イラク時間06:05、日本時間同12:05。
14年前の2006年、平成18年にバグダッド裁判で絞首刑となったイラクのサダム・フセイン大統領の御霊に対し黙祷!!!
独裁少女サヨ子ちゃん
議案マイナス1 『お父さんとお母さんのバレンタイン』
「お兄ちゃん。 14日は、次の日曜は友達と遊ぶ予定とかは入れないでよ。 あれだからね」
「あ~~、 分かってる分かってる。 忘れないから大丈夫 ♪」
本当にちゃんと聞いて覚えてるのかな… 莫迦兄貴が。
「サヨちゃん。 お兄ちゃんにあれ電話しておいてくれた? 忘れてたかもしれないから」
「言ってはおいたけどね。 …ふん。 今年こそすっぽかすかな。 そうしたらしばくけど」
ある案件。 毎年の家族の年中行事。 いや、私だって勿論下らないとは思わない。 前述の通りすっぽかせばしばく。
私が生まれてすらいない昭和の運動部ではないが、親兄弟が死んでも自分が死んでも必ず行かねばならない所。 両親の代からの、ある有縁の場所への家族全員の結集だ。
まあねぇ… もう家族皆忙しくて、ある年を最後に廃止。 でも悪い事ではないが何かできない。
日にちはそれから翌週令和9年2月14日日曜日。 ウチの地元の三鷹からはそう遠くない都心の、電子マネーや交通系ICカードは元より磁気のクレジットカードすら扱わない現金のみの喫茶店。
時間は昼の2時少し前。 一番人の入りの多い昼食の時間帯を過ぎ一息ついた店内。 両親と私はもう来ていた。 ふう… 兄、遅いな。
「遅いわね…。 サヨちゃん、お兄ちゃん迷子になってそうだからもう一度電話してみたら?」
「いや、大丈夫でしょ。 場所は何度も来て分かるしお店の中か外か分からないとかも中だってちゃんと言っといたから、あるとしたら14時と4時間違えてまだ来ないとかじゃない」
しょぼい。 とにかくしょぼい。 兄はポンコツだ。
自己紹介が大変遅れ申し訳ない。
私は理辺サヨ子(りべ・さよこ)。 平成23年3月4日生まれの15歳。 仕事は立進民主党本部職員だ。 なのだが中学を卒業して直ぐ働き始めたのでは勿論なく、私は小学校を4年、中学を1年、高校と大学を各2年で卒業し今年度4月に採用(※入党はもっと前)されたのでこの年齢なのだ。
因みに一つ年上の兄は標準学年で高校2年だ。 …って来年も2年生かもしれないな。
「お待たせ! 遅れなかったべ」
「1時55分。 5分前に着くなんて随分進歩したじゃない」
「流石サヨ子は俺の妹だけはある。♪ 死ね!!」
「じゃ、注文だ。 ああ、ホットチョコレートの砂糖多め4つ」
これは記憶の限り私と兄が幼稚園入園前後くらいからずっとある何か一種触れてはならない背景のある行事なのだ。 日系2世のハーフのアメリカ人の父らしいいかにもな 「ホットチョコレートの砂糖多め」 の日本人的な繊細さを鼻で笑うアメリカニズムと共にこれ以外のケーキ他の食べ物の注文を、禁じられてはいないのだが到底できないのを匂わせるこの空気。
いわばこれは室町時代の土一揆の「一味神水」か、敗戦直前の特攻の際飛行機に乗る前の水杯だ。
「あ~~~、 美味しい! ここのホットチョコレートの味だけは20年以上か変わらん。 ♪」
「お父さんが日本に来る前のね、 お母さんが小学生くらいからだって変わりませんもの。 ♪」
この段階になり、初めてサーロインステーキを食べた経済大国時代の日本の子供みたいにはしゃぐ両親の姿にどこか渇いた笑いをこちらも浮かべる。 何故うれしい?
「ああそうだった、 サヨ子の選挙の準備はどうなんだ。 気付きゃあもう再来月じゃないか」
「うん。 公選法ギリギリの所まではやれとは党からはまー、言われてるんだけどね」
「バレないように破れ、じゃないのかよ。 党はよ。 当選したら俺の留年をどうにか防げよな」
「分った分った。 だから公示近くなったら酒呑んでひっくり返ってないで証紙貼り位はしてよ」
寧ろこういう場では、純粋に仕事のどうこうでない卑近な話に話題を戻してくれる兄の性格、存在が非常に有難いのだ。 天下国家を語るなどとは最も遠い場所にいる。
でないとただでさえ息が詰まるのが更に完全に窒息しそうになるのだ。 私の家は。
「もう20年、か………。 ふぅ、全く」
「お父さん今、 カッコイイって自分で思ったでしょ」
「ふはっ! お母さんには絶対敵わないな!」
何故、 父も母もとても楽しそうなのだ。 毎年だが特に考えた事は無い。 私はホットチョコを熱いうちに口に運んだ。
「ああ… 美味しい。 ♪ このお店はずっとあってほしいよね。 地域の財産だわ」
「俺は来年選挙権が出来たら、 もう自分の自由で砂糖は控え目で。って言わせてもらうぜ」
「…あれ? 『駄目だ』 って言わないんだな。 お父さん」
「ん? お父さんは、砂糖多め以外は注文するの駄目だなんて一度も言ってないぞ」
兄は勉強ができないだけでなくデリカシーもどこか欠如している。 父がもっと厳しければ家の中はとうに戦場になっているぞ。 「家庭を舞台にした戦争映画」 とかに本当になりかねない。
「そうだよ。 今日の主要議題は、さ。 来月再来月の功徳行だよ。 来月にいつもより念入りにやって再来月は流石に1回お休みだな。 もう選挙本番直前だし」
言っておくと、 「功徳行」(くどくぎょう) とは我が理辺家独特の用語で元は仏教語なのだが、月に一度特に月初めの家じゅうの大掃除の事だ。 何でも曽祖父母の代には既にあったという。
「選挙は月末だし、3、4日土日なら普通にやれるよ」
「いや~~いけない! 本番前に怪我は勿論無駄な体力の消耗も良くない。 次はお受験よりももっと実戦なんだぞ」
「ああ、解った。 お父さんありがとう。 その代り当選した後の5月のは一生懸命やるよ」
幼、小、高、大それぞれのお受験の前もそうだったが父の愛情はどこか沁みる。 いや、むせる。
「そういや、今日バレンタインだよな。 今年は曜日的に学校休みで無いからすっかり忘れてた」
ウチでは他の家の様なバレンタインは存在せず、 私も母も父と兄にすら贈った記憶が全く無い。
まして私は学校で男子に贈った事など当然無い。 兄は毎年大量に貰うのを帰宅前に皆喰ってた。
「お父さん、 ウチでバレンタイン禁止ってやっぱり元が変質した日本の劣化した習慣だから?」
「全然違う! サヨ子が…可愛過ぎるからなんだ! 覚えてないか。 サヨ子が幼稚園に入園する前の年の2歳だよ。 お父さんとお兄ちゃんにバレンタインのチョコくれて、覚えたてのひらがなで 『おとうさん だいすきです』 って手紙が中に入っていて…嬉し過ぎてキュン死しそうになったからだッ!」
「あの時大変だったのよォ。 お父さん嬉し過ぎて本当に心臓が痛くなっちゃって家の救急箱にもその為の薬無いから救急車呼ぼうとか騒いでたんだもん。 だから貰うんじゃなくて家族みんなでホットチョコ飲むのに変えたの。 ほんと、お父さんの感情表現っていかにもアメリカ人だから」
「……。 単にお父さんその頃からお酒の飲み過ぎと脂っこい物の食べ過ぎだったんじゃない?」
「厳しいなァ。 いや本当に嬉しくて嬉しくてさ… 嬉し過ぎて心臓の筋肉がつったんだ。 本当涙出たよ。 あの時の手紙は今でも取ってあるぞ」
「汚点だわ…。 でもそれで学校や職場の男がみんな嬉し過ぎてキュン死して私が世紀の虐殺魔にならなかっただけ良かったと考えようかな」
「そうだとも! 選挙区のオトコドモには明日チョコばら撒けよ。 ♪ お金ならお父さんが幾らでも出してあげるからな。 うん。 ♪」
「もう…。 また子供扱いするんだから。 お金なら政治資金で処理できるからお父さんの財布は当てにはしてないわ。 ♪ でも、ありがとう」
私も父も党も。 公選法も政治資金規正法も守る気なんて最初から無いのが、既に先進国の座から転落して久しい現代日本の姿だな。 おぞましいが同時にこういうのは面白い事なのだ。
ずっと訊こう訊こうと思っていても訊けないままだった我が家の長年の謎はこれで解けた。
父と母なりの、これが一番あるべき形のバレンタインデー、なのだろうな。
若い頃の一番幸せだった日々の記憶を忘れまいと必死に保とうとする。 これで良いのだ。 ♪
議案マイナス1 『お父さんとお母さんのバレンタイン』 完
次回予告
正義は人の数だけあると誰かが言った。だが私は目の前にある私以外の正義を悪と断じこの場で
そいつが二度と立ち上がれないくらい徹底して叩き、踏みつけ完全に討ち滅ぼさねばならない。
嫌な仕事だ。 でも誰かに代わってもらおうなんて思わない。 私以外にはさせない。
次回 序 『反抗者はしばけ!』
しばかれたくなければ、どいていろ。
(え・モザイクカオリ)
©小林拓己/伊澤忍 2680
独裁少女サヨ子ちゃん
議案10 『美こそ罪』
「お兄ちゃん、学校帰りに本屋さんで 『週刊エイジ日本語版』 と 『週刊俗悪』 あったら買ってきてもらえる? お金はあげるから」
「いいけどさ。 何かえらい記事でもあるのか?」
「まあ…ね。」
そもそも活字を全く読まない兄が知る由も無いが、上記二誌は年末 「美し過ぎる女性政治家」 特集を毎年必ず組むのだ。 両誌とも市役所、議会事務局に取材許可を求める連絡が来ていたとの報告が上がってきたので予告も含め多少リサーチの必要がある。 被写体にしたいのは誰だ?
