人の男たちが、
次々と失脚していく展開や、
そこに迫っていくところは、ドキドキする。
緊張感やわくわくするのが、同時にある。
前に言ったように、ジムは結構重要だと言うことだけども。
ジムは、ラストでモグラを射殺する。
殺すとき、泣いている。裏切られたせいもあるだろうし
報復したいこともあるだろうし、でも、好きだからと言うのもある。
好きな奴だったので 自分で殺すって感じだろうか?
結局期待を裏切らないのは、カーラ。
先程ジムの話で もぐらが判明した通りだが・・・
モグラのヘイドンに与える指示が、一枚上手って感じ。
スマイリーの弱点は奥さんなのだから、
奥さんを寝取ることをヘイドンに指示。
そうすることで、この妻を寝取った男に対する
スマイリーの見方は、冷静に人物像を分析するものとは
違ってくる。スマイリーの目を曇らせておく作戦とも言うのかな。
だから、わざわざ本人に分かるように、ヘイドンは、
スマイリーの妻と浮気をしていたのだ。
朝から帰宅したスマイリーの前で取り繕い、
こそこそ靴をはくシーンとか、あれは、わざとか(笑)。
ヘイドンめ(笑)。
カーラの指示を受けて仕事をするヘイドンは
サーカスの男達を巻き込み、まんまと うまくやっている。
長いこと、モグラとして潜んできて見つかっていない人だし
それなりには頑張っただろう。
イギリスとしては、何と残念な。
けれども、スマイリーに見つかってしまったw
カーラのやろうとしてること、ウィッチクラフト作戦の真相も。
また、ヘイドンは 最後の方で、自分は歴史に名を残す
人間だのと言っていた。
それだったらスパイやってる場合ではないのでは。
印象的なのは、やっぱり、パーティでのシーンか。
ジムが、ヘイドンを好きって分かる、ところ。
そう言えば、最後、長く家に帰っていなかった、スマイリーの妻が
戻ってくる。どうでもいいけど、スマイリーの心は
奥さんにぞっこんのよう。
でも、奥さん、信用していいのだろうか?(笑)
そもそも、スパイとかモグラとかの前に、
浮気する妻を疑わなくて大丈夫だろうかw
この奥さんが何かに利用されていても、分からないのでは。
何だかいつまでもスマイリーが心配に思ってしまうw
映画自体はとても好みだった。
2011年 イギリス、フランス、ドイツ
監督 トーマス・アルフレッドソン
出演
ゲイリー・オールドマン/George Smiley
コリン・ファース /Bill Haydon
トム・ハーディ /Ricki Tarr 他