梅雨明け十日 ----- 日曜の昼下がりのことだ。
イチ子が派手な彩色の洋陶器のボウルにイチゴを盛って縁側に立った。
「夏のイチゴってめずらしくない?」とぼくが庭先から聞いた。
「夏イチゴって言うのよ、これ。おじいちゃんの趣味の畑で採れたの。だから形は不揃いだけど...。母が伯母さんにも持っていってあげなさいって言うから...。それでね、今日は、これからこのうちの分でジャムを煮ようって思うわけよ」とイチ子。
続けて、
「ということでご足労ですが、節分の頃、庭でお汁粉パーティーやったじゃない。あのときに使った七輪って、すぐに出る?」
ぼくが納屋から七輪と炭、それと焚きつけの木っ端を持ってきて、庭の欅の木の下の日陰で炭火の準備を始めると、イチ子は隣の伯母の家の台所に大振りの雪平鍋を借りに行った。
*
「水とか、ジャムを固めるものとかいるんだよね?」と聞くと「ううん、そんなの使わないよ。イチゴの量の半分くらいのお砂糖と濃縮レモン果汁があればいいの」とイチ子。
ジャムが煮えるまでの間、ぼく達は納屋の外壁に打ち付けてあるバスケットでフリースローを競った。
「できあがったら、レア・チーズケーキとかヨーグルトに載せて食べると美味しそうね」と言うと、イチ子は、やにわにスリーポイントを決めてくるのだった。
【The Beach Boys / She knows me too well】
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