きみの靴の中の砂

夏を待ちながら




 昔は、ただ冷やすだけのクーラーと呼ばれていた装置が次第に進化して、いつの間にかエアーコンディショナーと改名していた。そのお陰もあって、夏の日盛りに窓を開けて家に風を通す機会が、めっきり減った。

 しかし、昔から冬は寒く、夏暑いというのは相場で、一年中エアコンのもと、閉め切った部屋に軽装でいるのは日本的な趣に欠ける。というわけで一念発起して、今年の夏はエアコンは使わず、窓を開けて裸で過ごしてやろうと決めた。ただ、無風の夜に寝苦しいのは困るから、扇風機だけは用意したい。

 これで、「暑い暑い」と言いながら、夏ならではの文章が書けるというものだ。

 開け放った窓から、油蝉の声が聞こえそうだ。夏休み中の近所の悪ガキ達の声も聞こえてくるだろう。向かいの家の旦那がホースで水撒く音も聞こえるかも知れない。飲み物は麦茶かサイダーがいい。

 こんなことなら縁側や濡れ縁のある家を建てておくんだった、と思ったが、こればかりは既に手遅れである。


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“No Matter What Shape(1965)” The T-Bones


FINIS
 

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