きみの靴の中の砂

まだまだ修行が足りない

 

 

『海好きなことから海辺に居住する人は多いが、やがて歳をとると海のある生活も日常となり、興味も薄れ、とりわけ海を見ていたいとも思わなくなってしまった・・・という人もまた多い。老夫婦が砂浜を歩く場面などは、外国映画でしかお目にかかれない。日本人と外国人とでは老夫婦の距離感が異なるのか』・・・なんてを考えながら、コンクリートの防波堤に寄せ掛けた自転車のスポークをウェスで乾拭きしていると離れた防波堤の上から海風の吹く中をイチ子さんの声が聞こえる。風の切る音で全部は聞き取れないが、何か食べに行かないかのようなことを叫んでいるようだった。

 由比ヶ浜にリニュアルしたパン屋があって、このところタウン誌などで話題らしく、この間から機会があったら行こうと言っていたのを思いだした。

 夫婦の距離感なんて年代物のシングル・モルトのようなもので、結果は何年も寝かせてみないとわからない。
 寝かしている間に加わる趣味や環境の変化、培われる気遣いの加減など無数の変化をブレンドすることによって保たれる距離感も少なからずある。互いに微妙な修正に多少の努力を惜しまないのがコツだろう。老夫婦ともなれば、それは、みんな無意識のうちにしてきたことのようにも思う。

 イチ子さんの自転車のメンテや365日の風呂掃除は、なぜかぼくの仕事になっていて、これを不平等と感じるようだと、まだまだ修行が足りないと言っておこう。
 
 

 

【Nikka Costa - First Love】
 
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