さて、この「最終回のやけくそマンガなのだ」であるが、最終回とはいっても、最終回らしい内容では全くなく、フランス帰りのバカ大の先輩が、バカボン家に訪れ、脱力感一杯の珍問答を繰り広げる通常の『バカボン』と、何ら変わらないエピソードである。
扉ページに大きく最終回とだけ書かれた本作は、1ページ目に、ヒトコマだけ、パパの顔半分が描かれ、あとのコマは全部余白。そして、2ページ目のヒトコマ目に、「最終回となると どうもかく気がしないなあ‼ でも なんとかかかなくちゃ・・・・」との一文が添えられ、漸くドラマが始まるという、最終回ネタでさえ、悪ふざけの連続なのだ。
元々、この最終回ネタは、本作が発表される三ヶ月前、「天才バカボンの三本立てなのだ」から、既に伏線が張られており、ラストのコマで、最近の『バカボン』の下品さを指摘する五十嵐記者に対し、赤塚が「もうすぐ バカボンの連載もおわりですから ゆるしてください」と懇願するやり取りが綴られていた。
続く、「篠山紀信のしばらくなのだ」(73年38号)でも、いきなり扉ページに、「どうせ もうすぐ バカボンの連載が おわるんだ‼ すきなことを かいて やめよう‼」という、投げ遣りなメッセージが記されていたりと、偽最終回を意識した演出が、大胆にも施されていたのだ。
そして、「最終回のやけくそマンガなのだ」の本編が終わった次のページに、急報として「赤塚先生が愛読者の「くだらない やめろ‼」の声に「天才バカボン」の連載を断念!」と題されたショッキングな記事が掲載される。
記事の最後は、『バカボン』終了に際し、揺るぐことのない決意を表する赤塚に対し、「編集部はこれからも、赤塚先生に(名和註・連載続行の)説得をつづけていきます。」という一文で結ばれており、翌週も、翌々週も、そしてその次の週も『バカボン』が「マガジン」に掲載されることはなかった。
だが、最終回掲載から四号後(74年1号)に、『バカボン』は、『新天才バカボン』(但し表紙だけこのタイトル)として、奇跡(というより、予想通り)の大復活を遂げることとなる。
単行本収録時に、「またでてきたのだ天才バカボン」というサブタイトルが付けられた本作は、扉ページに、パパのパチモンのような絵が描かれ、その左横に「アレ? パパは これでよかったのかな? なにしろ 三週間も休んじゃったので かきかたをわすれちゃったよ‼ なんとなく キマラないなあー‼」といった前書きも綴られ、またしても、読者をはぐらかしてゆく。
また、「こんなに人気のある〝バカボン〟を やめるはずがないではありませんか‼」という続投の意思を読者に告げた後、最終ページで、「なお 近いうちに もしかしたら次回・・・・いや かならず次回 また なにかやりますから おどろくなよ‼ 読者をおどろかす病気にかかっている女 赤塚不二夫」と、読者に更なるカウンターを喰らわすギャグを企んでいることを匂わせて終わるのだった。
ところが4週後に連載を再開、それもあれがギャグとは!後年竹書房文庫で「最終回までギャグにしちゃうのだ」と解説され、まさかあれがギャグとは。でも人騒がせですな。
ところでその「最終回」と描かれた扉、単行本では黒い扉に白字で「最終回」と書かれてますが、オリジナルではまったく逆、白扉に黒字で書かれてます。知ってましたか?
やはりオンタイムで接していらっしゃった方ならではのトリビアですね😊
勉強になります。
後追いの私ですら、あれほどのインパクトがあったのですから、当時としては、相当なものであったとお察し致します😊
最終回ネタは、「レッツラゴン」でもやっていましたっけ😅