それにしても、私の周囲は敵も味方も更には選挙の洗礼を受けていない論客といった手合いも含め何故なのか美人が多いんだよな。 以下、相当する 「濃い」 女達を列挙、紹介しよう。
アイリス・ミン
歌手。 女優。
1975年(=昭和50年)生まれ。 51歳。 13歳で故国を離れ単身日本に渡った後プロデビュー。 34歳の時から公益財団法人日本ユニメコ協会親善大使、今年度からは我が三鷹市の参与職と同時に公式イメージキャラクターを務める。 国籍は日本には移さず一貫し故国のままとしている。
通り名は 「慈善の女王」「ロココばばあ」。
まあこれら名の由来は後述するのだがとにかく日本に合わせない、常に日本批判が鋭く報道サイドからは好かれるタイプで、影響力は大きい。
旧民本党政権終盤の11年12月に都議会で可決、成立した反同人の東京都言論表現良化条例、所謂アイリス条例も彼女と報道の二人三脚無くしては生まれ得なかったとさえ言われる。
「日本には慈善の為の寄付の文化が根付かない。 だから日本は世界のどこからも信用されない」
平成21年、親善大使任命直後の上記発言は有名だがこの翌々年起きた東日本大震災で同協会が
「被災地の女性達に清潔な衣類や寝具を送りましょう。 その為にユニメコ募金をお願いします」
と公式サイトに被災地の写真入りで広く訴え掛けていたにも関わらず間も無くしてあろう事か!
「集めた募金が必要額を上回った場合、余剰の募金はアジアやアフリカの女性達の為に用います」と発表しネットは大炎上。 ここに来てユニメコが「その体質を露呈した」と国会や地方議会でも問題化し結果としてアナログ空間への延焼誘爆は週刊誌程度に抑えられたが途上国での慈善活動、人権活動に積極的に携わってきた「意識の高いタレント」としての彼女のイメージは凋落した。
それ以前も 「アイリスハウス」 の俗称で知られるロココ様式(※本人は『ロココじゃなくって後期バロック様式』と主張し譲らないが)の応接間でアジア、アフリカの貧困層女性達への経済的支援の必要性を熱弁し失笑を通り越して平成の大不況で一部は生死の境を彷徨っていた日本人達の強い怒りを買った。
基本本人は天真爛漫で善良なキャラクターを志向しているようで 「不思議ちゃんです」「難しい日本語はよく解かりません」 が口癖だが来日し概ね40年が経過し、それでもTV出演時は未だに訛った発音の日本語なのと都心のブランド店や高級喫茶店で 「全然訛っていない流暢な日本語で話すのを聞いた」 という証言が絶えず 「慈善の女王じゃなくて偽善の女王ではないのか」 等手厳しい批判も一部で存在する。
合わせて4人の息子、娘は美男・美女揃いで額面上超名門校に通う秀才…となっているが一説には皆我が家の兄の様な同情すべき性質の持ち主とも言われている。 真相は不明だ。
春麗 (しゅんれい、チュンリー)
財務大臣。
1977年(=昭和52年)生まれ。 50歳。 2007年最年少の30歳で参議院に初当選し以後4期。
選挙ポスター、選挙公報等では 「春れい」 とも。
通り名は 「緊縮娘」「ジャージ」。
元々はスポーツメーカーのモデルで水着やジャージのカタログで彼女の顔は広く知られており後にその美貌を生かし民放のニュースキャスターを経て政界に転身した経歴を持つ。
当時の人気は大変なもので彼女の街頭演説の度に中年の男性有権者達が手に五星紅旗を振りながら
「ハイル・チュンリー!!」
と声を揃え絶叫しとにかくどこへ行っても大騒ぎだった。 ここは見習いたくなる。
初当選後、当時は現在の立進民主党ではなく民本党の時代だが若手の筆頭としてめきめきと頭角を現し翌々年09年政権交代すると実質的に報道向けの党の看板の役割を担い翌10年早くも伊達直人内閣の緊縮財政推進特命担当大臣として入閣する。特に旧与党自由の党の力の源泉だった農水業の他先端技術、基礎研究分野の予算に大ナタを振るい
「日本農業最大の敵」「理系キラー」
と当時恐れられた。 彼女がいなければこれら分野で日本は今の4倍は軽く稼いでいたという。
国籍は生まれた後中国籍→中国と日本の二重国籍→日本籍→中国籍(現在)と何度か変遷している。
一昨年の政権交代の時から江田憲子内閣の財務大臣だが以来日経平均株価は下がり続けている。
今年の私の市長選では選挙期間中3度も応援演説に駆け付けてきたので多少の恩義は感じている。
田中麗
杉並区長。
1980年(=昭和55年)生まれ。 46歳。 杉並区議1期、都議3期を経て22年から現職。
やはり選挙ポスターや議場の標柱(名札)等では 「田中れい」 とも。 この日本語の名前は 「通名」 で元々の民族名もあるが以後ここでは一貫し田中麗で通す。
通り名は 「ミス公金横領」。
この通り名の背景について詳述は避けるが彼女の区長就任以来、全国初と注目された生活保護世帯の小中学生向けの年間30万円の塾費補助、学校給食の食材納入を巡る一種反社勢力とも呼べる 「スカスカ社長」 とその親族や取引先との間の不透明な契約、他不可解な金銭のやり取りや人気が高かった前区長の山田宏美への激しい憎悪から区の積立金を最初の1期で使い切りその後の財政は区債発行に全て頼り切るなど行政能力では疑問符が付く。
ただ、とにかく笑顔が爽やかで人脈面でも自由の党の地元選出代議士の石原伸代(党都連会長。超低能女)とパイプがあり議会運営では協調姿勢を取る等バランス感覚はあるので立進党にとっては価値の高い人物と言えよう。
西田優美
三鷹市議会議員。
平成9年(=1997年)生まれ。 29歳。 令和5年、25歳で市議に初当選し以後当選2期で無所属。
吉田学校33期卒。
選挙ポスター等では 「西田ゆみ」。
通り名は 「ウヨクのユミ姉」「令和の炎上娘」「ミス失言」「ナパーム女」「不発弾」。
その国家観か若しくは彼女の生まれ持っての性質故にかとにかくマスコミに叩かれ大炎上しやすく
「専業主婦だっていいじゃないですか」
「私がずっと独身でいるのは、子供に私の莫迦が遺伝したらお国の為にならないからです」
と議場で言えば男尊女卑だ。軍国主義だと即刻大炎上。周囲に延焼誘爆し彼女自身も大新聞社、TVのパパラッチに1年以上追い回されたくらいだったが(その中には私の当選に真っ先に駆け付けてリポートした真生も含まれる)それでも何事も無いようにケロッとしているので余計にアンチ勢の怒りを買った。 要するにアイリスとは真逆の思想の不幸な天然系、不思議ちゃんなのだ。
その余りの奔放さを前に彼女のいわば政治の師で市議会自由の党幹事長の吉田武一も彼女の初当選した後の入党を見送ったほどだ。 自党への巻き添え被害のリスクを考えれば妥当な判断だ。
しかし彼女の出自、経歴には私と多少似通った部分があった。 日本人とロシア人のクォーター(※母方の祖母がロシア人。だが本人の外見は完全に土着の日本人風)で幼少の頃から美貌、学力では抜きん出ており高校と大学では周囲から何度も飛び級、早期の進学と就職を勧められたが本人は固辞し最後まで標準学年で通している。
父の西田拓(にしだ・ひらく)教授は国学者で古神道と日本各地に残るその残滓の現地調査では世界に名を知られたが大学上層部がリベラル派で固められていく過程で右翼の彼はゆみが高校3年の時に職を追われた。
それでも絶望、遁世などせず神職や塾講師、家庭教師等様々な職で食い繋いだ辺りは尊敬できる。
他にもロシアンハーフで美女アスリートを思わせる容貌の 「ユミ姉はは」 や耽美な美青年の 「ユミ姉あに」 といった具合に家族も皆個性的だ。
実は今年の市議選ではトップ当選した自由の党のバカボンに次ぐ5700票余りを得票しており逸材なのではという声もある。 思想はともかく敵か味方かの識別は保留し今は様子見としよう。
吉田愛子
都議会議員。
昭和57年(=1982年)生まれ。 45歳。 平成21年(=2009年)に26歳で都議に初当選以来、途中29年 「小林旋風」 で落選し4年の浪人生活を送ったが次の令和3年の選挙で返り咲き現在4期。
