「いつまでも若い頃の気分でいられる方法ってあるんだろうか。勿論、歳を取れば容姿が劣化するのは仕方ないにしても、気の持ち方くらいはどうにかならないもんかな」
ぼくが言うのをイチ子は頷きながら聞いている。ぼくは続けて、
「今の人が持つ疑問や悩みへの解答とか対処方法は、二千年前のギリシアやローマの哲学者が既に著作に書いてるって読んだことがあるけど、この問題についてはどうなんだろう」
「そうね、あたし達が知らないだけで既に誰か偉い人が書いてるかもね。そう言えば、さっき聴いていたクリストファー・クロスの歌にもなんかそんな感じの歌詞があったような気がするけど...。確か有名な映画主題歌だったやつよ」
「"ARTHUR"かな?」
「そう、それ!」
iPhoneで検索した歌詞の中に、それらしいところを見つけてイチ子に示しながら言った。
「こういうことなら、ぼく達は昔から実践してるよね」
「そうね。でも、見た目も六つ七つは若く見られたくない?」とイチ子が透かさず欲張る。