アケボノコミックス「赤塚不二夫全集」第19巻『ミータンとおはよう』に併録されている『キカンポ元ちゃん』(「小学二年生」67年1月号~9月号他)もまた、非日常的世界から日常へと訪れた異分子的キャラクターが、リアルな世界で巻き起こすチグハグな珍騒動をほのぼのとした明るいユーモアで包んだジュブナイル・SFコメディーだ。
遠い宇宙から、元紀少年のもとに突然やって来た謎の生物・キカンポは、不思議な魔法の力を持ったタヌキのような可愛いキャラクター。魔法の呪文「パンプキントン・ポンプシュンマイ・ポーン」と唱えれば、何にでも変身出来、またあらゆるものに生命を吹き込み、元紀の様々な夢や希望を叶えてあげる。
キカンポの不思議なファカルティには、子供達の限りない夢や憧れが反照され、そのファンタジックな広がりを辿った心地好い二次元世界は、後に藤子・F・不二雄が世に放つ国民的名作『ドラえもん』の世界観の先駆けとなり得る生活SFギャグの路床を既に掘り起こしており、子供の想像力を育んで余りある躍動と奔放さに導かれたイマジネーションの鮮烈さも含め、もっと評価されて然るべきシリーズと言って良いだろう。
因みに、アニメ版『天才バカボン』(第一作)に、「さくらちゃん」なるバカボンのガールフレンドが、作品の良心的存在として登場するが、アニメ企画先行によるオリジナルキャラではなく、初登場はこの『キカンポ元ちゃん』だった。(但し、原作版『天才バカボン』にも一話のみ登場。)
役どころは、やはり元紀のガールフレンド。美少女ヒロイン的なビジュアルとは縁遠いイメージではあるが、只唯一の女の子キャラとして作品に華を添えた。
また、「小学一年生」から「小学四年生」までの四誌に一斉連載された徹底ぶりからも、連載開始に当たり、版元の小学館が、『キカンポ元ちゃん』に対し、如何に『おそ松くん』の大ブレイクを継承する人気作として期待を寄せていたかが窺える。
尚、単行本に関しては、連載終了間もなく、曙出版よりほぼ全てのエピソードを纏めた全2巻が刊行されるが、A5版の貸本向けソフトカバーという体裁のため、完全なコンディションでの流通量は極めて少なく、今や全2冊セットで、古書価格二〇〇〇〇円は下らないという超お宝コミックスとして知られている。
せめて、『赤塚不二夫全集』レーベルより単独タイトルでコミックス化されていたなら、作品への評価は勿論、一般的な認知度も違っていたかも知れないと思うだけに、非常に残念な一作でもある。
人気、知名度ともに『キカンポ元ちゃん』よりも『パーマン』の方が圧倒的であったにも拘わらず、そのようなVIPな待遇を用意されていたとは、メディアミックス戦略に目覚めた頃の当時の小学館を考えると、『元ちゃん』もその対象だったのかも知れません。
現に、「小学一年生」から「小学四年生」まで同時連載していましたし、さもありなんといったところでしょう。
その後、『天才バカボン』『もーれつア太郎』の週刊誌同時連載により、スケジュールがタイトを極めた結果、『元ちゃん』の連載、そしてメディアミックス戦略も頓挫したのではないかとも思っております。
それにしても、この貸本向けの単行本のみのリリースで終わってしまったのは、『元ちゃん』ファン(私だけ?)としては残念至極の想いです。
もっと世間一般にその魅力が伝わって欲しかった💦
「もし大人と子供が入れ替わったら」を「元ちゃん」「パーマン」キャラで紹介するというものです。ポンキッキソング「ぐるぐるマーチ」を始め、いつの世も「大人と子供が替わったら」はあるんですね。
さすがに「元ちゃん」キャラが圧倒的に多く、主人公コンビのキカンポと元ちゃん、GFで「バカボン」にも出たさくら、ピヨピヨのおじさん、そして「おそ松」からハタ坊とチビ太が出てます。一方のパーマンは、1号こと満夫・2号ことブービー・3号ことパー子、そして満夫の両親と日下野先生(満夫の担任)だけで、4号ことパーやん・5号こと浩一(この時期では5号もいたのだ)、そしてみっちゃん・カバオ・サブもいません。「元ちゃん」は得したね。
単行本化されても未だに新装されていない「元ちゃん」、現在のところはこれしか見る程度でしょう。