選挙ポスター等では 「吉田あいこ」。
通り名は 「美し過ぎる都議」。
実際、彼女は以前からいる欧米圏の著名な女性政治家に比肩し得る日本の美人政治家の嚆矢でありこの後保守革新問わず各党が美人候補獲得に躍起になった事を考えるとその存在感は小さくない。
自由の党では典型的な二世議員だがその政界入りのいきさつはかなり特異であり、父の吉田武一が三鷹市議会から都議への転出を党都連から求められていたのだが彼がそれを固辞し結果長女の彼女が三鷹選挙区から立候補し議席を得るという結果となった。
私生活では謎な点が多く夫は引っ越し族の国家公務員で自身は選挙区に貼り付いている必要がある為夫婦生活でも別居の期間が長く、非常に優秀な子供が2、3人いる?と言われるが詳細は不明だ。
もう少ししたらM.Y.P.S.と東部同盟と真生に本格的な調査を命じその身辺を徹底して洗う予定だ。
いけない。 よく見たら日本の政界の話なのに紹介した中で土民は吉田愛子一人だけしかいない。
ニューヨーク サンジェルマン・パブリッシング社。 週刊 『エイジ』 電子版編集部。
「会長臨席! 総員起立!」
「楽にさせたまえ」
「休め!」
「ガレ。 年末特集の… 『世界の美し過ぎる女性政治家百選』 は進捗状況はどうなっている」
「はい。 南北アメリカとロシアと東欧の枠は大体選び終えましたが東アジアの枠は選考中です」
「資料を見せろ。 ロシアは体育大臣のシャラポワと司法大臣のポクロンスカヤ…まあ順当だな」
「今年から調査の母数を増やして年代や地区のばらつきも補正しましたがさほど変化は無しです」
「東アジアで、日本と日本同様に普通選挙になっている韓国だとどんな候補が上がっているのだ」
「中国系で財務大臣の春麗と三鷹市議の西田ゆみ、あと最新で同市の理辺サヨ子市長…ですね」
「最後の一人は候補から外せ。 まだ子供だからな。 大人の面倒に巻き込んじゃいかん」
「御意」
議題10 『美こそ罪』 完
次回予告
裁判無しでの日本人商店主虐殺に端を発した移民、日本人、更には任侠と警察署と自治会と商店会まで巻き込んだ騒乱の発生。 必ず起こるとは予想していた。 だが起きた今、どうするのが最善の道なのか⁉
焼き払われる家々、道に転がる死体。 嗚呼、こんな三鷹に誰がした? って有権者じゃないか!
次回 議案11 『土民狩り』
国民主権は、今死んだ。
From now I want to it leave to Judgement of huture historans.
真実を直視せよ。
©小林拓己/伊澤忍 2679
独裁少女サヨ子ちゃん
議案9 『独裁者対熟練工!』
令和9年9月27日月曜、仏滅。 議会の第3回定例会の会期ももう終わりに近いというのに。
このまま波風立たず何も無く平穏に終われば良かったのに、終盤で最悪に面倒な奴の番が来た。
特定用途補助金・助成金審査特別委員会で。味方側にとっては喉に刺さった鯛の骨の様な奴だ。
いつものように議長の一声。 嫌なものだが試合開始、だ。
「それでは、 次の通告者。 24番 吉田武一君、登壇願います」
「議長よりご指名を頂きましたので通告に従い質問をさせて頂きます。 宜しくお願いします。 この仕事に就いて40年の老いぼれ、老害ではありますが若くしてこの道に進まれた市長にお伺いします。 今の市政に於いて市長の仰られる 『多様性』 は余りにも恣意的な解釈で運用されておりごく普通の市民が皺寄せを強いられるのが常態化しており特定特殊な利権に預かる方々は批判を受け都合が悪くなると 『差別だ』 とさえ言えばどんな反社会的行為も罷り通る傾向が強くなってはいないでしょうか」
「市長 理辺サヨ子さん」
「ご批判は真摯に受け止めますが吉田議員のご質問はあまりにも範囲が広く大雑把過ぎはしないでしょうか。 抽象的に過ぎるのでもっと具体的な、個別の案件等々についてご質問願います」
「24番 吉田武一君」
「あまりに克明な、詳細な具体例一つ一つを最初から市長に突き付けては非常にお困りになられると思いまして、先ずはワンクッション置いて勿論これ以降お話していきます」
「市長 理辺サヨ子さん」
「私が未熟だからと吉田議員がお手加減をされる必要は全くありません。 寧ろ私が未熟であれば未熟なうちに完全に倒し、吉田議員の味方側の将来に至る安寧を図るべきでしょう。 ご質問を」
「24番 吉田武一君」
「お心遣いどうも有難うございます。 では質問の本題に入らせて頂きますが日本国憲法では 『任侠権の独立』 が明記されており自主憲法制定を結党当初より強く主張する我が党も現状ではそれに真っ向から反対し即刻無くせとは言えません。 しかし、ここで言う 『任侠権』 の主体足り得るのは司法官憲から公認を受けた職業的な侠客だけであり市長が就任後に相次いで助成金支給対象に加えられた暴走族や舊車會や全グレ等はこの職業侠客に相当せずこれら支出の決定は憲法違反で無効となるべきものではないでしょうか」
「市長 理辺サヨ子さん」
「只今のご質問にあったうち、市から助成金を月300万円支給している東部同盟にしても同団体のメンバーが兼任している舊車會にしても全グレは 「盃」 の有無で違いがあるのみで立進民主党指針、国連非常勤特別報告者コメントでも暴力団と変わらない権利、権限を持つものとされており市の支出に違憲性違法性はありません」
「24番 吉田武一君」
「市長、 よくお聞きになられていなかったのですか。 私は全グレの話を申し上げているのではございません。 全グレだけでなく青少年主体の暴走族も中高年主体の舊車會もそれ以外の色賊、愚連隊等も含めて申し上げています」
「市長 理辺サヨ子さん」
「…? どういう事でしょうか。 確かにご質問で全グレと仰いましたし私は色賊、愚連隊の話は出してはおりません。 吉田議員は急にお話を変えられてはいませんか」
「24番 吉田武一君」
「ふっ。 よくお聴きになられて下さい。 途中 『等』 と確かに私は申し上げました。 ♪」
「市長 理辺サヨ子さん」
「そもそも! 法解釈としてこれら助成金支出は国連非常勤特別報告者コメントに照らし合わせても正しい歴史認識として世論のコンセンサスを得ています!!」
「24番 吉田武一君」
「うむ。 うむ…。 なるほど。 市長が仰った 『国連非常勤特別報告者』 って実は私もその資格持っているんですよ。 今から8年ほど前にネットで登録させてもらいましてね。 ♪」
いつだって、こうだ。 味方の報道や学者や芸能人を相手に話するのとあまりにも違い過ぎる。 団塊? ポスト団塊? 神は何故かくも取り扱いに困難を来たす対象を作り世に送り給うたか。
吉田武一(よしだ・ぶいち)。 昭和29年生まれ。 73歳。
三鷹市議会自由の党議員団幹事長で昭和62年の市議会議員選挙に32歳で初当選以来11期連続当選の超ヴェテラン。 通り名は 「政治の鉄人」 「三鷹の鬼」。
これまでに議長を計8回、副議長を5回、文教委員会や町づくり環境委員会といった常任委員会、外環道委員会といった特別委員会の委員長を数えきれないほど経験しており今数えている最中だ。
長女の吉田愛子はやはり自由の党所属の都議会議員で三鷹市選挙区選出。 「美し過ぎる都議」 で知られる。
私が外来の新たな支配者ならばこの父娘は差し詰め未だ恭順の意を示さず抵抗を続ける在地の土豪か地侍の血筋といった所か。
だがこの父娘、唾棄すべき旧弊の象徴といった存在ではなく立場の差云々を度外視すれば学ぶべき点の多い貴重な存在だった。
現に三鷹市にしろ隣の杉並区にしろ自由の党の議員たちは半数強が二世、三世といった世襲議員であり 「家業」 としての仕事の流儀や思考様式等を学ぶには大変有難かった。
特に父武一には絶賛すべき、だが雑誌や専門書には未来永劫載る事が無い特異な業績があった。
