12/1 仙台市青年文化センター O列
<作・演出>長塚圭史
<出演>内田滋 剱持たまき 八嶋智人
大堀こういち 村岡希美 玉置孝匡 松浦和香子
水野顕子 大久保綾乃
中山祐一朗 伊達暁 長塚圭史
美保純
本年度の観劇納めは阿佐ヶ谷スパイダース!
思えば観劇始めも阿佐ヶ谷スパイダースだったんですよね
本公演を2作も生で見ることが出来て幸せな1年でした
今回は2000年に初演された作品の、阿佐スパ初の再演もの。
シアテレで初演版の放送があって、変な先入観を持つのも嫌だったので
あえて見なかったんですが、今はビデオ撮っておいて見比べれば良かったなぁと…
広瀬(内田滋)は高校卒業後就職もせず遊び暮す毎日。仲間内のリーダー格の
中津(伊達暁)とその母親和子(美保純)の住む家には、広瀬を始めとして、
中津の友人の明夫(長塚圭史)や五味(大堀こういち)、陽子(村岡希美)、陽子の
恋人の宮本(八嶋智人)が集まってくる。
和子は息子の友人である明夫や五味と関係を持ち、中津はそんな母親に対して
嫌悪感と憎悪を露にしている。
そんなある日、中津は広瀬にある頼みごとをする。それは、1ヶ月ほど留守にする間、
自宅の裏にある防空壕に17年間監禁している同級生たち(剱持たまき、中山祐一朗、
松浦和香子、玉置孝匡)の面倒を見て欲しいと言うこと…
※以下ネタバレあり
今回の舞台は上下二つに分かれていて、上の部分の上手が中津家のリビング、下手が
和子の寝室、真ん中に梯子があり、下は防空壕と言う設定。
最初、買ったチケットが一番端の席で、そこに座っていたら、係りのお兄さんに、
“この席だとちょっと部屋が見切れてしまうので、もし宜しければ少し後ろになりますが
真ん中の席をご用意してますので、そちらにどうぞ”と案内されました。
全体を見渡せる良い席でしたけど、如何せん後ろだったので表情が見えづらく、さらに
途中八嶋さんが面白い顔で笑いを取っていたので、双眼鏡持って来るんだった…と
激しく後悔(笑)
今回の阿佐スパも長塚ノワール全開と言った感じで、暗くて重たくて痛くて切ない物語
最初、監禁している人たちの世話を頼まれた広瀬が中津に何で監禁なんかしたのか
聞くシーンで、中津が「ムカついたから」と言うところがありました。
私も“何で?”って思いながら、その理由があまり語られないまま物語が進んで行くので
何となく釈然としない気持ちだったんですよね
でも最後の方で、中津が監禁していた同級生の菊沢に、
「お前が寂しくないように他のやつらも連れて来てやったんだろ?」みたいなセリフがあって。
“あ~、この子のこと、好きだったんだ…”と思った瞬間に涙が止まらなくなってしまいました
気が付くの遅いよっ!!って話なんですけど(笑)、でも最後に気が付いたからこそ
それまでの物語が一気に繋がった気がして、もう切なくて切なくて
それに、中津役の伊達さんがまた痛々しくて良かったんですよね~
母親に対する歪んだ愛情と憎悪に翻弄される、大人になりきれない子供。
初恋の相手にも“監禁”と言う歪んだ愛情でしか気持ちを伝えられない人。
絶対的に狂ってるんだけど、どこかでそんな中津が愛おしく思えるときがあって、
そこが長塚作品の真骨頂であり、だから私は阿佐スパが好きなんだなぁと思う訳です。
その他の役者さんもみんな印象的な演技ばかりでした
特に中山さんと八嶋さんのテンションはとにかく素晴らしいです
中山さんは監禁された一人で、子供の純真無垢な心を持ったまま大人になった役。
大人子供な様子が自然体で、芝居の重い空気を和ませてくれました
八嶋さんは相変わらずのハイテンション!
監禁された少年少女たちと心を通わせ、最後は一緒に防空壕に残ることを決意する。
中山さんとは違って、大人なんだけど子供に戻っていくような役で、メリハリの
効いたキレのある演技でした
カーテンコールでは、“また仙台に戻ってこれてうれしい”と長塚さん
次回作も期待してます