本書を読むまで、洪水は堤防が決壊して水が平野に流れ水害を起こすものと認識していましたが、
著者は「洪水」は川の流量が平常時より増水する自然現象であり、
川が溢れたとしてもそこに人の営みがなければ「水害」とはいわない。
「水害」は人の営みにともなう社会現象であると述べられています。
「民衆の自然観」と「国家の自然観」があり、昔は自然と共栄することで折り合いをつけていたが、
近代社会は自然をコントロールしようと試みることにより「水害」が発生するようになったと
位置付けているのではないかと解釈しました。
つまり昔は洪水により住めないようなところには溢れてきた水を溜めてまた川に戻すことができたが、
近代社会は宅地開発等により人が住めるようにしたため、川を制御しようとしてダムを作り、
均一的な堤防を作ってきたが、完全にはコントロールできない事が証明されています。
土砂災害についても昔から危険な場所は知られていましたが、砂防ダム等を作り、山も宅地開発して人が営むようになったが、
近年は集中豪雨による土砂災害が多発しているが、その危険性を行政もディベロッパーも周知しているのにも関わらず、
告知について消極的であったことが、沢山の災害をもたらしていると指摘されています。
自分も両親が買った墓地が土砂災害により流されてしまいました、墓地の横に神社がありましたが、
無傷であったことは、昔から危険な個所は分かっていて、それを無視するとこのようなことになることを痛感しました。
でも行政は砂防ダムを構築して墓地を再建させてしまいました。
著者はダム無用論を展開されていて、この本をよんで認識を新たにしました、
概念としては知っているつもりでしたが、理論的になぜ不要か理解できました。
河川工学に「河川改修すればするほど、洪水流量が増え、被害が大きくなる」との理論があります、
災害が発生した場所のみを補強するのではなく、
河川の上流から下流までトータルで度の様に流量が増加した時に対応するか検討が必要であると痛感しました。
自分が前に読んだ、宮脇昭著「いのちの森づくり」にも書いてありましたが、
やはり昔からの言い伝えを守らないとそれはやがて自分たちに襲い掛かってくる事です。
真の森を作り、自然と共栄できる河川を作る事により、洪水水量を少なくして、
水害を軽症することができるのではないかと思いました。
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