「吉田学校」
と非公式には呼ばれる、不定期の私的勉強会を主宰し将来的に政治家を志す若者は勿論議員、首長といった現職政治家までもがその教え子に名を連ねる確かな技術継承の仕組みを持っていた。
奴の市議初当選の翌々年平成元年には産声を上げ、そこから得られる知識技能等教育水準は政党が通常は各都道府県連、委員会で運営している政治塾など足元にも及ばないほど非常に高く、全国に散らばる数百人の卒業生の結束は固くそれ自体が見えない脅威と充分呼べるものだった。
奴は当選回数を重ねた40代後半くらいまで都連、更には永田町の党中央から何度も都議や近隣の市区長、知事(※公選法上、議員と違い首長は当該選挙区の住民である必要は無い)更には国政への転出を強く求められていたにも関わらずそれを固辞し続け市議でい続けたのは決して落選のリスクを負いたくない、狭い範囲で 「お山の大将」 でいたかったなどというセコい計算ではなく党、政界の未来の為、内部的にしろ外部からの力によるものにしろ淀み易い政界に良い人材を供給する役割を果たしたいという思い故にだった。
この吉田学校を、またこれを40年近く続けてきた奴をどう表現すべきか。 正にかつての日本の産業の屋台骨を支えた町工場での、熟練工が油まみれ、粉まみれになりながら師と弟子の修行僧の如く部下達に技術を伝えていった日本型経営の政治への移植であり奴は政治における 「神様」 級の熟練工に他ならなかった。 これは対話ではない。 独裁者と熟練工との戦争だ。
奴を失脚させ社会的に消しても、又は極論物理的に消去しても教えを受けた弟子、孫弟子それ以下は無限に増え続け日本政界における奴の教えの血脈の駆除は永久に不可能だ。
この日の会議より数日後、 市長室。
「加戸尾、 M.Y.P.S.警備課と東部同盟に頼んでおいた吉田武一と家族の行動調査は終わって?」
「はい。 期限の先週までで全て終わっています。 ただ…」
「ただ? 何か見過ごし難い問題でも起きたの?」
「いいえ。 調査自体はできていて日常の行動の大体は把握できましたが、要員の問題です」
「調査に当る要員が? 年寄りのくせにあんまりにも活動的で尾行がきついとか感想が来たの?」
「体力的な問題ではなく、対象の行動から身辺を探っていく段階が進むほど心理的につらい、と」
「そう… 報告の物自体は出来ているの?」
「はい。 それについては問題無く」
「そうね… 調査に当った要員も疲労しているだろうし娘の吉田愛子の方の本格調査はまだ後ね」
「御意」
議案9 『独裁者対熟練工!』 完
次回予告
「アメリカを見ればいい。 保守の女はみんな美人でリベラルの女はその正に真逆じゃないか」
私にしばかれる覚悟があるようね。 現実にそうであっても口に出せば即刻しばかれるのは当然の帰結よ。 でも周りを見渡すと、認めたくないけど保守本流を標榜していてそれに美貌も加わる女が多くて脅威を感じるわ。 でも言えるのは、その美貌という武器は使わせない。 使わせる前に葬り去るのみ。 が私の流儀。 逆に味方の女の美なら大歓迎。 愚かなオトコドモの票の源泉、だもの。 ♪
次回 議案10 『美こそ罪』
この罪、私への量刑は重いと見たわ。 ♪ でもそれ以前に何人であれ私を裁かせはしない。
From now I want to it leave to Judgement of huture historans.
真実を直視せよ。
©小林拓己/伊澤忍 2679
独裁少女サヨ子ちゃん
議案8 『赤と黒』
4月25日の市長初当選から1四半期、3か月が経った。 気付けばもう7月も終わりではないか。
月一くらいでザ・反社!な裏金専門の金庫番と会う。 政活費、政調費といった類の政治資金系や市長交際費のような合法的な金の出し入れは党なり市なりでできるから良いが違法、特に反社会的な金の出し入れにはどうしてもその道の専門家が必要となる。 党中央と都連に推薦され最適任者として私が選任したのは顔も声も性格も超気持ち悪い目の前のこいつ。
通り名は 「スカスカ社長」「炭水王」。
これら通り名のいわれは後から話す。
民本党政権で平成22年から23年まで1年強内閣総理大臣を務めた伊達直人の党派活動・ゲバ棒戦士時代の後輩で日本ユニメコ協会に毎年多額の寄付をする等意識の高い経営者として業界では通る。
「市長のその目で真っ直ぐ見据えられると、何か凄く怖いんですよ」
「私の目が青いから?」
「そうじゃないんです。 それ言ったらレイシスト認定されて業界から永久に排除されちゃいますから。 いやね、私がどこかでヘマ打ったりしていつか絶対見捨てられるんじゃないかと」
「信用されてないのね…。 この世界非合法な仕事だからこそ逆に互いの信用は絶対に必要よ。 『氷の瞳とドライアイスの心』 はそもそも敵が付けた仇名なんだし私をもっと信用なさい」
「滅相も無い! 勿論私は市長を全面的に信用しておりますよ!! 私のこれまでの仕事で得られたノウハウは全部市長の為に使わせてもらいます」
ゲバ棒抱えていた頃からセコい事以外何もしてないお前の持ってるノウハウって一体何だ?
こいつの通り名の 「スカスカ社長」 とは、私が生まれる前の平成21年に起き流行語大賞にもノミネートされた消費者被害の 「スカスカおせち」 事件と、会社を畳みすぐに別個に再開しその1四半期後の桜の季節に性懲りも無くまた起こした 「スカスカ花見弁当」 事件による。
普通に言って社会の屑だが、こいつは立ち位置的に貴重な存在だった。 福祉予算、国際友好予算の増大で教育費特に学校給食関連の予算が年々大幅に削られ大改革を迫られる中こいつの会社の冷凍食品が三鷹市で圧倒的な占有率を誇っており隣接自治体の武蔵野市、小金井市でも然り。しかもそこは先輩の伊達直人の選挙区たる衆議院東京18区だから何をかいわんやだ。
更に、やはり隣接自治体の杉並区でも革新リベラル系の区長の田中麗の肝入りで(もうほぼ当確な)受注獲得に動いているというのだから恐れ入る。
こいつの所の製品。 冷凍で炒飯でも餃子でもピザでも牛丼でも品揃えはまあ豊富だがとにかく
「高い」 「不味い」 「体に悪い」
ものの見事にこの三拍子だ。 犯罪だ。
1980年代英国で英国病治療の為断行されたサッチャリズムでも行政改革、コストダウンの一環として学校給食への冷食始めインスタント食品の積極利用は行われたが 「高い」 が加わりもはや完全に大義が無い。 保護者の支払う給食費の引き上げも続き各家庭の家計を更に追い詰める。
そもそも三鷹市は、特に私が通ったさくら小は給食が美味しい事で全国的に有名だったのだ。
塩焼きそばと揚げパンは定評があった。 店頭売りの無いヨーグルトはその美味がもはや神話だ。
それをこいつは一人で完全にブチ壊した。
具材をケチって米系、小麦系の分量だけが過多なのを異常な程大量の調味料で誤魔化しているのでとにかく炭水化物過剰、塩分香辛料過剰で平日毎日喰うだけで健康破壊一直線の刑罰レベルだ。
こいつのもう一つの通り名の 「炭水王」 はここから来ている。
「冷食王」 「美食王」 と後世の歴史家から絶賛されたいという気持ちは微塵も感じられない。
なので移民のイスラム教徒やユダヤ教徒の児童向けの無料のハラール、コーシャ給食を食べたいと
「お願いだから改宗させて下さい!!」
と中東・アフリカ各国の大使館に必死になり問い合わせる日本人児童、保護者が続出し大使館側で
「大使館でイスラム教、ユダヤ教への改宗、入信の手続きや儀礼等は行っておりません」
と新聞広告や公式SNSで伝えるまでの事態となった。
もう既に健康被害が表面化しており立進党市政でなかったらとうに報道が連日伝えているだろう。
「近いうちに社長の会社のごはんを私も食べてみたいわね ♪」
「…市長も、 相当な命知らずでいらっしゃる。 すぐ傍で救急が待機するなら喜んで」
噴飯だ。
