きみの靴の中の砂

いずれの詩人だったか





 海水浴客が都会への帰り支度を終える頃から、遠く稲村ヶ崎の向こうへ陽が落ちるまでの時間が好きだ。防波堤の決まった場所に腰掛け、海の音を聴きながら、時折、視線の端に白波を見る。そうして、考え、本を読んで過ごし始めて数日、海に入ることを忘れてしまったかのようだ。

 このところ繰り返し読んでいる、ある詩人のアフォリズムのような詩句のひとつ...

    愛しはじめたころの気持ちを
    箱にしまっておいて
    今 つかいたかった
    (松下育男詩集『5本の指』)

「詩の最初の一行は天使が書く。二行目は人間が書く」と言ったのは、いずれの詩人だったか...。




【Wilson Pickett / Land of 1000 Dances】


 

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