さて、毎年、卒業の季節が近づくと、昔の、ある『気にかかる別れ』が思い出されます。
*
それは、トマト・ジュース色のスカートがとてもよく似合う、年上の、育ちの良い色白の人でした。
「人を振るんだったら、次に好きになる人を私以上に大切にしてあげることが、私への《せめてものいたわり》ってもんだよ」と言うと、その人はクルリと背を向け、早春の生暖かい昼下がりの風の中を、肩を震わせながら足早に遠ざかって行きました。
それは、ぼくが十九になって、まだ間もない頃のこと...。
そうして、その人の残した最後の言葉の意味を本当に理解したのは、それから何年かして、今度はぼくが振られる立場に身を置いた時のことでした。
The Anita Kerr Singers / The fool on the hill
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