「加戸尾。 来週府中まで行くのにキャデラックと運転手を用意して」
「御意」
今月はもう一つ懸案があるのだ。 日侠組のデブ議長が警大を卒業して地元に帰ってくる。
私の当選よりも前に国家公務員総合職採用者待遇で4月きっかりに警察大学校の初任幹部科に入校させておいたのだ。 だが現役の暴力団組長をいきなり警視正の階級で採用させしかも額面よりも更に二階級上の警視監の給料を払わせるとは私も随分なやり方をするが、その時点ではまだ一介の党職員だった私のこの案を通した立進党も立進党だ。
卒業式の来賓で私だけが呼ばれると流石に通常の試験採用の学生達に非常に強い違和感を与える為カモフラージュに府中市の近隣自治体の立進党や移民党系の首長も何人か招待された。
「♪ああ伝統を、受け渡す…」
校歌にある伝統は今死んだ。 その伝統は悪魔若しくは死神に受け渡されここにはもう無い。
卒業生総代、課程学生長として学校長の前で祝辞を読み上げるデブ議長の声は自身に満ち溢れてはいるがしかしどこまでも反社会的な響きを持ち憚らない。
「とても立派な祝辞だったわ…。 それに、ちょっと痩せたんじゃない?」
「いやぁ~、♪ 組に入って直ぐの部屋住み修行以来のきつさでしたよ! もうやれませんねェ」
「よく言う! 一般採用のキャリアは勿論教官まで召使いにして何不自由無い毎日だったくせに!」
「あ~、それを言っちゃあおしめえよぉ。 もう、お嬢には敵わないなァ。 でもきつかった!」
「ま、20何年ぶりの勉強と運動の毎日で大変だったのは認めるわ。 私の下で働く為のね ♪」
「そう! だから早寝早起きも汗だくの柔剣道もお嬢の為に全然平気だったんでさぁ ♪」
通り名は 「デブ議長」。 いかにも都合の良い時だけ調子の良さそうな屑男だが、実はこいつは日本の任侠史上かなりエポックメイキングな奴なのだ。 とにかくアイデアマンで先見の明があり
「馬鹿野郎!! ウチは大卒しか入れねぇ!!」
以上は十数年前の流行語大賞にも選ばれた。 フル規格の暴力団で盃に 「学歴制限」 を設けたのは奴が、日侠組が全国初だ。 国政レベルで保守政治の長期化、自分達が生きる渡世の先細り傾向を誰よりも早く感じ取り衰退を防ぎつつ必死に黄金時代の再来を待ったその眼、胆力は買いだ。
「でも何で 『日本任侠道本庁』 なんて役所みたいな名前なの?」
「それはですね。 役所の様な名前だともう絶対従わないといけないと誤認してお金をすんなりと払ってもらえるからです ♪」
「じゃあ後半の 『さくら組』 は何で 『さくら組』 なの? 役所の次は幼稚園みたいだし」
「先々代の初代が、地元でしてね。 先々代御自身もそうだったんですがさくら小とさくら中のOB、OGを中心に組を立ち上げたからでさあ ♪ 硬軟織り交ぜての先々代渾身の命名ですよ」
「…聞くんじゃなかった」
「お嬢、そう仰らないで下さいよ。 みんなお嬢が大好きなんですから」
「ま…内心の自由は決して奪えないし私を好きでも嫌いでも構わないわ。 議長には来月には新編する三鷹青年警察署の、M.Y.P.S.の初代署長をやってもらうんだし仕事上の信頼関係は絶対持てるようにするわ。 その点は心配要らないから」
そうか。 これからはこいつの通り名は 「デブ議長」 じゃなくて 「デブ署長」 なのか。
情報を更新しておかないといけないな。
「そうでさあ! M.Y.P.S. う~~ん、いい名前ですわな。 『ムカつくヤツはパクってシバく』 私や子分の流儀にぴったりでさぁな。 お嬢の為に絶対いい仕事をしますよ!!」
「いい心掛けね。 額面上は警視正で所属長の大規模署長配置だけど権限上2階級上の警視監待遇だからもうこれ以上偉くできないわ。 これより上だと警視総監と警察大臣しかいないもんね」
「いえいえ、 私はお嬢の為なら一番下の巡査で出入りの敵に撃たれて死んだって構いませんわ」
「ああ、取材の真生です。 議長、警大卒業に当って何かお言葉を… ってお嬢。 すみません、お話し中でしたか。 では私の取材は後程」
「いや、もう話は終わったからいいわ。 真生さん、議長を目一杯男前に撮ってあげて。 ♪」
ヤクザとパパラッチの臭いが混じってもう今にも吐きそうなくらい最悪よ! 今日は速攻撤収!!
しかし、私自身が選んだとはいえ反日、赤旗の赤と任侠、黒社会の黒のコンポはとにかくつらい。
議案8 『赤と黒』 完
次回予告
「僧侶と政治家は年を取れば取るほど値打ちが上がる」 誰? 今この場で本気でしばかれたいの? 意味も無く只古くなっただけなら産廃よ。 いや、それは産廃に大変失礼ね。 再利用すらできない癌よ。 「先生」 と呼ばれる職業には…ありがちな事だけど政界はそれがつらすぎる。
だがここでちょっと待った。 無駄に年を取っただけじゃない、敵として相応なしかし面倒な奴が現れた!
次回 議案9 『独裁者対熟練工!』
できるものなら、 出会いたくなかった。 でも出会ってしまった…。 とても、 つらい。
From now I want to it leave to Judgement of huture historans.
真実を直視せよ。
(え・伊澤 忍)
©小林拓己/伊澤忍 2679
独裁少女サヨ子ちゃん
議案7 『八年前』
「ふぅ………。 帯刀証明とコンシールドガンの案件は今月分あと2件をやれば終わりですね」
「もう6時だから切りの良い所までしたら上がるわ。 加戸尾、終わったらお茶を入れなさい」
「御意」
人権擁護団体や移民自治組織の武器所有を最終決済し私達二人はその日の仕事を終えた。
「市長、どうぞ」
「もう仕事終わったんだからその『市長』って呼び方止めてよ。あと敬語も」
「ああごめん、理辺さん…」
「だから! じゃなくって、サヨ子って呼んで♡」
「ふぅ……… 早く法務省に戻りたいよ。 つらい」
「もう少し我慢なさい」
カップの中の紅茶を半分ほど飲んだ所で、 こいつを副市長に任命した時から見せたかったのだが本棚からさほど古くないアルバムを引っ張り出し持ってソファーに戻った。
「一緒に見なさいよ」
「…卒業アルバム? いや待てよ僕達は四修で中学行ったから小学校の卒業アルバムっていうのは無いんだよな」
頁を開け、昔ながらのフィルムの中に挿し込まれたプリントを見せ指差す。
「これ、覚えてる? 私達の一番、幸せだった頃…」
「? これは…学校の裏山だっけ。 サヨ子ちゃんが水色の縞のお洋服なのはさくら小の3年の時かな。 こっちは『花畑と左』の読者ハガキの懸賞のTシャツかな。 随分前だ」
「そう。これは横浜からこっちに引っ越してくる前の小学校の制服だから…。 うん。転入して暫くの頃ね。 『花畑と左』のTシャツは平成31年、いや夏だからもう改元された後で令和元年かな。 夏休みに私の家でお泊り会したの。 楽しかった。 もう8年も経つのね」
「鳥と帆立とごぼうの炊き込みご飯作った。 凄く上手く出来た。 美味しかったの覚えてる」
「でもその後に加戸尾くんは、私の尊厳を土足で踏み躙ったわ。 許すけど絶対に忘れない」
「何? そんな事したかな?」
8年前。 令和元年即ち2019年の7月下旬だった。 両親、祖母と大人までもが絶賛する味に仕上がった炊き込みご飯を食べた。 その後も食後のお茶、デザート、お風呂…とお泊り会の主要な関門を一つずつクリアしていき最終関門だ。 「寝る」 だ。
「歯磨けよ!」
「だからお父さんッ…! さっきお風呂で 『皮剥いて洗えよ!』 もそうだったけど何でそんな事言うの? 失礼だって分からないの!?」
「流儀だ♪」
「僕も、おじさんに言われなかったら歯磨くの完全に忘れていたよ♬」
「全く…! 加戸尾くん。 今夜寝る所を案内するわ」
「広い家だと行き来するだけで大変だね」
私は迎撃態勢を固めていたのだ。
「ほら。 大人二人でも余裕で寝れる大判の夫婦布団出したの。 今夜はこれで寝るの♡」
「…おじさんのお布団が無いみたいなんだけど」
