■家族はどこに向かうのか
これらの事例のように、多くの国や地域における伝統社会では、父と子に必ずしも血のつながりは必要でなく、例えばヤップ島の事例に出てきた精霊のように、それぞれの社会が持つ何らかのつながりが父と子を結びつけています。
つまり社会的な父の方が生物的な父よりも重要とされているのです。
一方で、精子や卵子が親子のつながりをあらわすという考え方は、実は近代の西洋社会で生まれた考え方であって、世界の当たり前ではありません。松尾先生は、不妊治療などの生殖補助医療技術は、こうした近代西洋社会の考え方をますます強める方向に進めるだろうとおっしゃっています。
そして、親子に血のつながりが重要視されがちな社会の中で、それ以外の多様な親子でも生きづらさを感じずに暮らせる社会にするために、私たちはどうすべきだろうか?という問いかけを、最後の締めくくりとされていました。
世界は広い。国や地域ノ数だけ社会があり、文化習慣があるわけですから、家族のかたちもさまざまで当然と言えば当然です。
しかし、生まれ育った環境がその人の常識を大きく左右するのだろうと改めて認識するとともに、生殖医療という科学技術の進展が人々の家族観を変え、その家族観に収まらない人たちが生きづらい社会に向かってしまうのではないかという不安も感じさせるお話でした。
〔https://secure.en.ritsumei.ac.jp/psy/〕
■Wikipedia(ウィキペディア)による『家族』解説
家族(かぞく)
(ドイツ語: Familie)
(フランス語: famille)
(英語: family)
婚姻によって結びつけられている夫婦、およびその夫婦と血縁関係のある人々で、ひとつのまとまりを形成した集団のことである。
婚姻によって生じた夫婦関係、「産み、産まれる」ことによって生じた親と子という血縁関係、血縁関係などによって直接、間接に繋がっている親族関係、また養子縁組などによって出来た人間関係等々を基礎とした小規模な共同体が、家族である。
また、血縁関係や婚姻関係だけではなく、情緒的なつながりが現在の家族の多様性によって最重要視されている。
家族の持つ機能には、性的、生殖、扶養、経済的生産、保護、教育、宗教、娯楽、社会的地位の付与などがあるとされる。
しかしこれらは社会の変化に伴って、弱体化し、大きく変容している。
《定義》
「家族」や「family」といった言葉には、いくつかの意味がある。
以下、辞書類の解説から紹介する。
Oxford Dictionariesでは、英語の「family」に関して、大きく分けて3つの意味を挙げている。
1 ふた親とその子たちで、ひとまとまり(ひとつの単位)として一緒に暮らしているものたち
・血縁や結婚によって関係づけられた人々
2 共通の先祖を持つ全ての人々
3 関連性のあるものごと
広辞苑では「家族」の解説文としては、「夫婦の配偶関係や親子・兄弟の血縁関係によって結ばれた親族関係を基礎にして成立する小集団」としている。
大辞泉では、「夫婦とその血縁関係者を中心に構成され、共同生活の単位となる集団」としている。
なお、世帯と家族は基本的に異なる概念である。
日本国厚生労働省の定義では、世帯とは同一住居・同一生計の集まりのことであり、同じ家族に属していても単身赴任や進学などで別居している場合は別世帯となる。
また逆に、家族でなくとも同一生計で同居している親族や使用人は世帯に含まれる。
▼家族の持つ機能
★家族が持つ機能と変化
●性的機能
[以前]
結婚制度に基づいて、パートナー内では許容されるとともに、その外側においては性を禁止する秩序機能
[現在の変化]
同棲、未婚の母、事実婚
●生殖機能
[以前]
子孫を残す
[現在の変化]
子供を持たないとの選択
●扶養機能
[以前]
老人介護、子供の面倒を見る機能
[現在の変化]
介護施設、保育園
●経済的生産的機能
[以前]
農業・自営業など、共同単位として経済的生産を行う
[現在の変化]
会社・工場など外部での経済的生産
●保護機能
[以前]
外敵からメンバーを守る(とりわけ女性、乳幼児、病人)
[現在の変化]
警察、病院など
●教育的機能
[以前]
子供を育てるとともに、社会に適応した人格を形成する
[現在の変化]
幼稚園、学校など
●宗教的機能
[以前]
宗教、文化、伝統の継承
[現在の変化]
宗教が軽視される傾向
●娯楽的機能
[以前]
家庭内で娯楽を楽しむ
[現在の変化]
遊園地、映画など
●社会的地位付与機能
[以前]
親の職業や地位を引き継ぐ
[現在の変化]
世襲の弱体化
上記のように、かつて家族は社会の基礎構成単位として広汎な機能を持っていたが、社会の発達による機能分化に伴って諸機能が外部化され、家族の機能は大幅に縮小しつつある。
一方で、生産機能は失ったものの生活共同体としての家族の機能は失われているわけではなく、
また教育的機能についても学校などの外部教育機関で長期間の教育が不可欠となる一方、子育ては依然として家族の中心的機能の一つであるばかりか、一家族あたりの子供の数の減少に伴い、家族内での比重はむしろ増しつつある。
現代家族の機能については性的機能・生殖機能・教育的機能・経済的機能の4つに限定するものから、さらに縮小した機能を想定するものまでさまざまな理論が存在する。
▼ライフサイクル
家族にもライフサイクルがあり、そのステージに応じて達成すべき発達課題がある。
★家族のライフサイクル
発達段階
1 どの家庭にも属さない、
ヤングアダルト
〈発達課題〉
・家族から分離して自己を確立する
・親密な同年代と仲間関係を持つ
・職業上で自己を確立する
2 結婚による家族の誕生
〈発達課題〉
・夫婦関係を形成する
・互いの実家、友人関係と関係を再構築する
3 幼い子供を持った家族
〈発達課題〉
・子供たちのために、夫婦は心理的物理的空間をつくる
・親としての役割を務める
・祖父母=孫関係を含めた拡大家族を構築する
4 思春期の子供を持った家族
〈発達課題〉
・子供らが家庭の内外を自由に出入りすることを受容する
・中年夫婦は、夫婦関係、人生職業上の課題を乗り越える
・老年世代を配慮する
5 子供たちの脱出と出立
〈発達課題〉
・夫婦関係を再構築する
・成長した子供たちと父母は、互いに大人同士として付き合う
・義理の子供と孫たちを含めた拡大家族を再構築する
・父母は、祖父母の心身の障害、死別に対応する
6 人生の晩年を送る家族
〈発達課題〉
・社会的・肉体的衰退に対応し、夫婦関係を再構築する
・中年世代へ、中心的な役割を譲り渡す
・年長者としての知恵と経験を活かし、孫たちに対してよい祖父母になる
・配偶者、同胞、同世代の仲間の死別に対応する
〔ウィキペディアより引用〕
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