きみの靴の中の砂

おなじその夏だったかもしれない





 古い写真を見つけた。
 服装からして中学生頃のものだ。

 春日神社の先の消防小屋の角を折れて、途中、旧農林省鳥獣実験場の脇を登っていく山道。
 左を行く明るい色のワンピースを着たのは水口イチ子(うしろ姿ですぐわかる)。右の濃い色の服の女子は判らない。

 なんであの山道を登って行ったのか。誰が撮ったのか。

 坂を登り切ると左から稲城の大丸を経て登ってくる尾根道と合わさる。その先は、すぐに明治天皇記念館。また、大丸側に少し降り、路肩に『陸軍』と彫られた石の道標が見えると、その右手一帯は丘陵地をいくつも越えて旧陸軍弾薬庫跡地が続く。

                    

 その夏、ぼくはぼくで何をして過ごしていただろう。中上健次の『岬』を読んだり、キャロルのレコードを聴いていたのは、もしかしたら、おなじその夏だったかもしれない。




【Chicago - Questions 67 and 68】

 

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