気の合う近所の仲間を呼んだ先週末のパーティーに、横浜でワイン商をしている米国人のケビンが持ってきた『シャトーラフィットロートシュルト1986』を見て驚いた —— こんなに高価なワインを持ってくることはなかったのにとぼくは言った。
「いやいや、デッド・ストック。心配いらない」と彼。確かにエチケット(ラベル)の右下の角がスレて折れてる。それだけで価値が何万円も下がる話を聞いたことがある。
それならと、ぼくは冷凍しておいた北海道産の鹿肉をソテーして、そのワイン独特のチョコレートのようなフレーバー(不思議な味だ)に合わせてチョコレートでソースを作った。
今度はケビンが驚く番だった。
「ワインに合わせた料理 —— これはグッド・チョイスだ」彼が誉めてくれる。
他のメンバーが、思いがけないチョコレート風味の応酬に言葉を失っているのを見ながら、ぼくとケビンは、お互いに心の中でクスクス笑い合った。
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パーティーが終わったのは、結局、いつもどおりに日付の変わる頃。
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「後片づけは、朝でいいか」とは言っても、それは陽が大分高くなってからのことであった。
【The Beatles Experience - You're Going To Lose That Girl】