嬉しいけれど寂しい・・・
母が震災後、我が家に来てくれて三か月が過ぎようとしています。
その間、何度も夫の赴任先に安心していくことができ、感謝していました。
母も「この年(80歳)になって役に立ててうれしい」と言ってくれていました。
家事はもちろんですが、朝晩の犬の散歩を日課にしてくれて一日1万歩近く歩きます。
母は歩くのが早く、足腰がじょうぶな人です。
ただ、今回久々に会って歩くのも遅くなり「やっぱり年なのかなぁ」とちょっとさみしく思いました。
それが、犬の散歩で以前の健脚に戻りました。
何より、ずっと悩んでいた便秘、不眠、食欲不振(私の母でしょうか?)が治り、気持ちも前向きになったそうです。
おかげさまで我が実家も母も直接的な震災の被害はほとんど受けずにいました。
ただ、やはり独居老人の母は怖かったと思うし、ひとり暮らしの限界を感じたのだと思います。
来た当時は「もう家もどうでもいい」と言うようなことを言っていました。
私も命には代えられないし、そばにいてくれれば安心でした。
でも、こちらでの暮らしにも慣れ、気持ちにも余裕ができて「のど元過ぎれば・・」でしょうか。
暑さも厳しくなって家のことが心配になったようです。
私も、母のためにこちらでお年寄り向けの運動教室や趣味の会などを探したりしましが
なかなか条件に合わず、犬の散歩と買い物以外外に出ない母が心配になってきました。
(一日1万歩歩けば十分とも言えますが)
母も「一度家を見に帰りたい」と言い出しました。
私も私たちの都合で母をしばりつけておくのも申し訳ないと思いました。
なので、夏の間だけお盆まででも家に帰ろうということになりました。
母にも夏休みは必要です。
そんなとき、兄夫婦が長年の夢だった海辺の町への転職、永住が実現したのです。
釣り好きな二人は毎年暮れや長期の休みにはその町に釣りに行きます。
ほんとうに辺鄙なところで島なので、船で行きます。飛行機も飛んでいるようだけど・・・
定年後と言う話だったけど、あちらで知り合った人に紹介され、とんとん拍子で仕事も
見つかりました。
で、古くて小さな家らしいですが、中古で家も買いとんとん拍子に話が進んだのです。
そんな兄が7月末には引っ越して、お盆には帰省できないので家に帰るけど、と
まるで話を聞いていたかのように母を誘ってくれました。
こんな偶然、あるんでしょうか?
母はこっちに来る時も兄に連れてきてもらいました。
実家の片づけも全部兄がしてくれました。兄は、やんちゃでずっと母を心配させたけど
父ががんとわかって以来、生まれ変わったように親孝行な息子に変身しました。
別人28号でした。
そんな兄に車で連れて行ってもらえるなら、私も安心です。
荷物もあるし。
兄夫婦は母と同居したいと言ってくれていて、小さな家だけど来てくれるのならと
言ってくれています。
どんなところなのか行ってみないとわからないけど、私は母に「来てほしいと言われているうちが華、行くところがあるのは幸せだよ」と言い聞かせています。
兄嫁が良い人なので、母も心強く思っています。
私のところと兄のところ、そして実家と足腰が達者なうちは行き来すればいいと思います。
何だか今年は劇的な変化の年だなぁ、と思いました。
そんなとき、母がビーを連れて行きたいと言い始めました。
兄も電話で「連れて行くんだろう?」とさも当然のように言います。
は? 犬まで?
初め、母は私に気を使ってくれているのだと思いました。
犬がいると夫の赴任先に行けないと思ったのかな?と。
でも、預けるところもあるし(警察犬訓練所です)夫が帰省してきても良いので
その心配はいらないと言いました。
でも、母は「そうじゃないの、私のために連れて行きたいの」と言います。
実家に帰ったら今のようには歩かなくなると思う。
健康のためにも歩かなくちゃ、とわかっていても「暑いから」とかいろいろ言い訳して
家にこもりがちになる。
でも、犬がいれば朝晩は絶対歩くし、せっかく食欲もわき、ぐっすり眠れるようになったのに元に戻りたくない。
それにひとりでも犬がいると、心強かったり、気持ちがほぐれるからそばに置きたい。
実は母は8年前に肺がんの手術を受け、再発危機の時期はもう過ぎましたが
去年、1㎝にも満たない影が肺に発見され、今要観察中です。
もちろん自覚もないし、先月大学病院でも「定期的に診察すればいいと思う」と言うような
診断を受けました。
でも、母も不安だと思います。
なので、
病気のためにも運動は大事だし、影は消せなくても大きくしないためにも
犬と一緒に毎日歩きたい。
それも一理あると思いました。
自慢ですが(自慢かいっ)うちの犬は、吠えないしおとなしい子なので
あまり手がかかりません。
うちの母は犬はあまり好きではないのに、すっかりメロメロです。
私が夫の赴任先に行っている間に犬への認識をすっかり変えました。
犬がいない生活は考えられないようです。
連れて行ってもらっても私がさみしいくらいで問題はありません。
何度も実家には連れて行っているし、犬も慣れています。
ただ、犬が負担になっては本末転倒なので行く直前まで「無理してない?気を使ってない?」と何度も意志を確かめました。
母はきっぱり「大丈夫」と言います。
犬はお出かけが大好きなので、母と兄の車で楽しそうに出かけて行きました。
すごく心配でしたが、道中何もなく実家についてからものんびり過ごしているようです。
電話の母の声がとても弾んでいました。
やっぱり慣れ親しんだ家、土地が一番なんだな、と思いました。
犬は不思議な生き物だなぁ、とつくづく思いました。
80才の母に活力と元気を与え、気持ちまでほぐしてくれるのです。
私も主のいない犬のハウスを見つめ、正直寂しいですが
彼女(犬)は今、セラピードッグとしてお仕事をしているのだ、と思うことにしました。
母を元気づけ、病気とも共存していける気力や体力をつけてあげているんだから。