「ウチのお父さん犯罪レベルにイビキがうるさいから一番遠い防音仕様の寝室よ。 規則なの」
「それだと僕は、サヨ子ちゃんじゃなくておじさんの隣で寝る方がいいな♬」
「??? …なっ!!」
「ウチのお父さんもめちゃくちゃイビキが凄くてね。 体質的に夜静かだと寝られないんだ」
私はこの男に、加戸尾に精神的に敗北した。
「なあ… 加戸尾君、もう寝たか」
「いや、 まだです」
「ウチの娘は、サヨ子は内心嫌いか? やっぱガイジンで青い目って気持ち悪いか?」
「それは全然ありません。 寧ろサヨ子ちゃんの事は大好きです。 でも…大好きなのを通り越して 『愛してる』 まで行ったら僕は勉強も運動も全然手が付かなくなって絶対破滅します。 自分で分かるんです」
「正解だ」
「サヨ子ちゃんのあの目は…あの瞳はドライアイスの瞳です。敵を凍らせて粉々に砕く目です」
「もっと正解だ。 おやすみ」
「おやすみなさい」
「………という経緯よ。 凄い悔しかった」
「思い出した。 悔しかったってあれは僕との、敵との勝負だった訳だ」
「そうよ。 私の初めての黒星だった」
「でも、寝る前におやすみのチューはちゃんとしたじゃん。 この記憶は正しい」
「…そうね。 加戸尾くんがちゃんと歯磨いた後で良かったわ」
「違いない♪」
「でも、それから後こばとちゃんの家にお泊りした時は一緒に寝たんでしょ? 知ってるし」
「ああ。 でもこばとちゃんの家はサヨ子ちゃんの家よりずっと狭いし流れ的に仕方なかった。 それにロココ調の柄の豪華な夫婦布団なんかじゃなくて一人用の綿が超目減りしてぺったんこの煎餅布団で狭いの我慢して寝たよ。 おかげで朝になったら二人して寝違えて筋肉痛になった」
「サラッと凄い事言うのね。 さり気無く人をスペックで序列付けして平気で差別してるし」
「そうかな? こばとちゃんは今標準学年で高2だけど…人は生まれた瞬間平等じゃなくなるってサヨ子ちゃんが一番身を以て示してると僕は思うんだけどね♪」
「死ね」
「それ、最上級の愛の言葉と受け取っておくよ」
議案7 『八年前』 完
次回予告
国語の資料集の端っこの下らない蘊蓄をまだ覚えていたの? フランス文学の文脈で赤と黒といえば軍人の栄光、軍服のパンタロンルージュの赤とカトリック司祭の僧衣の漆黒で両者の野望の象徴の色と? 笑わせないで。
今この街で 「赤と黒」 とは反日派とヤクザ以外の何物でもないわ。 この結果を選んだのは民意に他ならないのだもの。 後悔なさい。
次回 議案8 『赤と黒』
このおぞましさを、我慢できないと言うのならこの場より去れ。
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真実を直視せよ。
©小林 拓己/伊澤 忍 2679
独裁少女サヨ子ちゃん
議案6 『厄介な部下』
「加戸尾!! これは一体どういう事なのッ!? 暴走族と舊車會1団体ずつ、それに白賊と緑賊まで今四半期を最後に助成金打ち切り? 誰がこんな指示を出したというの!?」
「? 市長の出された指示通りに各案件処理する様に関係各部署には伝えておきましたが。 ♪ ボンネットに旭日旗を塗装したヘイト行為と色賊の二つはそれぞれ欧米系、イスラム教徒以外は加入を許さない多様性尊重義務違反とレイシズムに関する国際基準抵触の為です」
いつもの事、だが。 今回もだった。
加戸尾は命令を聞かない。
正確には、誰よりも私の命令を忠実に守る形を取りそれでいて意図した事とは正反対の事を行い私の意志を実質全く実行に移さず出力する。
「だから………! その義務を負うのはあくまで日本人だけで移民に適用するのは逆に差別行為に当たるの! ちゃんと制度の趣旨を理解しないままで処理しないで! もうッ! 解った?」
「ん~~っと、 それなんですが走り屋さん達は殆ど日本人でして色賊については幹部級のうち斬り込み班長や集会係長に移民二世でもう既に日本人になっているのも…」
「もういいッ! もういいッッ!! 当該全団体みんな助成打ち切りは不可! 支給継続で決定!!」
「御意」
結局、走り屋関係は旭日旗や日章旗や菊花紋章よりも星条旗やユニオンジャックのような欧米風の意匠の塗装を推奨し色賊には主流以外の人種民族や信仰(※流石に緑賊に別宗教でも多神教徒は押し付けられなかった為同じ 『啓典の民』 たるキリスト教徒やユダヤ教徒を名義のみでも少数加入させるので納得させた)のメンバーも加わらせる事を新たに決めた。
とにかく面倒極まりなかった。
一事が万事この調子だ。 加戸尾が全く以って私が求めているのと正反対の決定を各部に伝えてその度に私がそれをオーバーライドする形で 「それは全然間違い! 本当の命令はこっち!」 と改めて伝え直す案件が何と多い事か。 でも私はこの男が居るのを必要とした。
何せこの男、加戸尾が幾ら命令を聞かない奴でもこいつが私の命令を一割か二割だけでも聞けば市政は確実に回るのだ。 その意味で私の政治生命には欠かせない存在なのだ。
しかしこいつは私にとって一体何なのだ? 友人? 違う。 積極的に楽しみ、安らぎをもたらしてくれる奴じゃない。 主従? それも違う。 前述の通り、コイツは私の命令を全然聞かない。 家族ぐるみのお付き合い? 完全にハズレではないがどこか違う。 私の両親や祖母ですら理想的な 「ご学友」 としてのコイツには価値を感じていたようだがどうも違う。
恋人?彼氏? 完全に違う。 私はコイツに恋心など0.1ピコキュリーだって抱いてはいない。
「市長、コーヒーどうぞ。 はい」
「…加戸尾君は、ずっと変わらないね。 いつも缶コーヒーは私が赤缶で加戸尾君が青缶なの。 中学の頃くらいからかな」
「でしたかね…。 4年前だったでしょうか」
「それだと高校の頃よ。 中学だと6年前じゃん。 私達って歳と学年計算し辛くて面倒ね」
「違いない。 逆に市長以外の学校の友達の歳や学年がもう全然分からなくなりましたよ」
私と加戸尾は令和3年に市立さくら小を四修、つまりは10歳で卒業し同さくら中に入学。 1年で卒業し令和4年に11歳で都立市ヶ谷高に入学、同校を2年で卒業し東大入学は令和6年、13歳の時で2年後の令和8年に15歳で卒業…ってもうこの時点で計算できなくなりかけてきた。 …まあ、標準年齢より7年早く就職の年に達したと計算すれば良いのだ。 同い年で標準学年の級友たちは今年高2だ。 一説には国は人口減少時代の労働力確保より特権階層を作りたかったようだ。
以下、市職員たちの生の声だ。
「見ろよ。加戸尾副市長だ。 全く、17歳であの行政手腕は凄いよな。理辺市長にはあの人しか仕えられない」
「三鷹市でも15歳大卒は過去に市長と副市長のあの二人しかいない。 神様仏様もよくもまあ、あの二人を同じ地元に引き合わせたものだ」
「副市長、お蔭で助かりましたよ」
「…? いえ、自分は特別な事は何もしてはいませんよ。 ♪」
「特別な事はしていないって… 議会対策でも反社のアレにしても副市長がいなかったら私たち市職員は今頃確実に何十人か死んでいます。 本当にみんな感謝しています」
「市長はともかく自分についてはそれは、過大評価ですよ」
「私たち職員は… 市長と副市長をずっと誤解していました。 勉強だけはできる金髪の小娘、赤毛の小僧だなんて思っていましたがそれこそが思い上がりでした」
ふう… 会話をちょっと傍受しただけでも私はともかく加戸尾はとにかく断然人から好かれる、信頼される才能がある。 まあ当然だな。
議案6 『厄介な部下』 完
次回予告
つまらない記憶に限って本当によく覚えている。 私も16歳で、この歳でこうも老いたのか。 小さい頃の大切な思い出…って恩着せがましくて偽善でくだらない。 最低。
大いに役立つ記憶ですらすっ、と忘れる事もあるのに何故くだらない記憶がこびり付いたヨゴレみたいに頑固に残るの!? いまいましい!!
