今日は、カナダ館の恩人が、ご来店してくださいました。
実は、去る9月25日に招待を受けたカナダ館・深夜パーティーへの参加は、予想だにせず、簡単な事では有りませんでした。特に最終日の閉幕後の会場の警備は厳しく、パーティーの招待状を持っている私達でも会場内に残ることが困難でした。
閉幕後にカナダ館にいた我々に対して、警備関係者から早急退場の指示が出されたのです。閉幕後の万博会場内に、パビリオンの招待状があっても、通常入場での我々が残っている事がルールから外れる事が理由でした。パビリオンの方々に迷惑を掛けてはいけないとの判断の元、パーティー参加を断念をしかけた所、店に良く来て戴いていた女性のアテンダントが偶然通りかかり、声をかけてくれたのです。
彼女は「帰られず、そのまま少しお待ちください」と言い残し、カナダ館VIP用ドアに消えていきました。
およそ5分程たった頃でしょうか、数人のパビリオン・スタッフが現れて、私達に“彼女がどんな困難な事も可能にできるから安心して!”と一人の女性を紹介されました。
そこには、小柄な初老の女性。笑みを絶やさぬ、澄んだ瞳から、全てを包み込む魔法の様な包容力をたたえている。「何も心配は要りませんよ。」その華奢さからは想像も付かぬ凛とした意思のオーラを感じ、驚かされる。警備員との折衝にさほどの時間は要さ無かったと思います。
「ようこそ、私達のパーティーへ。」
なんと驚いたことに、お店に来て頂いていた、和骨董のお好きなバーバラ・ヘルムさんが、カナダ館の有名館長さんだったのです!
事の顛末はこうでした。
何度も来店して頂き、仲良くなったアテンダント達からのお招き頂いた際、本来、万博関係者を、パビリオン関係者一人に対し、一人だけ万博関係者に限定して招待しても良いという趣旨のパーティーで、元々、私達がお招き頂けるなど有り得ない事であったのです。
今回は、特別に館長又は、館長代理人がパーティー終了後に同行してゲートを出ることを条件に、承諾するという異例の対処を頂く事と成り、スッタフ専用フリーパスの無い私達があの素晴らしいパーティーに、“まるで家族の様に迎えられ”参加する事が出来たのです。
まさしく“多様性の叡智”に育まれたご配慮を経験させて頂いた、忘れがたいパーティーとなったのです。
万博閉幕後、京都、高山など観光を済ませ、万博の激務を癒された館長さんが、カナダ帰国前日の御多忙の中、わざわざコレコーレに時間を裂いて頂き、なんと謝罪とお礼に来られたとの事で、再開の喜びに加え、私達全スタッフの恐縮の連呼となってしまいました。
「パーティーでは円滑に入場出来ず、不愉快な時間を与えてしまいました。」と、ご挨拶に訪れて頂けるなどとは・・・。
何とか、日本通のカナダ館長さんへ、最も日本らしいもので、国内でも当店でしか用意できない品物を進呈しようと、思案を行うが、突然のご来店に加え、10万点を超える品々からのノミネートの為なかなか皆の意見が揃いませんでした。
そこで、私達にとっても万博の思い出として忘れがたい、コレコーレ総合企画で開催した「古代紫の再現イベント」に友情出演して頂いた、世界的なアーチスト達にも進呈した物と同じものを進呈しようという事で、全員の考えがようやく揃ったのでした。
「古代紫」は、絶滅危惧種の紫草で貴重なものである事。その作品が、群馬の山奥のアトリエで、仙人の様な生活をしている作家の、ぬくもりのこもった手作りである事、天皇家と、ゆかり深い古代染色方を用いた作品で三笠宮殿下も、庭園美術館で開催した個展には、スケジュールを変更されてまでも来館され、痛く感動された品であること説明、感慨深げに眺められるも、固くプレゼントを辞退しようとするバーバラ館長さん。
名古屋テレビ塔に隣接する「オアシス21の大会場」で開催したショーの店内DVDをご覧頂き、コレコーレ総合企画で開催した「蘇った紫草色モードショー」が万博連携イベントであった事、映像に映っているモデルの方々が、実は、コレコーレのお客様や、一般公募の素人モデルさん達であり、自身素人の私達のつたない企画・運営に数々の協力を頂き、あろう事か世界的なアーティストの方にも賛同を頂けた奇跡を語るにつけ、ようやく深々と日本式に頭を下げられて、感謝の言葉を頂きプレゼントを受け取って頂く事となりました。
「不可能を可能にする女性」と畏怖されるバーバラ館長さんの、そこはかとなく奥ゆかしい、深い人間性を垣間見た一瞬でもありました。
それは、私達にあるフレーズを思い起こさせました。
「悔しいほどの出会い」
後日談として、万博開催中にカナダから来日したバーバラさんの兄弟がコレコーレに何度も足を運んでいらっしゃり、隠れファンであった事、「あまりにも混雑を極めていた万博会場よりも、コレコーレでの買い物を楽しみにしていた」との、あり得ぬ贈る言葉を頂き、静かに店から去っていかれたカナダ館長・バーバーラさんに、もっと早く語り合う時間を頂き、人生観を教え賜りたかった悔しさがひとしおの別れでした。
カナダでの再会を誓い、お見送りの時を向かえるにあたり、走馬灯の様に蘇る万博フィナーレの感動に胸を熱くさせられる思いの一日でした。