きみの靴の中の砂

見渡す限り家一軒ない土地ではあったものだから...

 

 

 アリゾナ州をアルバカーキから国道40号線で西海岸へ向かう途中、コロラド川を渡る手前の湖水地帯に添ってオートマン=トポック・ハイウェイを北上する。全くなにもない荒野の一本道。日中の気温が摂氏43度にもなる風土だ。

 途中、置き忘れられたかのようにポツンと小さなドライブインが一軒 —— 給油所を兼業する食堂『トポック・マリーナ』とサインボードにある。

 ランチ・タイム。

 メキシコ料理ケサディーヤ、11ドル61セント。メニューによると、それはビーフのミンチをチーズと共にトルティーヤで二つ折りにして挟み、よくわからない少量の油で焼いてある。言わば、お好み焼きに似た挟み焼きである。

 若いウエイトレスのAmberさんにミンチの部位を尋ねるとリブ・ロースだと言う。ついでに、彼女が、この砂漠のような職場にどこから通ってくるのかも聞きたいところだったが、実に余計なことと疑問は飲み込むことにした。なにしろ、見渡す限り家一軒ない土地ではあったものだから...。

 

 

 

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