次回 議案7 『八年前』
思い出に、価値は無い。
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真実を直視せよ。
©小林 拓己/伊澤 忍 2679
独裁少女サヨ子ちゃん
議案5 『能力か忠誠か』
「加戸尾。 ケータイならいいかげん私と同じハンドトーキーにすればいいのに何で今でも旧式の4Gスマホにしてるの? お金ならありそうなのに」
「…市長。 自分これでも結構現代化させましたが。 何せ去年までは4Gスマホどころかガラケ使っていたくらいですから。 折り畳みのガラケはとにかく凄い使い易かったですね~。 ♪」
「全くッ! でも、法務省入るお受験の一昨年は外して去年に持ってくる辺りは抜かりないわね。♪ 突然の不具合で悲劇なんて絶対起こるし」
「いかにも! 操作法に慣熟してなくて電源入れっ放しのままで試験中面接中ピリピリ鳴られてゲームオーバーはゴメンです」
「本当に、加戸尾君は加戸尾君らしいから…」
初出の単語だし説明しておこう。
「ハンドトーキー」
とは従来の一連のスマホ群に代わって登場した脳波操作を可能にした中国メーカー製の第7世代携帯電話の商品名でその圧倒的シェア故に半ば一般名詞化した呼称だ。
中国製なのに何故第二次大戦時ベストセラーとなったアメリカの小型無線機の愛称を冠したのかその背景は不明だ。 多少重くかさばるがそれを補い余りあるだけの良い働きをする。
こいつには非常に便利な、一方一部の人達には逆に非常に有り難くない機能が備わっていた。
思想調査ができるのだ。
一昔前のポンコツ未来予測みたいに下品な事を考えるとそれが音声や画像に出てしまう欠陥とか単純な性質上の問題ではない。 そこは「実行」と明確に考えないとされない安全装置がある。
各機種により多少差はあるが生産国の中国や大市場のアメリカにとって好ましくない思想を抱く人物の脳波だと起動しないのだ。
具体的に言ってしまうと日本人の場合反中派、強硬な改憲派、日本への愛情が過剰な人物の脳波だと起動しない。
「起動させてみなさいよ。 私の脳波コード一旦オフにして、と。 これもいい実験よ。 ♪」
「市長も厳しくていらっしゃる。 やってみます。 …って起動しました」
「流石ね。♪ それ終わったら、じゃあ 『院長回診』 行くわよ♪」
「院長回診…って、ああ、市長の 『大名行列』 ですね。 あのおぞましさ最優先の」
私は加戸尾と複数の政治任命の幹部、和彫や頬傷のSPを従え抜き打ちの庁内査閲に向かった。
某課で卓上を極めて清潔に整理整頓した若手の女性職員を見て自然にこう言ってみた。
「漢字度忘れしてしまったからスマホ貸して下さる? ガイジンはこれだからいけないわ ♪」
我ながら何と嫌味で当て付けな物の言い方なのか。 借りると予め想定した文字列を打った。
「た、ぶ、ん、か、き、ょ、う、せ、い。 変換。 じ、ょ、せ、ん。 変換。 ふぅ… ありがとう」
その女性職員は、翌日以降姿を見せる事は無かった。
次に向かったのは、極めて愚鈍そうな新人の男性職員。 書類を検査すればパソコン打ちの書類は誤字脱字と送り仮名の間違いのオンパレード、手書きの所は漢字のトメハネがやはり同様間違いだらけ。 末期症状の先の最終局面の状態だった。 私はそいつのいかにも知性に欠けた顔を見据え以下こう言った。
「いいこと? 初めての昇任試験は全力で当たるのよ。 貴方の上司達には私から命じて試験本番前には代休、休暇を最優先で使わせるように伝えておくわ」
「ももももも勿体無い御言葉を!! あぁああああぁありがとうございまっす!! うぇ~~ん!!」
知性の欠片も感じられない、しかし脅威とはなり得ない愚鈍な男は嬉しさでその場で泣き崩れた。
「加戸尾。 とにかく能力には欠けるけど忠誠心は篤いのとその逆はどちらを部下に使って?」
「能力も忠誠心もあるという選択肢は無しで、必ず市長のお示しになった中からで、ですか?」
「そうよ」
「どちらかというと前者ですね。 能力の無さは努力と学習と上司の力量で何とかなりますが、忠誠はどうにも御し難い部分があります」
「まあまあの答だけど…」
「やはり、市長のお考えだとこれでは及第点は与えられないと?」
「ま、その答でも及第点には一応達しているから安心して。 満点とは言えないけどね」
「院長回診」 を終え市長室に戻った私はちょっと休憩、とTVの電源を入れた。
「…社報道総局長だったタルエル容疑者を乗せたプライベートジェットはドイツとスイスの国境近くのアルプス山脈の山の尾根に墜落しましたが、遺体とブラックボックスの回収は未だに難航しており現地警察と消防は…」
「全く、嫌な時代だこと」
議案5 『能力か忠誠か』 完
次回予告
無能で厄介な奴は徹底してしばいて潰してやればいいから実はそれほど厄介じゃないのよ。
有能で厄介な手合いが実は一番嫌なの。一旦敵に回すと被害が大き過ぎるわけ。
一度も人の上に立った事が無い一生下っ端生活の莫迦にはこの苦労は解からないだろうけど一応言っておくわ。 全く不愉快極まりない!
次回 議案6 『厄介な部下』
厄介な物を、抱え込んでしまった。
From now I want to leave it to Judgement of future historians.
真実を直視せよ。
©小林 拓己/伊澤 忍 2679
独裁少女サヨ子ちゃん
議案4 『民事特例法301条』
「面倒だな」
「先祖伝来の土地とか何とか…面倒臭い」
市寮の設置を巡り土地収用が難航しており市長室にも担当者からその情報が上がってきていた。
最新の改正法に明記されているのだと公寮には福祉寮、隣保寮、国際寮と他がありこの案件だと国際寮だ。 何故本件がこじれたのかと言うとそこの土地所有者の過去の深い私怨があった。
ヘイト。 外国人嫌い。 簡単に言えばこの一点だ。 ここの家主、地主のオッサンの祖父の代に日本の敗戦に乗じて 「俺達は戦勝国民だ」 と勢いづいた外国人に他の土地を残らず奪われ最後に残った土地が家族親戚の男衆が交代で番をし守り通したこの家と土地だというのだ。
お上に逆らうほど買値はますます下がるぞと脅しても梃子でも動こうとしない。
「千日手…ですね。 市長」
「あら。 『手詰まり』 より大分玄人っぽい言い方をするじゃない。 加戸尾」
実際、事態は正に千日手に陥っていた。 家主はこの種のトラブルには慣れっこで一種争い事のヴェテランと言って良かった。
都市整備部でも精鋭の強面なのを集めて多少手荒にやるにも過去ボイスレコーダー回されてカードにされるわ市が手を汚さない形で街の愚連隊、今回は色賊でも赤賊を使って特上寿司30人前やLLピザ20枚を勝手に注文してやろうにもサービス区域内の店には事前に全部手が回っていて、家主と店側の合言葉まで決めてあった。 何なの畜生!
「土着の日本人中心なのは赤賊だけだったのに…出前の悪戯注文するのに訛りの無い日本語OKなのはここだけだったのにカードをまた一つ浪費したわ」
「あの…市長。 自分も先祖代々土着の日本人なんですけどね」
「それ、嫌味? 私を新植民地主義の悪い白人とでも言いたいの? まぁ…貴男に次の悪戯電話や悪戯注文の作戦させる訳じゃないわ。 古巣と登記とか占有とかの絡みで交渉はできる?」
「それが明らかに公序良俗に反していても、違法ではありません」
「相変わらずね。 加戸尾。 手配するから明日にも法務省側の代表と話をまとめてもらうわ」
「…? 古巣にスプレー落書きや生卵投法の名手が居た記憶は自分にはありませんが」
「まあ、会えばわかるわ♪」
翌日朝、市長専用車の黒塗りの防弾キャデラックで加戸尾を法務省側代表との折衝に行かせた。
封筒を開け命令書を読めばきっと驚くかさもなくば怒るだろう。
「…折衝は杉並区高円寺駅南口の喫茶店 『サンスーシ』 で10時半から。 で法務省側代表は人権擁護局の古館、って古館先輩って何だ! てゆーか民事局じゃないって嫌な予感してきた」
「副市長、お顔の色が優れないようですが」
「まあ…ね」
昭和時代の高度成長期を思わせる重々しいえんじ色の大きな看板を掲げた古風な喫茶店で、私や加戸尾の大学時代からの先輩だった法務省の古館氏は待っていた。
「古館先輩、お久し振りです」
「おお加戸尾。♬ 元気にしてたか。 随分な仕事を回されたもんだな。 でもさ、三鷹市役所勤務っていうと何年振りだかお前も家族揃って暮らせるのは良い事じゃないか」
「言われるとそうですね…。 まあ今回の案件で先輩が省側の代表だったのは助かりましたよ」
「まあ、これも本来なら民事局の案件だけど都市計画法も土地収用法も国土法も駄目で手詰まりだと…この時代は俺等の仕事さ。 これを見な。 もう大臣印まで全部押してある」
「これは………! ふぅ…。 嫌な予感はしていましたがこれですか。 民事特例法301条って」
「だよ! 土民弾圧法さ! 敗戦の焼け跡の生き地獄にこの時代になって法的根拠が出来たのさ!」
「なるべく血を流さない形で地権者さんには明け渡しを求めますがね… 駄目かもしれません」
「だろうよ! 代執行実施者証の団体用と個人用の用紙も70枚持ってきた。 反吐が出るぜ!」
現役法務官僚からここまで史上最悪法と蛇蝎の如く忌み嫌われる 「民事特例法301条」 とは一体何か。 簡単に言えば 「平和」 「人権」 「多様性」 「国際友好」 といった公共性の高い目的があれば日本国民の動産、不動産を極めて簡単な手続きで収用できる最強法だ。
特に当該財産の所有者等が人種差別主義、民族差別主義といった誤った思想を強固に保持し憎悪犯罪に繋がる虞があれば通告のみで本人の同意も相応の補償も無く代執行が可能となっている。
翌週、当該用地は釘バット、金属バット他様々な武器で武装し胸や袖口から和彫を覗かせた者や同様武装した日本語以外の言語話者、更にその周囲を機動隊装備の人員により包囲されていた。
「あと五分で人権代執行を行います。 どうか出てきて土地と建物の明け渡しをお願いします」
都市計画課職員のスピーカーによる家主への通告も、あくまで形式的な手続きでしかなかった。
計った時間の五分きっかりで、代執行は行われた。 以降は命じた私自身も言うのが嫌になる。
公権力の名の下の圧倒的な有形力の行使を前に家主の思い出、誇りは打ち砕かれ消去された。
「遺体はどうするよ」
「放っときゃいいじゃん。 汚いし」
大量の人員と重機を用い小一時間で用地は更地にされ代執行への抵抗の結果絶命した家主と妻の遺体はその場に打ち捨てられた。
市は遺体の火葬埋葬許可証発行を許さず遺体は十日以上カラスと野犬に喰われるままにされた。
「市長、何故ああされたのですか」
「解らないの? あの家主は家をこれ以上無く愛していたのよ。 そこで土に帰してあげたの」
三ヶ月後、その場所には異国の匂いを漂わせる新築の国際寮が完成し既に入居が始まっていた。
「先日落成した三鷹市の三鷹東国際寮を取材中の真生記者から中継です。 真生さん、どうぞ」
「はい。 三鷹の三鷹東国際寮から真生です。 では、住民の方にインタビューしてみます」
「学生さん。 この三鷹東寮の住み心地はいかがでしょうか。 困ったこと等はありますか?」
「いやいや。 凄く快適ですよ。 国費留学生は家賃光熱費はかからないし家具とか消耗品とか全部最初から揃っていていつでも無料で補充してくれるし呼び寄せた家族と住むのもできますからね。♪ それに心配していたお化けも出ない。 後は僕は大柄なので多少狭い程度ですかね」
「いや~、 『お化け』 ですか。 それは意外なご感想ですねェ。 現場からは以上です」
議案4 『民事特例法301条』 完
次回予告
「私は能力よりも忠誠を重視するから」 こら。そこの低能。 「潰れる会社の特徴」 と小声で言ったわね。 そんな会社にすら入れないくせにしばくわよ。
でも、認めたくないけど…そうしなきゃいけない、組織を動かす上でおぞましい舞台設定も充分起こり得るの。 無い頭ならない頭なりに理解しなさい。 以上よ。
次回 議案5 『能力か忠誠か』
あなたは、私にどちらを差し出せるというの?
