多湿だった気候も暦を改める頃になると、残暑ながら、日没後の涼風にハッとさせられる夜もある ----- それは、ウエイティング・サークルにとどまっていた季節とすれ違う瞬間。 その時分ともなると夏の思い出は、静かに乾いて、雑多なドライフルーツのように記憶の器に蓄えられる。 いつか過ぎたある日、わたし達は突然思い出したように、そのうちの一粒を摘まんで口に運び、じっくりと噛みしめたりするのだ。 【Paul Davis / Cool Night】