42丁目通りがセント・ブライアント・パークに突き当たるところにニューヨーク公立図書館がある。
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空腹を覚えると、ぼくは図書館のキャフェテリアではなく、5番街と40丁目の交差点に程近い『リッツォのダイナー』まで行くのが習慣になっていた ----- それには勿論、ぼくの持ち合わせがいつも少ないという大きな条件が係わっているのだったが...。
大抵はコーヒーとメガサイズのフレンチポテトを注文し、残れば袋にもらって持って帰り、夕食の一部になった。
しかし、そんな日常でも月に一度や二度の贅沢はあって ----- と言っても高の知れた話だが ----- そんな時、イタリア半島の中部・古都シエナ出身のリッツォさんの得意料理『ファジョッリ』という、ウズラ豆と花びらの形をしたジッリというショートパスタを多めのスープで煮込んだひと皿をよく注文した。トスカーナ地方の家庭では日常当たり前に食べられている料理だという。バルミジャーノを多めに振るのがいいとか。赤いベリー系の香りのするハウスワインも一緒に頼みたい。
さて、そうしてぼくは、テネシー・ウィリアムズの『薔薇の刺青』の新訳を完成させ、ニューヨーク生活の、そのアッと言う間の十六週間を終えたのだった。
【Vanity Fare / Early In The Morning】
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