From now on I want to leave it to Judgement of future historians.
真実を直視せよ。
©小林 拓己/伊澤 忍 2679
独裁少女サヨ子ちゃん
議案3 『その男、ベルナール』
三鷹市のどこか 理辺家。
「…はい。 僕はブン屋には向きませんので。 ええ、お父さんもお元気で。 はい。じゃあ」
「お父さん。 またベルナールから? しつこいったらありゃしないんだから…」
「人の電話を盗み聞きとは感心しないな!! 全くッ…お母さんやお兄ちゃんと違ってサヨ子の前じゃ英語で内緒話もできやしない。 もう仕事は終わったのか。色んな所への挨拶は済んだか」
「うん。 党のこっちの代議士と議会の古株と各部長と外郭団体の人達とかとは大体会ったわ」
多少説明が要るだろう。ベルナールとは血縁上私の父方の祖父だ。 アメリカ一のメディア王で日本人の祖母との間に生まれた父は同様に日本人の女、母と結婚した為私と兄はクォーターだ。
私がこの男をおじいちゃんとかじいじとかグランパとかと決して呼ばない背景を以下話そう。
ベルナール・アンリ・サンジェルマン。 1947年生まれ。 79歳。
アメリカとカナダで新聞・出版・放送・ウェブ・エンターテインメントといった各分野でアナログ・デジタルを問わず絶大な影響力を誇るサンジェルマン・グループの会長だ。
父のアルバムの中に中年期から初老辺りと思われる奴の写真があったのを見たがとにかく陰湿、狡猾そうで虫酸が涌くような凄く嫌な顔が普通の経営者じゃないのを如実に判らせてくれた。
いきなり結論を言ってしまうとこのベルナールという男は祖母と離婚した後に再婚した妻と何人かの子を設けたがそれらの子たちが皆暗愚で到底会社を継がせられる状態に無く父に帰国し会社を継げとここ数年位何度も連絡を取ってきていたのだ。 アメリカが離婚超大国なのは知っているがこれは幾ら何でも虫が良過ぎるだろう。 私が奴を祖父と見ないのはその為だ。
なので理辺というのは祖母の実家の名字だ。 祖母も父もきっと 「せいせいした」 と思う。
だが何故かこの男はとにかく謎が多い。著名人でしかも20世紀から21世紀という正に 「記録の時代」 を生きた者としては余りに情報が少な過ぎるのだ。 カナダでフランス語圏のケベック州で1947年に生まれたとする経歴も決定打ではない。 生年だけでも20通りくらいの説があって最大47年もの開きがあるのだ。 血の上でもフランス系、白系ロシア人他諸説入り乱れている。
どれが真実かはもう永久に検証不可能だとすら言われている。
「ネット配信や交流サイトの創始者は皆必ずサンジェルマンに臣下の礼を取らねばならない」
「1990年『原油まみれの水鳥』写真でフセインを悪魔化し湾岸戦争開戦にゴーサインを出した」
「中学生で単身アメリカに移住しNYの地下鉄車内の新聞売りから身を立てた」
「1968年ニクソンに北爆停止を命じ無条件降伏5分前だった北ベトナムを瞬く間に蘇生させた」
「禁酒法時代アル・カポネに心の師と崇められその見返りに官に圧力をかけ法的庇護を与えた」
他都市伝説めいた逸話には事欠かないが「NYの地下鉄車内の新聞売りから…」については本人が
「儂をモデルにしたTVドラマの脚本家が話を盛り過ぎたので完全に創作上の物語に過ぎん」
と明確に否定しているしニクソンに北爆停止を命じ…も学生か新入社員くらいの歳の若造がそんな発言力、影響力を持っていたら化け物だ。禁酒法時代のカポネの心の師云々…などに至っては大体140歳かそれ以上の年齢でないと計算が合わず殆ど場末の安酒場で交わされる与太話の水準と言って良い。
だがそれだけ妖怪視されてもおかしくない米言論界最大のタブーでい続けている事は明らかだ。
現に自らに反抗する者とその家族親戚合わせて全米で延べ80万人以上を殺害し、それを報道各社及び司法省に隠蔽させた事実が後の時代の歴史学者達の調査で明らかにされている。
それ故各国で付いた仇名は
「言論の妖怪」 「黒い皇帝」 「ペンの死神」 「悪と偽善の唯一神」 「全人類最大の敵」
他全部挙げれば両手両足の指の数では利かない。
「ねぇ、お父さん。 …ベルナールって一体どんな奴だったの? やっぱり凄い嫌な奴だった?」
「またその話か。 おばあちゃんとベルナールが離婚してもう三十年近く経つし家にも殆ど帰ってこなかったからお父さんもあんまり記憶に残っていないな。 ただお父さんが小学3年生の時だったかな。全米一のメディア王で誰も逆らえないとんでもない人だって知った後は1週間以上気分が悪くなってごはんも食べられなかった。それまでずっとよく似た顔と声の同姓同名の他人だとお父さんも友達もみんな思っていたのにまさか本人だったなんてな。あんまり気分が悪いから学校でも近所でも誰にも言わなかったけどそれで良かったよ。 ベルナールの威光を借りて立身出世なんてしていたらお父さんも奴と一緒に親子揃って筋金入りの社会の屑になっていたさ」
「それ聞いて、安心した。 お父さんはベルナールとは違うんだってわかる」
「そうか。 寝る前に歯磨けよ。♪」
「それ私じゃなくてお兄ちゃんに言ってよ! もう!!」
「呼んだかァ? 市長」
「このクソ兄貴ッ! しばかれたいの? 今度こそ本当に留年にされたいの!?」
「怒るなよォ。♪ 市長」
「畜生ォ、畜生……ッ! しばく! 絶対にしばいてやる!! 今から永遠に後悔させてやる!!」
「もう! 二人ともそれくらいにしておけ。 でもな…サヨ子は顔も性格も若い頃のベルナールに一番そっくりだ。 いつも思うけど血は争えないな」
「誉め言葉と、受け取っておくわ♪」
父はいつも初め必ず嫌々そうな態度を取りながら結局は実父たるベルナールの事を饒舌に話す。
心の中でまだどこか、仲直りできるんじゃないかという気持ちが残っているみたいだった。
もっとも二人が仲直りしても良い結果などもたらさないという事だけはちゃんと判っている。
議案3 『その男、ベルナール』 完
次回予告
「統治には必ず最後に有形力行使の機能が伴う」 中学高校水準の政治経済でも教える。 人々の自由権、財産権、そして何よりも、尊厳。
私は支配する為なら最も大切な「尊厳」も力でねじ伏せその上で踏みにじる。人権の為にする。
次回 議案4 『民事特例法301条』
銃剣とブルドーザーよりも恐ろしい物を、これからその目で見る事になる。
From now on I want to leave it to Judgement of future historians.
真実を直視せよ。
(え・伊澤 忍)
©小林 拓己/伊澤 忍 2679