南の海の、赤道をまっしぐらに越えた、とある島影の向こう-----そのコバルト・ブルーの海に、かつて、見果てぬ夢を追った人がいたことを我々は今も忘れずにいるだろうか。
*
「この写真の機体は、ゼロ戦ですかね?」とカメラマン。
「確かにゼロ戦に似てはいるけど、垂直尾翼と方向舵がゼロ戦より大きいという特徴がある。それとプロペラが曲がっていないところを見ると、フロート付きの水上機が正しく着水したと推測できる。つまり、この写真の機体は、ゼロ戦を水上戦闘機に改修した二式水上戦闘機と踏んだね。フロートは木製だから、もはや朽ちて、失われてしまってるけど...」
「パイロットは、どうなったと思います?」と彼。
「こういうふうにきれいに機体が残っているということは、撃墜されたんじゃないな。つまり、エンジンの故障か、燃料切れで不時着水したように見える。敵に機体を渡さないために、救出されたとき、パイロットが故意に沈めたのかもしれない」
それは、今も南海の空を飛び続けているように写っていて、プロペラ音まで聞こえてくるようだった。
FINIS
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